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僕たちがプロになれたのは、周囲の助けがあったから(Shunsuke&Junko×Sakurako)

今回のゲストは東京・横浜を中心に活動するシュンスケ・ジュンコペア!シュンスケさんはなんとダンス未経験の状態からプロになった稀な存在。彼がどのようにしてプロダンサーになったのか。パートナーのジュンコさんとの出会い、そして「プロとは何か」などなど、読み応えぎっしりのインタビューとなりました。

-Profile-

Shunsuke&Junko…晃吉&典子のもと、数々のマエストロに師事。スタジオ《ラ・バルドッサ》のインストラクターとして、レッスンを支えている。エンセナリオ (ステージタンゴ) から、サロンタンゴまで幅広く踊り、特にエンセナリオのしなやかな表現力は素晴らしく、ファンが多い。台北、日本各地にてエキシビション出演を重ね、タンゴコンサート出演など活躍がめざましい。2014年、ブエノスアイレスへの短期留学を果たし、さらに磨きをかけるべく、日々研鑽を重ねている。

【功績】2015年タンゴダンスアジア選手権ステージ部門セミファイナリスト&FJTA特別賞新人賞受賞2016年タンゴダンスアジア選手権ピスタ・ステージ両部門セミファイナリスト&Smileベストドレッサー賞受賞 2017年タンゴダンスアジア選手権ステージ部門ファイナリストピスタ部門セミファイナリスト2018年ブエノスアイレス市大会Campeonato de Baile de La Ciudad 2018ミロンガ部門セミファイナリスト2018年、二度目のブエノスアイレス留学にて、Club Grisel、Salón Canning、La Baldosa, Milonga Devotoなどの伝統あるミロンガ会場にてデモ出演を果たす。


SHUNSUKE…SHUN JUNKO…JUN SAKURAKO…桜

プロへの道は10人10色

 おふたりがプロになろうと思ったきっかけはなんだったんですか。

SHUN 一言でいうと、成り行き、かな(笑)

 成り行きでプロ…!

SHUN 実は僕、タンゴ始めるまで、一度もダンスしたことがないんです。

 ええっ!アジア各国、本場アルゼンチンでもパフォーマンスをされているので、てっきりバレエや社交ダンスなどの経験を経てるのかと思いました。

SHUN 僕が始めたのは30歳を過ぎてからで、それまでは建設業界で働いていた普通のサラリーマンです(笑)

JUN わたしはタンゴの前に10年ほどジャズダンスをやっていました。今の職場であるスタジオ「ラ・バルドッサ」で彼を見つけて、思い切ってアジア大会のパートナーに誘ったのがペア結成のきっかけです。

SHUN 僕は当時、始めて1年くらいで。そもそもパートナーを組むってことが何なのかすらわかっていなかった。

JUN 年も近くて、大会に出るモチベーションを持った男性が近くにいることが奇跡みたいに感じました。やはりタンゴは男性の若い層が少ないので。ただ当時は将来のことなんて何も考えず、その年の大会出場だけを目的にペアを結成しました。

SHUN 要するに、ふたりとも成り行きに任せていたら、いつのまにかプロダンサーになった。師匠の棚田先生や、周囲の助けがあったからここまで来れたんだと思います。

 周囲とのつながりが、プロへの道を開いたのですね。
ちなみに、始めた当初は、どのくらいの頻度でレッスンに通われていたんですか。

JUN 始めて半年くらいは、週に1度のグループレッスンに通っていました。それから少しずつレッスン頻度を増やし、週に3回、さらにプライベートレッスンも受けるようになって。周りの勧めで振り付けの勉強も始めました。

SHUN 僕も始めは週1回のレッスンでしたね。当時は仕事もあったし、「ちょっとした趣味」のつもりでやっていたので。

JUN ふたりともスロースターターだよね(笑)

SHUN そもそもダンスのこと自体よくわかっていなかったし、習い事もこれまでやったことがなかった。なので「とりあえず週1回」を目標にしていました。だけど、僕よりずっと年配の方々がさまざまなステップを踏んでるのを見て、「なんで彼らにできて自分にはできないんだ!」と頭にきて!
週1では足りないと感じて、週に2~3回、平日もレッスンに通い始めました。

 周囲の影響がとても大きかったのですね。

SHUN 当時は働きながら趣味としてタンゴをやっていたのですが、本格的に勉強するなら、ブエノスアイレスに行ったほうがいいと周りが勧めてくれて。タンゴを始めて1年半くらいだったんですけど、思い切って会社を辞めて、ブエノス行きを決意したんです。

JUN だけど、留学から帰ってきても仕事が見つからなかったんだよね。

SHUN そう(笑)なので、ずっとお世話になっているスタジオ「ラ・バルドッサ」でクラスを持たせてもらいました。

JUN わたしの場合は、ジャズダンスの講師を続けながらタンゴを極めるのは難しいと感じていて。自分が不器用なことも分かっていたので、道を究めるならどちらか一本に絞らないといけないなと思っていたんです。そこで思い切ってジャズダンスを辞めてタンゴの道に進みました。

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プロとして「魅せる演技」を作り上げる覚悟

桜 お二人はピスタもエセナリオも両方こなすダンサーですよね。

SHUN どちらか一方に絞ったほうがいいのでは、と思うこともありますが、「よりタンゴを深く知るために」という棚田先生の勧めもあり、勉強のために両方ともやっています。

JUN わたしはサロンで即興力やエレガンスさを学びたかったし、エセナリオでショータンゴ特有の表現力やテクニックも学びたかったんです。
というのも、タンゴを始めたきっかけとなったのはフォエバー・タンゴのショーだったのですが、実際タンゴを習い始めてから棚田先生のインプロの踊りに衝撃を受けて。
それで、両方学びたいと思うようになったんです。

 エセナリオの表現力は、どうやって身に着けましたか。ダンス経験のない状態から、人を魅せるショーを披露するまでにどんな行程があったのでしょう。

SHUN 僕自身は、表現力なんてないと思っているのですが…(笑)
大きな成長につながったのは、世界的に有名なカップル、ヴァネッサ&ファクンド先生に振り付けをもらったことです。
彼らの振り付けはすごく複雑なので、習って3~4年経ってもまだ難しいと感じます。
そんな高度な作品をどうやって自分たちのものにしていくのか。
自分たちで分析したり、彼らの踊りを見て研究したり、棚田先生にもたくさんアドバイスをいただいたりと、いろいろ考えながら続けています。


 ヴァネッサ&ファクンド先生から学んだことで、最も印象に残ったのはどんなことでしょう。

SHUN 本当にたくさんのことを教えていただいたので…でもひとつだけ上げるとしたら、「プロフェッショナルとして踊ること」の意味を教えてもらえたような気がします。「人前で踊るからには、だれもがプロフェッショナルでないと魅せる演技はできない」ということです。
もちろん、技術に関しては段階を踏んでいかないと身に着けられない。だけど今持てる技術の中で見せられる、自分たちの「プロフェッショナル」な部分をパフォーマンスで発揮すること。これができるのがプロダンサーなのだと思いました。

JUN 彼らは、ペア結成初期の振り付けを数年たった今でも演目として踊っているとおっしゃっていました。一度踊った振り付けをまた何年も練習して、また踊る。自分たちの踊りに満足せず、ひたすら練習を重ねている。世界のトップを走るダンサーですらそれだけ練習しているのだと思うと、わたしたちもそれだけの気概を持って一曲を大切にしてパフォーマンスに臨まなければ、と思いました。

 2018年にブエノスアイレスに留学しました。さまざまな会場でパフォーマンスの機会があったようですが、タンゴの本場で、現地の方に見られながらデモをした感想は。

JUN とても温かい雰囲気で迎えてもらえたのが嬉しかったです。デモの後拍手をくれて、声をかけに来てくれる。もっと厳しい場所なのかなと思いましたが、想像と違いました。80~90歳のおじいちゃん、おばあちゃん達にも声をかけてもらえて。大会を目指すだけでは経験できない、現地ならではの体験でした。

SHUN あと、向こうには20~30代の若いダンサーさんたちがたくさんいて、プロやセミプロの数は日本の比ではありません。暖かい拍手をくださる世代がいる一方で、若手の層は目に炎が宿っているというのか。とがったナイフのような鋭い雰囲気を醸し出していたのも印象に残りました。根はすごく良い人たちばかりなんですけどね。

JUN 彼らに混ざってレッスンを受ける機会があったのですが、まるで部活です。重りを足に巻いてボレオの練習をしたり、女性を持ち上げるリフトやコンビネーションの練習を自発的に行っていました。こうした空気感は日本では感じたことがありませんでした。

SHUN 僕としては、ぜひ男性にブエノスアイレス留学を体験してほしい。今は、アジアからブエノスアイレスへ留学する若者も増えてきています。特に今は中国の方が多いかな。僕らもまた勉強しに渡亜したいと思っているし、若手の方々にもどんどんそうした経験を積んでほしいと思います。仕事があるから、なかなか休むのは難しいかもしれないけれど、僕は向こうに行ったことで独特の空気感や人柄、風習など様々なことを勉強できたと思っています。


 なるほど。そしてこちらがブエノスアイレスの「ミロンガ・デヴォート」で踊った時の映像ですね。私ならこの会場の空気にすごく緊張しそうです…

タンゴで一番大切にしていること

 最後に、おふたりがタンゴを踊るうえで大事にしていることは?

SHUN たぶん、リーダーとフォロワーで答えが違っちゃうと思うけど…僕は、「ちゃんと相手を包み込むこと」を意識しています。難しいステップやミュージカリティなども大事なんですけど、なによりも、まずは相手のこと。包み込むためにはどうするのか、という問題には技術的な話も発生してきちゃうんだけどね。2人でアブラッソが収まるポジションを探して、それをキープすること。それを音楽にのせて、お互いにフォローしあって動くことで、始めてタンゴが成立するのかなと思います。
…あれ、違う?(笑)

JUN そうなんじゃないかな(笑)
お互いにいろいろ考えることがあって、意見が合わずに腹が立つことなんて、しょっちゅうですよね。でも、最終的には温かい気持ちで彼をアブラッソすることが大事なんじゃないかな。
男性はリードをするから、技術的な面に意識が向きがちだと思うので…
だけどフォローするにしたって、どうしても気分が乗らないときはついていきたくないこともある。
そんな風に自分の気分に左右されずに、相手をフォローしてあげられるようになりたいですね。なんだか、タンゴとか関係なく人生の修行みたいだなあ(笑)

SHUN あとは、お互いにケンカしないこと!これにつきます!

 間違いないですね。タンゴのパートナーを作るのは、結婚するよりも複雑だと言われます。パートナーとの関係を築いていくのは、まさに人生の修行と言えるかもしれませんね…

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