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キャラバンで学ぶ英文法

大好評をいただいた「レッチリで学ぶ英文法」に続き、「洋楽で学ぶ英文法」の第2弾は「キャラバン(CARAVAN)で学ぶ英文法」だそうです。

私は、この「キャラバン」というバンドのこと、よく知らないのですが、アスクの狼いわく「わかる人にはわかるから」ということだそうですので、ぜひお楽しみください。

※ ※ ※ ※ ※

岡崎:
あの〜、「レッチリで学ぶ英文法」の続き、やりませんか。そろそろnote更新しないと、どんどん廃れていってしまうかと、、、

森田:
せやかて工藤、どうせ、俺から「この曲やろうぜ」と提案したところで、「古い」「マニアックすぎる」「ダサい」「中二病」「プログレは嫌だ」「ニーズがない」「加齢臭がひどい」「こじらせすぎ」とか、あんたからさんざん言われるのが目に見えとるやないか。

岡:
いやいや、前回のレッチリはメンバーの復帰や新譜の発売が重なったのでよいタイミングかと思いまして。今回はおじさんの好きにしていいですよ。

森:
じゃあ、今回は、前回の最後に言ったように、「キャラバン」でええのん?

岡:
ええです。正直よく知らんすけど…。キャラバンって、どういうバンドなんですか?

森:
キャラバンは、1960年代とか1970年代に活躍していた(今も解散してないけど)、イギリスのプログレバンドやね。いわゆるひとつの「カンタベリー系」ってやつよ。

岡:
カンタベリー、、Wikipediaによると

1964年にカンタベリーで結成されたワイルド・フラワーズを祖とし、ここからソフト・マシーン、キャラヴァンといったカンタベリー・ロックの代表的なバンドが生まれた。さらにバンドの離合集散とともに人脈が広がり、ジャンルとしてくくられるほどの存在感を示すようになった。

おお、ソフトマシーンは大好きす。THIRDは結構聞き込みましたねえ。インストじゃないんですか?

森:
インスト曲もあるけど、ボーカル曲もあるぞ。だいたい、インスト曲だったら、文法解説もへったくれもないやんけ。

それで、プログレって言うと、「長くてかったるい」とか「難解」とか「変拍子」っていうイメージがつきまとうけど、キャラバンは「叙情派」って感じなので、とっても聞きやすいぞい。

岡:
へえ(「ぞい」って、オーキド博士かよ…)。

森:
なあ、おまえ、ぜんぜん興味ねえだろ。

岡:
いやいや(ふう…)。

森:
今回は、代表的なアルバムだと思われる、この In the Land of Grey and Pinkの1曲目、“Golf Girl” を取り上げるぞ。まず、これがジャケットな。

In The Land Of Grey And Pink(グレイとピンクの地)

おっしゃれやろ?

岡:
あー。これ、地下にあった新宿ユニオンプログレ館で紙ジャケよく見ましたわ。ピンクの水彩がめちゃかっこよかった記憶があります。紙ジャケやたら出てた時期ありましたよね〜

森:
そうなのよ。ワイも欲しい。ちなみに、ヴァイナル盤もそんなに高くないから、買ってもいいんだけど…。

岡:
で、「課題曲」は、どんな感じなんすか?

森:
これや。まずは聞いてみそ。

岡:
随分とかわいい曲ですね。これはホルンすか? ほのぼのした感じ。フルート!もあるしかなり好みです。

森:
せやろ? いい曲やねん。この歌詞をチェックしていこうや。ワイも、あんまりちゃんと歌詞の内容を考えたことがなかったから、いい機会になる。あ、ちなみに、タイトルでもある Golf Girl っていうのは、「キャディさん」的なものというよりも、「ゴルフ場で、お菓子だとか飲み物を売っている、売り子さん」っていうイメージ。

岡:
なるほどなるほど。では、さっそく…。

Standing on a golf course, dressed in PVC
I chanced upon a golf girl selling cups of tea
She asked me did I want one, asked me with a grin
For thruppence you can buy one, full right to the brim
So, of course I had to have one, in fact I ordered three
So I could watch the golf girl, could see she fancied me
And later on the golf course after drinking tea
It started raining golf balls, she protected me

岡:
ええと、

PVCで着飾ってゴルフコースで突っ立ってる
お茶を売ってるゴルフ場のおねーちゃんをものにする

こんな感じすか? まずPVCってなんですかね、おじさん。

森:
意外といい作品を選んだのかもしれん。
じゃあ、とりあえずその2行までな。まずPVCっていうのは、polycinly cholride「ポリ塩化ビニール」のことで、ようは「ビニール」よ。だから、「レインコート」ってこと。でさあ、「レインコートを着て、ゴルフコースで突っ立っている」のは「誰」なの?

岡:
施設とか想像してたす。ビニールのカッパを着ていたのは...
ワイ( I )や!!

ビニールのカッパを着て突っ立てるおいら。
お茶売ってるねーちゃんをモノにする機会をうかがってる

こんな感じや!!

森:
そうね。
カッパ(って、ずいぶん古い言い方だけれども)を着ていたのは「私」ですな。ややこしいことを言うと、「分詞構文の意味上の主語が明示されていない場合、主節と同じ」というルールがあるのですわ。だから、I chanced upon … の I が standing の「意味上の主語」ということになるのよ。
というわけで、「ワイはゴルフコースで突っ立ってた。カッパを着てな。そしたら…」と続くわけやけど、なんですか、この「モノにする」とかいうのは。どうしてそうなるのよ。

岡:
ゴルフガールってタイトルから、辺り一面ブリティッシュグリーンのゴルフ場に、ピンクのサンバイザーとスカートのキュートな女の子がいる情景が浮かびました! そしてチャンスときたもんですから、こいつはこの娘狙っとるんやろうなあと思って、chance=モノにする、となりましたです。(ドヤ)

森:
想像力が豊かすぎん? それに、いくらなんでも先走りすぎやん? 今回のポイントは「イギリス英語」やね。イギリス英語で、chance (up)on …は、どういう意味か調べてみようぜ。

岡:
基本辞書を使わないのが、この「~で学ぶ英文法」の隠れルールですが、しょうがないですね。調べます...

〔…に〕偶然出会う

とありました! モノにするじゃなかったです笑

森:
辞書は引いて引いて引きまくろうぜ…。で、訳はどうなるわけ?

岡:
そうすると、こんな感じではないでしょうか?

ビニールのカッパを着て突っ立てるおいらは、
お茶売ってるねーちゃんに偶然出会ったよ

森:
うん。そうね。
「カッパを着て、ゴルフコースに立っていたら、お茶売りの女の子に出会った」ということね。
じゃあ、次行ってみようか。なお、thruppenceは、イギリス英語の表現で、threepence「3ペンス硬貨」のことね。

She asked me did I want one, asked me with a grin
For thruppence you can buy one, full right to the brim

岡:
grinとbrimがわからんけど、それぞれ辞書に「歯を見せて笑う」「(コップ・皿などくぼみのある器物の)縁、へり、(帽子の)つば」と出てきたので、

彼女は、微笑みながら私に1杯欲しくない? 3ペンスでどう?って
右側のえくぼ全開で聞いてきた

かなぁ、、

森:
と、とりあえず、前半は、まあ、いいんじゃない? 「お茶を1杯いかが? 微笑みながらワイに訊ねた」ってことよね。
でも、ちょ待てよ、「右側のえくぼ全開」ってなんだよ!
ああ、辞書に「くぼみのある」って書いてあったから、そこから無理くりに引き出したってことね。でもあれだろ? 自分でも、無理があるよなあって思ってるだろ?

岡:
いや、でも、ほら、イギリスっぽいかなって。。

森:
ちょっと何言ってるかわからない…。うーん、とりあえず、For thruppence you can buy oneは「3ペンスで、1杯買える」→「1杯3ペンスです」ってこと。それはわかってそうだね。brimは「ティーカップのふち」だよ。
ちなみに、ワイがいっとき「コップのフチ子」を集めていたことがあるというのは、ここだけの秘密だ。

ええと、fullは「いっぱい、満タン」ってことだべ? で、right to the brim は「ふちまで」。だから、どういう意味になると思う?

岡:
rightってまさか右じゃないのか⁉ もしや正確にとか?
ああ、溢れる寸前まできっちり波々と入った茶ですね。

森:
そうそう。この right は副詞で、「ちょうど」とか「まさしく」みたいな意味やね。だから、「カップのふちまで、たっぷりと注ぎますよ」ってな感じですわ。じゃあ、次行くか。

So of course I had to have one, in fact I ordered three
So I could watch the golf girl could see she fancied me

ちょっと、2行目が破格っぽいので、
So of course I had to have one, in fact I ordered three
So I could watch the golf girl
I could see she fancied me
みたいな感じで考えてみそ。

岡:

だから、もちろん1杯もらわなければならなかった、
実際には3杯もらっちゃった。
だから、彼女がおいらに気があるのが見てとれた

なんかうまくいった気がする。watch とsee があるのまぎらわしいんですけど。

森:
お、ええんちゃう? 細かいところはあれだけど。
「もらわなければならなかった」だと、「飲みたくなかった」みたいじゃん? そうじゃなくて、「そんなふうに言われたら、そりゃ飲むっしょ」って感じ。
で、in factは「実際には」でいいんだけど、「それどころか」というニュアンスも少しあるよね。「実際は、1杯どころか、3杯も飲んじゃったんだけどね」って感じかな。
ただ、watch と see の違いをちゃんと訳に入れてほしいけどな。

岡:
似てるから「そんな風に見えた」ということで一緒くたにしてしまいました。

森:
一緒くたにすなや。
watchは「じっと見つめる」ってことやん? だから、So I could watch the golf girl は、「お茶を3杯も飲んだから、その間、彼女のことをじっくり眺めることができた」ってこと。
そして、seeのほうは「わかる」ってことやん? I could see she fancied me は、「そうやって彼女を見てたら、『この女、ワイに気があるやんけ』ってわかった」ってことよ。なお、fancyは、これもイギリス英語っぽい感じの動詞で、「…を好む」って意味やで。

岡:
ああ、ちゃんと段階があるんですね。3杯飲んでる時間を想像できてなかったす。

森:
うむ。もうちょっとでヴァースのほうが終わるな。頑張ってや。

And later on the golf course after drinking tea
It started raining golf balls, she protected me

岡:
うーんと…

お茶を飲んだ後、ゴルフコースに戻った。
彼女は降り始めたゴルフボール大のあられからおいらを守った(大きな傘で)

急展開!! プログレっぽいです。

森:
いや、だいたい合ってる。

岡:
えっ、結構苦し紛れだったですが、、

森:
「ゴルフコースに戻った」の「戻った」は、ちょっと余計かなあ。「ゴルフコースから、別のところに移動した」って話は特になかったから。
「お茶を飲んだ後、ゴルフコースで…」ときて、問題の It started raining golf balls. という表現が登場するわけやね。

これ、実に「おいしい」表現なのよ。実は、rainには「他動詞用法」があるの。「…を降らせる」という意味ね。
例えば、It rains cats and dogs. と言えば、「猫や犬が雨のように天から降る」という意味になるんだけど、実際には「どしゃ降りになる」という意味で使われる表現やね。
だから、ここの It started raining golf balls. は、文字通りには「ゴルフボールが雨のように降り出した」という意味にもとれるし、「ゴルフボールのように、大きな雨粒の雨が降り出した」や「ゴルフボール大の雹が降って来た」という「比喩」的な解釈をすることも可能やで。

でも、ここでは、ゴルフ場にいるわけやし、「他のプレーヤーの打った球がパカパカ飛んできた」という意味に捉えるのがいいんじゃないかなあ。で、「当たったら危ないわ!」ということで、女の子が「私」を守ってくれるわけね。

岡:
売り子と違うんですか? キャディーさんみたいですね。

森:
キャディーが「茶を売る」っていうのは無いと思うから、別物やと思うけどな。さて、2番のヴァースは繰り返しだから、あとはコーラスだけ片付ければ終わりやで。きばりや。

[Chorus]
Her name was Pat, and we sat
Under a tree, she kissed me
We go for walks in fine weather
All together on the golf course, we talk in morse

また2行ずつやっていこうぜ。

岡:
まかせてくださいな。

彼女の名前はパット、僕らは木の下に座って、彼女はおいらにキスをした。

she kissed me て、自分からじゃないんだ、パットは積極的な娘ですね。

森:
ええやん。「彼女の名前はパット。二人で木の根元に座ったら、彼女からキスしてくれたんだ」ってことやね。たしかに積極的やね。
ええと、今まで一切無視してきたけど、「Patとsat」、あるいは「treeとme」みたいに「似たような音」になっているのは、なんでかわかるよな?

岡:
韻を踏んでるんですね。

森:
せやな。韻を踏んでいるわけやね。rhymingというやつね。

岡:
その次は、

私たちは晴れてる方に歩いて行き、
ゴルフコースにいる全員で、ムース状に語らった
(つまりざっくばらんになめらかに思い思い語らった)

森:
うーん…。松田優作に言わせれば「なんじゃこりゃ!」ですよ。意味が解りませんよ。まず、時制に気をつけてほしいのねん。今までは、一貫して「過去形」で書かれてきたが、ここだけ唐突に、本当に唐突に「現在形」になってるやん?  これって、なんでだと思う?

岡:
わからんです。なんで?

森:
今までは「ゴルフ場で、2人が出会った馴れ初め」の話が「過去形」で語られているのよ。で、ここは「そうして出会った二人が、今は付き合っている」という前提になっている。
だから、「晴れた日には、二人で散歩に出かけんねん。一緒に、ゴルフコースを散歩すんねん」ときて、最後の we talk in morse よ。

岡:
morseって何? ムースじゃないんすか? おじさん、ムース使う世代でしょ?

森:
ワイはムースは使わんなあ。もうちょっと上の世代やね。ワイは「ジェル」を使う世代よ。ワイより若い人たちは「ワックス」を使うんやろって、そんな話はどうでもええねん。morseは「モールス」、つまり「モールス信号」のことよ。

岡:
モールスね。意味わからんす。じゃあ、we talk in morse っていうのは、「私たち二人は、モールス信号で話す」ってこと? なんか頭おかしくないですか?

森:
その証拠に、もう一回ちゃんとこの部分を聞いてみな。

on the golf course, we talk in morse と歌った後に、なんだかわからん「ピコピコ音」が入ってるっしょ?

岡:
!!! これ、モールス信号ってことですか?

森:
そうらしい。で、当然、どういう意味なのかが気になるやん? でも、そのあたり、ちょっと詰めが甘いみたいで、そこまでディテールには拘ってなかったようね。この投稿文によると、単なる random letters ということらしい。

岡:
すいません、all togetherってなんですか?
あと、彼女のバイト先に散歩するのなんかやじゃない?
ゴルフ場気持ち良いとは思いますけど。。。

森:
all togetherは「一緒に」ってことやん? つまり「二人で一緒に」ってことや。togetherだけでも意味はあんまり変わらんけど、all は、まあ、強調している言葉だと思ってええと思う。

彼女のバイト先で散歩するのは、まあ、たしかにあれだよなあ。彼女のバイト先のファミレスで食事をするようなもんだよなあ。

で、文字通りには「モールス信号で会話する」という意味になるんだけど、やっぱり常識的に考えて、「他の人にはわからない、二人だけの秘密の言葉で会話する」とか、そんなロマンティックな意味だとは思う。

岡:
比喩ね、プログレの歌詞は比喩というか、わけ分からんほどかっこいいみたいなところありますからね。

森:
ちなみに、この Golf Girl という曲は、最初のテイクでは Group Girl というタイトルで、歌詞もちょっと異なっていたらしい。こっちは「妄想度」がさらに高くて、「キスして、結婚して、Jason という子供が生まれて…」みたいな話までしているねん。

岡:
パットっていい娘なんでしょうね。

森:
でも、ほぼ実話に近いらしい。ベーシストの Richard Sinclair が、奥さんとの馴れ初めを歌にしたらしいね。

岡:
ロックバンドがゴルフ場行かんでしょう。まあプログレだしありか。しかし、ほんとにいい曲でした。ほのぼのとした感じで。

森:
で、次はどうするんや? っていうか、まだやるんか?

岡:
やろうよ!!

森:
お、おう…。

※ ※ ※ ※ ※

…というわけで、「洋楽で学ぶ英文法」シリーズの第二弾は、いかがでしたでしょうか? 「いいね」の数によっては続編があるかもしれません。
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