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虎狩【短編小説/3500字】

虎狩【短編小説/3500字】

 うだるような夏の、真夜中のことである。森の中ではときおり鳥のはばたく音がどこからともなく響き、空気は熱されてゆらめいている。昼間動いていた獣たちはその身を寝床に横たえ、明日の力をたくわえようとしていた。あたりの空気はじっとりとした水分を含んでおり、動かなくとも重苦しい熱帯の暑さを感じさせる。辺りは静かだったが、暑さ自身が熱を持って夜を振動させていた。

 そんな森の中を一匹の獣が横切っていった。

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