ノルウェーの保育園事情〜その2〜
保育園インタビューシリーズ!第2弾
私のノルウェーでの1番最初の友達、Sちゃんが昨年秋からノルウェーの保育園で働いているので、保育園がどんな感じなのか聞いてみたくて、インタビューを通して共同で記事をつくることにしました。
Sちゃんとは普段からノルウェーや日本の社会のこと、自分たちが感じていることなど、話題尽きることなくいつまでも話してしまう間柄。直感でベルゲンに来ることにした私にもやっぱりここにご縁があったんだなぁと、会うたびに感じてしまう友達の一人です。
ノルウェーの子どもたちの様子、保育園や幼児教育について、私自身のフィンランドでの経験も踏まえながら、日本人の私たちから見た今のノルウェーを一緒に綴ります。
第2弾:保育園の1日 ←今回はこちら
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保育園での子どもたちの食事
あすか
前回聞いたカルチャーショックの中に、保育園で食事が3回あるというのがあったね。
日本の保育園だと昼食と午後のおやつ、長時間保育だとさらに夕方のおやつって感じで、全員じゃなくて多い子で3回くらいかな?もしかしたら最近は夕食を出すところもあるかもね。
フィンランドは朝食、午前のおやつor早め昼食、午後のおやつという感じで、やっぱり最低3回は食べてそうだったよ。
S
そうね、食事に関してはこんな感じ。
● 1回目 8:00過ぎ 朝食(全粒粉パンに、色々載せて食べる。)
● 2回目 11:00過ぎ 昼食(全粒粉パンに、色々載せて食べる。温かい料理は週1回程度。)
● 3回目 14:30ごろ おやつ(フルーツとクリスプ・ブレッド。お誕生日の子どもがいる場合は、お誕生会のあとにケーキやアイスクリームを食べるよ。)
あすか
そうか、保育園に着いてから朝ご飯を食べるという点ではフィンランドと同じだね。子どもはたくさんエネルギーを使ってすぐにお腹が空くだろうから、細々食事を挟んでくれるのはいいよね。
フィンランドだと、給食のように保育園で提供されるのが通常で、親がつくって持たせる必要がないのが普通。朝起こして着替えさせて保育園に運べばOKだから、親が楽だって聞いた。ノルウェーも同じ?
S
私は私立の保育園に派遣されているんだけど、私立はコロナ禍でも食事を園で提供しているところが多いよ。
公立の保育園では、コロナの影響で家から昼食を持ってきていると聞いたよ。
ただ、日本人の思い描くような「お弁当」ではなくて、パンとフルーツとか、比較的用意しやすいものを持ってきているようだよ。
あすか
そっか〜!日本のお弁当が栄養面も見た目もすごく考えられてるのに比べると、ノルウェーはシンプルそうだね。
それにコロナ禍では、保育園のルールも普段と違うところがたくさんありそう。
フィンランドでは保育園でも学校でも、昼食だけはスープ、パスタのような、温かい給食が必ず出ていたから、そこはノルウェーとはちょっと違うみたいだね。
フィンランドは約100年前の独立前後の物理的に貧しい時代の名残と、今でも移民など経済的に様々な家庭環境の子どもたちがいることから、家庭以外で栄養のある食事を提供する機会を重視していると聞いた。だから給食費はすべて国負担で子ども・生徒は無料、先生は食べる日分の給食費(1食数百円程度)を払っていたよ。私もゲストとして小中学校(総合学校)に行かせてもらってたときは、校長先生が許可してくれて、生徒と同じように無料で食べさせてもらってた。
そういえば、私がフィンランドで7年生の遠足について行ったときの昼食(サンドイッチと飲み物)、食事じゃないけどバス代も無料だったなぁ。
S
ノルウェーのほうが、食事へのこだわりは少ないと思うよ。
温かい昼食が出ない日は、朝食と昼食が同じ。野菜といえば、パンに載せるきゅうりとパプリカくらい。その代わり、フルーツは毎日色々な種類が出るよ。(温かいご飯の日は、野菜もいつもより多く出るよ。)
食事に関して驚いたのは、大人が子どもたちに「何が食べたい?」と確認すること。
私は「バランスよく食べなければ」という意識があったのだけれど、ノルウェーの保育園では子どもが自分で意思表示することが重視されていると感じたよ。
まだ食べきっていないのにお代わりしたがる場合は、「自分で食べると言ったから、食べきってからお代わりしようね」と伝えるよ。
あすか
それは私もびっくり!
フィンランドでは、食べたい量を自分で決めさせる指導、そして自分で決めた量なんだから残さず食べなさいという指導をしてた。それに子どもが「これは嫌いだから食べたくない」と主張しても、「好きなものだけじゃなくて、嫌いなものも最低一口は食べなさい」と言う先生が多かったかな。そこは日本と同じ感覚なんだなぁと感じたのを覚えてる。
子どもたちの1日
あすか
子どもたちは保育園にいる間、どんなスケジュールで過ごしているの?
S
食事を含めた一日のスケジュールはこんな感じ。
天気に関わらず、少なくとも1日1回は外で遊ぶ園が多くて、園によっては2回外で遊ぶ、一日中外で遊ぶという園もあるよ。
ノルウェー人の有名な格言によると、Det finnes ikke dårlig vær, bare dårlige klær.(悪い天気なんてない、服装が悪いだけだ)
だからね。雨でも雪でも大丈夫なつなぎを着て、外で遊んでいるよ。
あすか
フィンランドも、昼食は正午というよりは11:00とか早めのことが多かったかな。これは保育園に限らず、学校も会社も同じだった。すぐお腹が空く私には正直ありがたかった(笑)
子どもを屋外で昼寝させる北欧の慣習
あすか
それと、屋外で寝る件。
フィンランドでも「子どものお昼寝は外で」と聞いていたから私はノルウェーでも同じなんだ〜!って思ったけど、そんな事情を知らない人が聞くとびっくりだよね!「え、北欧で?寒いのに?外で寝かせるの?」ってね(笑)
子どもを外で寝かせる理由は、冷たく澄んだ空気が肺を強くしてくれるという、おばあちゃんの知恵というか、伝統があるんだと聞いたことがある。ドアマットなど洗濯しづらいものを氷点下の屋外に出して、ダニ類を凍死させてパンパンはらってきれいにする、というのもどこかで読んだことがあるし、確かに冬の澄んだ空気は冷たくて気持ちいいから、なんとなく私にも納得感はあるんだけどね。
S
昼寝の場所は、実は保育園によってまちまちなんだ。
● 屋外で寝る場合…昼食のあと、子どもたちに帽子と暖かいつなぎを着せて、さらにベビーカーに載せて、屋外の庇(ひさし)の下で寝かせるよ。ベビーカーには小さな寝袋を置いてあって、子どもは寝袋のなかで昼寝するよ。雪が降っていても外で寝るよ。
屋外で寝る子どものイメージ画像(ノルウェー語のページに飛びます)
● 屋内で寝る場合…防音室で寝る、ロフトで寝るなど、お昼寝専用のスペースがあるよ。
あすか
雪が降っていても外🤣
お昼寝の時間はどのくらい?
S
30分から最大2時間まで、最長時間が決まっている子どももいるよ。保育園で寝すぎると家に帰ってからうまく眠れなくなってしまう子もいるようで、親御さんからのオーダーで「30分寝たら起こすように」と言われている子もいるよ。
あすか
親からお昼寝の時間まで指定されるなんて、先生たちはちょっと大変そう。私が保育園に通ってたときも、お昼寝の時間は指定されてたのかな...?年齢にもよると思うけど、みんな一緒だった気もするなぁ。
S
お昼寝時間の管理は、一つの園でしか任されたことがないから、もっと緩やかな園もあると思うよ。
あすか
なるほど、そうなんだね!
↑北欧でベビーカーに乗っている子どもは、こんな感じのことが多い。
*ライセンスフリーの画像を使用しています。
大人たちの1日
あすか
子どもたちのお昼寝中、先生(アシスタント等を含めた大人)はどんなことをしているの?
S
お昼寝中は、先生たちは順次、昼休憩に行くよ。昼休憩は30分間で、職員用の休憩室で過ごしている。
仕事中の先生たちは、いろいろな業務をこなしているよ。
● お昼寝の見守り役…子どもをあやしたり、起きた子どもを遊び場に連れて行ったりするよ。
● 起きている子どもの見守り・遊び相手…0-3歳児クラスは、15人中2~4人ほど、お昼寝しない子がいるよ。
● おやつ作り…園によっては、お昼寝の間に、スタッフが温かいおやつを調理する場合があるよ。ワッフルやパンケーキなど。
その他、余裕のある場合は今後のスケジュールなどを先生同士で話し合っているようだよ。
あすか
やっぱり忙しそう!特に小さな子どもがいる現場で働く人たちはどこでも、毎日が闘いだね。
先生たちの主なスケジュールも聞きたいな。
S
フルタイムの勤務時間は、7時間半。
そして、先生たちには早番・中番・遅番があるよ。
早番の先生は8時前から、中番は8時台、遅番は9時ごろ登園するよ。
こうして、子どもが多い時間帯は人手を多く、子どもが少ない時間帯は少なくしているよ。
大きい園だと、途中一部の先生が会議に行くこともあるよ。このシフト制が導入されているだけで、保育園で働く人の負担は結構軽減されてる気がする。
あすか
日本では管理職が1番早く来て1番遅く帰るのが責任の在り方、みたいなところもあるけど、子どもの命を預かる現場だからこそ、負担が分散されているのはとても理にかなっている気がするね。
S
そうだね。
ちなみに昼休憩は30分で、人手不足にならないよう、交替で取るよ。
昼食は、自分で持ってきた軽食を食べることが多いよ。
園によっては、お金を払って園児と同じメニューを食べるか、軽食を持参するか選べるところもあるよ。
あすか
「大人たちも子どもと同じものを食べなきゃいけない」みたいなプレッシャーがないところも、ノルウェーっぽいかもね。
1日のスケジュールを見ると「遊び」という時間が多いね。
S
保育園での活動は、「遊び」と「集まり(ノルウェー語ではSamling・サムリング)」に分かれているよ。
ノルウェーの保育園では、教える形の教育よりも、子どもが遊びの中で自発的に学ぶことが重視されているよ。だから、ほとんどの活動は「遊び」。遊びの内容は、次の記事で詳しく話すね。
「集まり」は、昼食前やおやつの前など、区切りのいいときに開かれることが多いよ。これは、保育園教諭の資格のある先生を中心に、歌・読み聞かせのような活動をしているよ。これについても、次の記事でまた詳しく話すね。
あすか
日本でも遊びが重視されていても、どちらかというと「集まり」中心で、みんなで集まって何かをやることが多い印象ね。歌とか、工作とか、体操とか、身体を使ったゲームとか。個人がやりたい遊びをするか、みんなで何かをするか。そこがノルウェーと日本は大きく違う気がするね。
そうそう、先生から保護者への連絡・伝達はどうしてる?
S
毎日お迎えのときに、一日の様子を各保護者に伝えているよ。そのとき、保護者が子育てについて相談することもあるよ。日本のような連絡帳は特になさそうかな。
あすか
お〜!効率良さそうだね。
「大きな園では先生と事務局が常にスマホで連絡を取っている」というのも、第1弾のSちゃんが感じたカルチャーショックの中にあったけど、これは何のためなのかな?
S
園全体への連絡があったり、園長先生にヴィカール(代替職員)の要否を連絡しているようだよ。初めて来たヴィカールの評価も、派遣先の組から園長先生に連絡しているそう。送り迎えの把握などは、パソコンやタブレットなどでやっているよ。
それと、子どもたちの園での様子も、スマホで撮影しているよ。
あすか
徹底したデジタル化、システム化が進んでいるノルウェーらしいね。
次は子どもたちの様子について、詳しく聞かせてね!
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↑トップの写真は、クリスマス前にSちゃんと一緒に焼いたLussekatter(ルッセカッテル)というサフラン味の甘いパン。
毎年12月13日の聖ルチア祭(キリスト教のイベント)が近くなると、保育園や学校でLussekatterを焼いて、子どもたちが白い衣装を着て、歌いながらこのパンを配るのが恒例だそう。
Lussekatterづくりに初めて挑戦した私たちは、レシピ通りにつくったら優に1クラス分まかなえる個数が出来上がったことに驚き(笑)知り合いに分けたり、お散歩に持ち出したりして、存分に楽しみました🤗
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