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【絵本レビュー】 『おおきなきがほしい』

作者:さとうさとる
絵:むらかみつとむ
出版社:偕成社
発行日:1971年1月

『おおきなきがほしい』のあらすじ:


「おおきな おおきな 木があるといいな。
 ねえ おかあさん」

かおるは窓から顔を出して言います。

「おや、まあ、どうしてなの」

お母さんに聞かれて、かおるは話しだします。
彼が考えたのは、こんな素敵な木なのです。

『おおきなきがほしい』を読んだ感想:

大好きな大好きなさとうさとるさんの絵本です。子供の時、近所のおばさんに、もういらないからといって箱いっぱいの本をもらいました。大きくなった息子さんのものだったそうです。その中にコロボックルシリーズが入っていたのが、私とさとうさんの(一方的な)出会いです。コロボックルは4歳の息子にはまだちょっと早いけれど、ぜひ読んでほしいと思って手に取ったのがこの絵本でした。

 ツリーハウスは私の夢でした。今でも実は欲しいと思っています。家のことが面倒になった時さっさと潜り込んで、はしごも上にあげちゃうんです。好きな音楽を一日中かけて、本を読んだり、お茶を飲んだり、昼寝をしたり。木の葉を通して空の色がだんだん変わっていくのを見てたりしたら、詩のひとつやふたつ簡単に書けるような気がします。それでお腹が空いてどうしようもなくなったら降りて来て、何事もなかったように家族とご飯を食べるんです。「今日はどうだった?」なんて話をしながら。

子供の時、ツリーハウスの代わりに私は秘密の洞穴がありました。小学校低学年の時に住んでいた私の部屋には、半畳サイズの押入れがありました。その下の部分をある日空っぽにし、家にあったお客さん用クッションと毛布、お気に入りのぬいぐるみと本を持ち込んで、私は自分だけの洞穴を作りました。卓上ランプも入れたので、本も読めました。押入れのドアもできるだけ閉めて中に潜んでいると、外の道を通る車の音と微かに揺れる感覚、時々父が家を歩く足音以外何も聞こえず、またそれすら遥か遠くから聞こえてくるようで、私はすっかりどこかの無人島の洞穴で生き延びようとする探検家になっていました。話し相手は時々どこからか姿を現わす山猫(うちの飼い猫)だけ。分けてあげられる食べ物もないことを詫び、ひとりと一匹はただ暗闇に寄り添っていたのでした。

かおるみたいなツリーハウス、やっぱり欲しいなあ。キッチンもあるから1週間くらいは余裕でひとりでいられるでしょうね。

『おおきなきがほしい』の作者紹介:

さとうさとる
1928年神奈川県横須賀生まれ。童話作家。旧制高校卒業後、市役所勤務を経て、1950年、神戸淳吉、長崎源之助らと同人誌「豆の木」を創刊する。1959年、『だれも知らない小さな国』を自費出版、その後講談社から出版され、同年、毎日出版文化賞、60年には日本児童文学者協会新人賞、アンデルセン国内賞受賞をそれぞれ受賞。以降ファンタジーの第一人者として活躍。 1967年、『おばあさんのひこうき』(小峰書店)で厚生大臣賞・野間児童文芸賞受賞。1988年、一連の創作活動に対し、巌谷小波文芸賞受賞。 その他主な作品に、「コロボックル」シリーズ(講談社)、「赤んぼ大将」シリーズ(あかね書房)、『おおきなきがほしい』(偕成社)など著書多数。

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