flight plan #1 AI隆盛の時代にパイロットは必要なのか?

コロナ禍において世界中の航空会社は苦境に立たされていますが

それ以前より、パイロットという仕事はAIに取って変わると言われてきました。

ある雑誌で見た記事によると、将来AIによってなくなる職業の「第3位」が

パイロットだと、書かれていました。

一般的に言われるその見込みが正しいのかどうか、

業界の末席にいる私が感じているところを述べていきたいと思います。


私の結論から先に言うと、

技術の面では、将来AIの信頼性向上と共に「パイロットの職務はAIに代行される」

ただ、それはAIの進歩の速度からみても、「大きく遅れてくる波」となり、

他の業種でのAIへの置換よりも、数十年単位で遅れて変わる。

のではないかと考えています。


そう考える理由は、主に3つ。

「航空機以外の施設整備へのコスト」

「企業の航空機導入サイクル」

「メーカーの航空機開発意欲と、当局の思惑」


先に「雇用問題」や「乗客の安心感」といった要素は

時が来れば実際の課題としては挙がるとおもいますが

今回は除外しています。


それでは、「航空機以外の施設整備へのコスト」から。

AIがパイロットに取って変わる、と言われ始めたころから

同業種の中でよく言われていたのが、

『気象への対応』についてです。

科学の発達に比例して、航空気象の解析も

数十年前からくらべて飛躍的に進歩してきていますが、

まだまだ未開の領域が残っています。

航空系webサイトでもよく言われるCAT(Clear Air Turbulence=晴天乱気流)

もそのひとつです。

そもそも人類は、未だに地球の大気を全て解明し切れていません。

「ビッグデータを活用して予測」がAIの得意なところだと思いますが、

航空気象の分野では、AIの活躍するためのデータ収集に

それなりに長い時間がかかると思われます。

もちろん、航空機は大陸間を跨いだ移動を行うので、

データ収集も地球規模です。

なので、それらも航空会社単独ではなく、

メーカー・オペレーター・各国航空局が協力して取り組む必要があります。



加えて、『自動離着陸への対応』についてもコストがかかります。

AIがパイロットの代わりに操縦するので、

もちろん着陸も自動(Auto Land)です。

Auto Landは、航空機側の性能だけでなく、

地上施設にも特殊な設備が必要とされています。

つまり全ての着陸がAutoで出来るわけではありません。

悪天時にもAuto landが出来る最も精度の高い

CAT III及びCAT IIのILSを設置している空港のは、

日本で9つしかありません。(しかも片側RWYだけというところが多いです)

定期便が就航している空港は50以上もあるのに、です。

これには色々理由がありますが、そのひとつに

CAT III及びCAT IIのILSの設置工事・保守点検に関わる維持管理費用が高額

ということが大きいかと思います。

空港の利用者数や、定期便の就航数、地理的な制限等で

設置できない or PAYしないとされているのが主な理由です。

まだまだ、CAT ⅠのILSすらない空港・滑走路も点在しますので、

RNAVやVORなどの非精密進入へのAuto Landの対応も必要とされます。

これらにも相当のコストと時間が必要です。


『最低気象条件』や『Go around』の判断をAIにさせることなども、

航空機にAIを搭載するだけでは対応できないポイントです。


長くなりそうなので、

2つめ3つめについては、日を改めてお話したいとおもいます。

asmy

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