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ピーターパンシンドローム / Sound Schedule ―決して大人になることはなく死んでいく― 勝手に曲紹介


今日は、大人になってから知った名曲です。
 
この曲の発売は2002年。僕は小学生でした。Sound Scheduleというバンドも、世の中の常識も何もかも知りませんでした。そして、その子供は子供のまま会社に入り、オーイシマサヨシというアーティストに出会うのです。
月刊少女野崎くんという抱腹絶倒のギャグアニメでみこりん(画像→)がメインヒロインを演じているのを楽しみに見ていましたが、そのOPがオーイシマサヨシでした。

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すぐにその曲を気に入り、オーイシマサヨシのバイオグラフィを調べてみると、Sound Scheduleというバンドを組んでいたというではありませんか。そして、YouTubeで過去のPVを漁っていると良い曲が出てくるわ出てくるわ。びっくりしました。

その中でも特に刺さったのがピーターパンシンドロームでした。

ピーターパンシンドロームとは

『大人という年齢に達しているにもかかわらず精神的に大人にならない男性を指す言葉』(Wikipedia)

と定義されています。元々はダンカイリーという心理学者が提唱したパーソナリティ障害ですが、正式な用語ではないそうです。が、そんな曲が刺さらない訳がありません。

今日を終えた人々の流れ
横目であざ笑って

最終電車を見送り
僕らは夜の風になった
人差し指立て 騒ぎ散らかしては
U.F.O.が見えたとか
月の表裏が逆だとか
当たり前のように
声を張り上げていたんだ

ここではまさに世間を知らない馬鹿なガキどもの夜の集会が描かれています。この子供だけの夜の集会というのがドツボですね。エモすぎます。

僕は中学生の時、訳もなく近くの大学に友達数人で集まり、ひっそりとした真っ暗なカフェテラスで無意味に時間を消費しました。

カフェテリアの横にはカップヌードルの自販機があり、お箸とお湯が自由に使えました。その為、近くのコープさんで、どん兵衛やらU.F.O.やら、カップヌードルを買って、寒空の下、白い息を吐きながら食べたのです。

あの人工的な味と、冷えた身体に染み渡るスープ。中学生らしい覚えたての下ネタと、クラスの女子の噂と、くだらない馬鹿話。そんな青い時間が、透き通る星空の下で絶えず花開いていました。

今でもその風景は思い出せます。
 
警備員のおっちゃんに早く帰れと言われたり、屋根からカフェテリアに張られた防球ネットに飛び乗ったり、ごみ箱に捨てられてあった蛍光灯をこなごなに割ったり、構内に入って来たイノシシに椅子を投げて追いかけられたり……。

イノシシが凄まじい切り替えしで椅子を避け、一直線に向かってきたときは死を覚悟しましたが、無事校舎の中に逃げ切れた時は大声を上げて笑いました。

そんな日々もありました。

訳も分からず 大人になってく
境界線などどこにもない

最終的に僕たちは
それぞれの道へと進んだ
流されるまま 成す術もないまま

どういう未来を待ってる?
ねぇ どういう明日を夢見てる?
高鳴りは そう 強く
あの頃より 強く

今やもう、馬鹿をしていた殆どの友達とは疎遠です。一人だけ、今でも東京に戻った時に遊ぶ友達はいますが、それ以外は何をしているのかも知りません。

その友達に会いたいかと言われても、今更集まった所で話すことも無いのでしょう。

そうして、僕はいつの間にか大人になりました。
制度上の大人に。
 
でも、あの冬の日々の記憶は僕の中で根を張っています。
何かの役に立つ訳でもない。
懐かしい話に花を咲かせる訳でもない。
それでも、何故か忘れられないのです。

ピーターパンシンドロームという言葉は一言も出てこない曲。ですが、誰もが持つこんな幼稚な感傷を見事に表しているように思えます。

僕はいつまでも子供です。この前も子供染みた言い訳をして、先輩にしかと窘められました。

ただ、僕はいくつになってもその日々を持って行くのです。
そして、決して大人になることはなく死んでいくのだと思います。



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