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重大発表

illustrated by スミタ2022 @good_god_gold

 本社の社員が大会議室に集められたのは昼休みの直後だった。部屋の奥に置かれた役員用の長机には白い布がかけられ、それに向かい合うようにして二百席ほどのパイプ椅子が並べられている。時間ギリギリに渡師が会議室へ入ると、同時に扉が閉められ、マイクのスイッチが入るブツという音が聞こえた。
「それでは社長」専務の丸古が促した。
「うん」比嘉は座ったまま卓上のマイクを手元へ引き寄せる。
「みなさん、昨今の業界の状況はおわかりですね」
 渡師はうつむいて小さな欠伸をした。伝染ったのか、隣の伊福からも欠伸をする声が聞こえる。重大な発表があると聞かされているが、このままいつもと同じような話を延々と続けるだけなら、さっさと仕事に戻りたかった。
「我々としては何としてでもシェアを拡大しなければなりません」
 そんなチラリと隣へ目をやると、伊福は眠そうな腫れぼったい目を何度も瞬かせている。
「みなさんが頑張っていることはわかっています。ですが、ここはやはり全員で攻めていく局面です。一丸となって全員野球で進めるべきだ。そう判断しました」
 社長が力強くそう言うと会議室内に戸惑うようなざわめきが広がった。
「また野球の喩えかよ」
「ははは。全員野球か」
 渡師も思わず苦笑いをする。
「それでは発表します」
 丸古は卓上スタンドからマイクを抜いて手に持つと、その場ですっくと立ち上がった。
「まずはピッチャーからです。営業部の井塚君。背番号二十七。ぜひがんばってください。続いて経営企画部の砂原君。背番号十六……」

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