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記事一覧

【詩】追憶

無機質な人形が
必死の形相で歌っている
そんな歌が好きだったと
ぞっとする先祖還りのタイムスリップに
そっと目を瞑った

ここは心音。
傷がどくどく流れ出る
どうしても帰れない
目の前には9%のかんからかん

どこにも行けないなら
手を繋いで?
どこにも行けないから
手を繋いで

閉じ込められた人生は
浸るだけで許される 許されたい
きっと今だけが、昇天
ひととき、殺される前の
あと二時間で臨界点

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【詩】記憶と生存者

プラスチックのフタをパキっと開ける
みたいに軽かった

逃げろ 逃げろ
逃げられない

急に寒くなった
この季節の空気のせい

帰れないね
変えれないね
何が「ほらそんなもの」なんて、よく言ったよ
飲まれる 飲まれる
いつか閉じ込めた思い出は愛せるようになんてならない

過呼吸 動悸 嘔吐癖
丸まって眠るしかないね
くるまれている安心毛布もどきの中
灰色 残像 夢の中
ノイズの向こうはあの日の秋の

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【詩】アドレナリン

忘れたさを押し流した
酔って捨てた
吐き捨てた

産まれてくる子は
さぞかし気持ち悪いでしょう
嫌悪

憐憫と陶酔は思春期のもの
まだ持ってる私は
さぞかし気持ち悪いでしょう

踊るなら深夜
忘れたいのに捨てられない

好きなんだよ
今の自分が
自己肯定感と引き換えに
頂けるのは
大人の階段

捨てるなら今
何十年
子供部屋中年になりますか?

ノルアドレナリンはいない
今だけ。今だけ
興奮があれ

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【詩】ご満足いただけましたでしょうか?

秋の風は嫌いです。
誕生日のケーキも嫌いです。
好物のグラタンが焼けていました。

暗闇のロウソクがぽっと落ちるみたいに
愛されていた記憶が溶け落ちた
温もりと懐かしさの食べかけだらけだ
ダイニングテーブル、半分がチラシの山積み
ソファに十三畳のリビングルーム
大きな食器棚の前が私の定位置
はっぴばーすでーとぅーゆー

手を叩いて笑ってね
嬉しかったね
おめでとう

手間暇は慈しみなのでしょう

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【詩】暗室とイヤホン

暗い方が好き
耳は塞がれてたい

自分だけでいたい
自分だけが痛い

水疱が潰れる音がする
心臓が潰れる音がする

弾けたあの子は
いつの誰

もう戻らない過去に
暗幕をかけて
退路を断つ。
扉の前で膝を抱えた。

朝まで泣くから誰も開けないで

浸透圧にひたる夜
「沈む」と「浮かぶ」を繰り返す
ゆれる揺り籠
ここはどこ

沈む夕日に手にかけて
朝日はまだ殺せない

きっと、ここは疑似胎内
膝を抱

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【詩】持続可能な

んてない
夢見ちゃってる大人子供
でも、夢見てたいもんね

安全基地に守られて
ずっと続けばいい地球
唯一無二に浮かぶ青い 

努力義務です守るのは
努力しましょう生きるのを
駆け抜けていくから、寿命の果てまで

後続には何が積まれた?
ひとりひとりと倒れます
駆けた
懸けた
欠けた

スタートラインにも立てない君と
手のひらだけ分だけ勝てた僕

どこまで続けば
果てはどこ
目の前だけ見てる先頭集

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【詩】感情をツカエ

あの日の閉鎖病棟、
世界が終わったと想った日、
夜の独り言、
何処にもいけないから潜った底の其処
ぶっきらぼうに捨てたのは何

ぜんぶぜんぶまとめて捨てた
朝焼けの紫の雲
すずしい風
夏の空いてる昼間に見たあおぞら、
全部全部纏めて捨てた

ここは誰
個々は誰

いらないなんて
昔の声だけで充分だよ
優しい優しい慈しみで包んで
私にだけ見せてたお母さんの笑顔は
誰の幻想?

「ねえ、今夜使わな

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【詩】夜の音がする

夜の音はつめたい
ひんやりと、落ちる

窓の外で
夜の空が
壊れる音がする
乾いた星屑になって
ゆっくりと、落ちる。

誰もいないみたいな
灰色に溶けてる静かな街で
眠れない人たちが
金魚みたいにパクパク

お勉強が終わらないから眠れないの
眠れないから眠れないの
ここが好きだから眠らないの

耳をすまして目をつむって
ベッドの奥底に沈みたい
どこまでもどこまでもどこまでも
どこかの誰かに会えるま

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【詩】母になりたい

分身が欲しい
形見が欲しい

愛したい
愛されたい

強くなりたい
きっとなれる
物語に出てくるお母さんみたいに
強くて可愛いママになりたい

慈しみたい
愛情がほしい
大切なものがほしい
特別がほしい

成長に涙したい
誕生日を祝いたい
守りたい
きっと可愛い生まれてくる私の子

そしたら抱っこしたい
聖母みたいに
優しくなりたい
幸せだけで微笑んで

そしたらきっと
理想になれる気がするんだ

【詩】夜が明ける

夜更けと夜明けの間には
眠れない人が漂ってる
ふらふら 艷やかなアスファルトに浮かぶ影
ゆくあてもないんだよね

立ち疲れたら座り込むのは
蛾の集まる街灯の下
どぷどぷ 飲み込まれて沈んでく
手放せたらいいのにと
ひらひら 数え切れるほどの星に掌を見せる

こんなに沢山いるのに
僕らはすれ違わない
ひとりひとりの道を歩いてる
それでもきっとここにいるのだろう

手を振れば触れる距離と
思い込んでる

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【詩】ディストピア飯

ここはディストピアらしい
今日もご飯はおいしい
ここがディストピアなんて
なんの根拠もないのにさ

街には人が歩いてる
買い物する人、観光客
私も今日も生きてる
知人は昨日死んだけど

なんか最近増えてるスポーツジム
健康体が歩いてる
おしゃれなカフェでレポートかな?
君はきっと上級国民のご子息

ここはディストピアらしい
そういうの流行るよねいつでも
私でも楽しみがあるのだから
そんなわけないの

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