『理系の文章術』(更科功著)
『理系の文章術』を読みました.著者の更科功氏は分子古生物学を専門とする生物学者です.
最近また科学研究費助成事業(科研費)に応募したのですが,その研究計画調書を書くにあたって何か参考になりそうな書籍がないかなと思って探してたところ,ちょうど友人がオススメしてたのがこの書籍でした.
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この書籍は,東京大学の駒場キャンパスで著者が担当した「科学技術ライティング論」という講義の内容がもとになったものだそうです.駒場キャンパスとのことなので教養課程の講義のひとつだったのかなと思ったのですが,検索したら科学技術インタープリター養成プログラムなるものの講義のひとつのようです.東大もいろいろやってますね.
http://science-interpreter.c.u-tokyo.ac.jp/prospectivestudents/class/
本書で特に秀逸だと思ったのは,パラグラフ・ライティングについて書かれた第4章です.
パラグラフ・ライティングが現在のような形になったのは,第二次世界大戦後のアメリカだそうです.当時,大学生が激増したことで学生の文章作成能力が低下したことが問題となって,その対策として広まったのが手法なんだとか.
パラグラフ・ライティングにしたがって書かれた文章の大きな特徴は,短い時間でその内容を掴むことができること.
それを可能にするために,パラグラフ・ライティングにはいくつかの基本原則があります.基本となるのは次の三つ.
1.1つのパラグラフでは,1つのトピックだけを述べる.
2.1つのパラグラフは,1つのキーセンテンスと複数のサブセンテンスから成る.
3.キーセンテンスはパラグラフの最初に置く.
こうした基本原則のおかげで,パラグラフ・ライティングにしたがって書かれた文章では,各パラグラフに書かれている内容は,基本的に各パラグラフの最初の文(キーセンテンス)を読めばわかります.したがって,キーセンテンスを読んで興味がなかったり,すでに知っている内容だったりした場合には,そのパラグラフはまるまる飛ばしてしまって構わないことになります.
また,まとまった文章を読む際に,先立って各パラグラフのキーセンテンスをひと通り読んでおくと,これから読む文章の全体図をおおまかに知ることができ,その後でキーセンテンス以外の文も読んでいく際に見通しがとても良くなると考えられます.
パラグラフ・ライティングの話は,私は高校の頃の英語の授業で初めて知ったのですが,そのおかげで英文を読む際の見通しがかなり良くなったような記憶があります.授業中に英語の先生がよく「一段落一概念」とか「トピックセンテンス(=キーセンテンス)はパラグラフの最初にあることが多い」とか言っていて,当時は何度も言っててくどいなぁと思ってましたけど,すぐに定着したのは何度もそう言って意識させてくれたからかもしれないので,むしろ感謝すべきだったのかもしれません.
今回この『理系の文章術』でパラグラフ・ライティングについておさらいすることで,基本原理を整理するとともに,改めてその重要性を認識できた気がしました.
本書ではパラグラフ・ライティングの他にも,
・一般に文は短くするべきである.その理由の一つは,文を読むときに覚えておくことが減るため,読んでいて疲れにくいからである.
・広く社会に科学を伝える文章は,パラグラフ・ライティングの方法ではなく,むしろ遠回りをしたくなるような,読み終わるのが惜しいような,そんな文章がよい.
・書く内容が多すぎるときは,何を書かないか決めなくてはならない.
といった内容も書かれていて興味深かったです.私は読み飛ばしてしまったのですが,論理や推論などに関する例も多く掲載され,詳しく説明されています.
研究生活を送る上で文章書きのスキルは必須なので,定期的にこうした書籍を読んでサイエンティフィックな文章を書くためのスキルをキャリブレーションしておくのは重要かなと思いました.
(追記)
科研費書類作成の参考書としては『科研費獲得の方法とコツ』が有名ですよね.以前購入して手元にあるのは改訂第2版ですが,どんどん改訂を重ねて最新版は第7版なんですね.今ではKindleでも出ているようで.
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