【詩】記憶と生存者

プラスチックのフタをパキっと開ける
みたいに軽かった

逃げろ 逃げろ
逃げられない

急に寒くなった
この季節の空気のせい

帰れないね
変えれないね
何が「ほらそんなもの」なんて、よく言ったよ
飲まれる 飲まれる
いつか閉じ込めた思い出は愛せるようになんてならない

過呼吸 動悸 嘔吐癖
丸まって眠るしかないね
くるまれている安心毛布もどきの中
灰色 残像 夢の中
ノイズの向こうはあの日の秋の夜
寒くて終わってた たったひとりの夢の中
あのときは まだ 病棟にいたっけ

抽象で誤魔化すな、なんて
我に返る私は
十年前より大人になれたよ
住居もベッドも自分のものだし

向き合え 向き合え
って何がそんなに責め立てる?
今を生きればいいじゃん
成功者よ
生存者よ

ほら、私は生き延びた
あの子は今、どこで何をしてるかな?
また逢う日まで。
また明日。


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