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FC岐阜 vs AC長野パルセイロ 試合前考察

はじめに

5月29日の第10節でFC岐阜はアウェイ長野UスタジアムでAC長野パルセイロと対戦する。この両者の対戦は、2020年からカターレ富山も巻き込んで3クラブの決戦「プライドオブ北アルプス」となっている。つまり、絶対に負けられない戦いだ。岐阜は監督交代以降のリーグ戦2試合で2連勝、5得点0失点と苦しい3連敗から軌道修正に成功した。現在のチーム状態の良さも追い風に、公式戦5連勝を収め、さらに前進していきたいところだ。
 
一方の長野は、ここ2試合勝利がなく、また無得点に終わっている。しかし、前節Jリーグとしては、初の松本山雅FCとの「信州ダービー」の激闘を戦い、得点こそ生まれなかったが、鋭い攻撃を長野もみせていただけに、激しい戦いになるだろう。
 
両チームの過去の対戦成績は、岐阜の1勝1分2敗と少し相性が悪い。また、長野ホームでの対戦成績は、0勝1分1敗とまだ敵地で勝利がない。昨季の長野ホームでは、岐阜が先制に成功するも、後半に逆転を許した。この試合から多くの人が感じた通り、サポーターの応援も背に勢いづかせた長野はかなり脅威だ。先制点を奪い、長野の攻撃を上手くいなしながら、勝利を掴み取りたい。 

両チームのスタッツ比較
[両チームの主なスタッツ比較]

上表はここまでの戦いによる主なスタッツの比較だ。攻撃面での数値でいうと、両チームともにリーグで上位につけているが、岐阜が攻撃・パスポイントにおいて長野を上回っている。ここまでリーグ2位の55.2%のボール支配率を誇る岐阜は、支配率の高さも相まって、パスポイントではリーグ3位、攻撃指数の合計値である攻撃ポイントでもリーグ2位に位置するなど攻撃的なサッカーが数値にも表れている。
 
ただ攻撃ポイントでは上回っているが、チャンス構築率は同率。さらに、ゴール期待値でいうと、岐阜は1.243に対し、長野は1.463と岐阜を上回る。つまり、1つ1つの攻撃の質が高い。これまでの戦い同様に岐阜がボールを握りながら攻撃の糸口を探る時間は長くなりそうだが、奪われてからのカウンターや長野の時間帯になった時は、守備陣はもちろん、前線陣もかなりの集中が求められそうだ。

[両チームのホットゾーン]

上図は、これまでの戦いによる両チームのホットゾーンだ。岐阜はボランチのあたりから両サイド同じような色合いとなっている。一方で長野も同じような色合いながら、より左サイドからの攻撃を主としていることがわかる。3トップを多用し、攻撃的サイドバックの水谷が左サイドに入り、左サイドからの攻撃に迫力がある。

両チームの予想布陣
[両チームの予想スタメン①]

スタメンについては、様々なパターンが考えられるが、ここでは両チームともに2パターンを考えてみた。①は両チームともにこれまでの試合でもメインとしてきた布陣を予想。岐阜は4-4-2。GKは松本拓也。4バックは右から舩津徹也、藤谷匠、岡村和哉、宇賀神友弥としてみたが、右は山内寛史や菊池大介。センターバックでは、ケガの状態にもよるフレイレや若い小山新の起用も考えられる。ボランチは本田拓也と柏木陽介を予想。持ち味のボール奪取に加え、ロングボールの精度も高い本田とボランチからより攻撃的な位置をとる柏木が縦関係で戦うやり方は、相模原戦でも機能していた。同じく攻守において能力の高い庄司悦大がスタメンに入ることも十分に考えられる。サイドハーフも予想は難しい。ここでは右に畑潤基、左に藤岡浩介を予想したが、両サイドともに好調なアタッカーの窪田稜、村田透馬という2000年組も控えている。ボールキープから主導権を握りたい前半は畑を起用し、徐々にアップダウンが苦しくなる時間帯で窪田・村田を投入し、掻き回すことを予想した。2トップには、石津大介とンドカ・チャールス。鳥取戦で移籍後初ゴールを決め好調のンドカとコンビとして相性が良さそうなのは、よりポストプレーに徹する田中順也だろうが、ここ最近の石津の好調さを考えると、スタートは、石津とンドカを予想した。
 
一方の長野もシュタルフ悠紀リヒャルト監督が1番好んで使う4-1-2-3の形で予想。GKは大内一生だろう。4バックは、右から杉井颯、喜岡佳太、池ヶ谷颯斗、水谷拓磨を予想。4バックではこのメンバーが多く、右サイドバックは変更があるかもしれない。アンカーに坪川潤之、もしくは、宮阪政樹のスタート起用も考えられる。トップ下には、東浩史と佐藤祐太を予想。4バックシステムの場合は、サイドアタッカーの三田尚希はこのトップ下に入ることが多いため、三田起用も予想している。3トップは左にデュークカルロス、右に森川裕基、中央に宮本拓弥を予想した。

[両チームの予想スタメン②]

もう1パターンとして予想できるのが、両チームともに3バックのパターンだ。岐阜は前節鳥取戦で採用した流動的な3バックシステムで3-4-1-2の形。3バックに藤谷、岡村と大西遼太郎を予想。鳥取戦ではヘニキをここで起用したが、よりボールを落ち着かせて回す能力に長けているのは、大西のように感じた。ボランチには本田と庄司を予想。ここにヘニキや山内彰らの起用も考えられる。ウィングバックの右は菊池先発を予想した。3バック時の攻守のバランスを考えてポジショニングする能力により長けているのは、菊池だろう。トップ下に柏木。吉濱遼平の起用もあるだろう。2トップには、藤岡と石津を予想した。
 
長野は3バックの場合は、3-3-2-2が多い。喜岡、池ヶ谷に加え、秋山拓也が左センターバックに入るだろう。このシステムの場合は、ウィングバックの右に三田、左に水谷とかなり攻撃的になる。 

長野戦に向けた個人的見解による岐阜の戦い方

試合を通して高いモチベーションで90分途切れることなく高い強度でサッカーを展開する長野に対して、こちらが試合を優位に進めるために必要なのは、やはり「先制点」だろう。ただ長野戦でもう1つ気をつけなければならないのが、先制した場合、前半の35分以降、そして後半15分以内に失点をしないことだ。この時間帯に長野に得点を許すと、かなり厳しい試合となる。現在首位を走る鹿児島ユナイテッドも9試合で唯一黒星を喫しているのが、このアウェイ長野戦。しかも前半に先制して折り返したが、後半に2失点し敗れている。岐阜も去年この長野の地で同じように後半に逆転を許した。ビハインド時の後半開始15分にゴールを決めた後の強さは長野の伝統になりつつある。1番理想なのが、先制した後、早めに2点を奪うことだ。鹿児島と対称的に前半1-0で折り返した後、4-0で完勝したいわきFCは、後半早い時間に2点目を奪うことに成功している。つまり1-0の後、2-0に出来るか、1-1になるかが大きなターニングポイントとなりそうだ。(岐阜が先制した場合)

[長野戦 守備時の警戒点]

守備面において警戒すべきポイントが、長野のボール回しからの左サイドの攻撃だ。長野のプレーヤーで個人的に1番自由にさせたくないのが、左サイドバックの水谷だ。彼の積極的な攻撃参加からの鋭いクロスやシュートはかなり脅威となるだろう。最終ラインとボランチの組み立ては右サイドに寄ること多く、図で言うと、杉井・喜岡・坪川と佐藤が下がり気味でボールを動かし、相手を左寄りにスライドさせ、そこから、池ヶ谷を経由して、左サイド高い位置に人数をかけ、左から崩していく。左ウィングでデュークカルロスを起用した場合、デュークはより中央にポジションを取るので、水谷が縦に仕掛けやすい。ここは、サイドハーフも戻って守備対応する必要がある。その守備対応がより巧みなのが、畑なので、畑がスタート起用の方が良いと考える。また岐阜全体の意識として必要なのが、逆サイドに展開された時に、素早く岐阜もスライドすることだ。長野は状況や相手によって、戦い方も変えてくるが、この左サイドからの攻撃はおそらく確実に狙ってくるだろう。

[長野戦 攻撃時の狙い]

一方で、攻撃時の狙いにもいくつかポイントがある。まずは、前述の警戒ポイントが逆に岐阜の攻撃時の狙いになりうることだ。水谷・デュークらで左サイドからの厚みある攻撃を防ぎ、ボールキープができれば狙いたいのがまず図上の●のエリアだ。つまり、水谷のオーバーラップした裏のスペース。上下動の運動量が持ち味の畑はもちろん、2トップの一角(図では石津)がこの裏に入り込む。すると、ここをケアするために、池ヶ谷が釣り出される。その釣り出されたスペースにもう一角のFW(図ではンドカ)が走り込む。この連動性は狙いとしたい。左サイドで時間をかけて長野が攻撃してきた場合、アンカーの坪川も割と攻撃的に出てくる傾向にある。つまり、池ヶ谷の背後をつくンドカの動きには、坪川の対応か喜岡が対応せざるを得ない。すると、逆サイドにスペースが生まれ、藤岡らが入り込めれば、シュートまで持っていけるだろう。この狙いは、「速攻」の時にうまく活用できるだろう。
 
また違う狙いとして、「遅攻」の場合だ。長野も構えてディフェンスする時には、例えば図の左サイドのように、宇賀神が高い位置をとり、サイドハーフの藤岡がより中央にポジショニングをする。ンドカ・藤岡・柏木あたりが近い位置でポジションを取ることで、長野の右サイドバック(図では杉井)を誘き出し、その裏に宇賀神が走り、ボランチや最終ラインからロングボールでここを突く動きもかなり効果的になるだろう。
 
岐阜の得意とするサイド攻撃はこの試合はかなり活かせるはずだ。それは、長野が人数をかけて攻撃的にきた時は、おそらく空きやすい右サイドのスペースから「速攻」、ブロックを組んできた時は、オフザボールの動きを多用しながら主に左サイドから組み立てる「遅攻」。この使い分けから先にゴールを奪い、追加点を奪いたい。

さいごに

監督交代で一気に状態を立て直した岐阜。天皇杯の2試合と、状態の上がっていない相模原・鳥取と比較的岐阜が試合を優位に進めやすい相手との4連戦でチームコンディションを上げながら、結果として公式戦4連勝を飾った。ただここ4試合は全てホームだったため、横山体制では初のアウェイ試合。アウェイでの戦いはどうなるか分からないが、今の岐阜は攻守の切り替えがとても速く、90分通して高い集中力とパッションで戦うことができている。さらに長野は横山雄次監督にとっては古巣対戦。特別な思いがあるはずだ。上位につける長野を打ち下し、勝ち点3を岐阜に持ち帰りたい。


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