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2021年上半期ベストアルバム30

俺はとても悶々とした気分だ。

なぜか?

Drive Like I Do、つまりThe 1975の別プロジェクトの作品が未だに音沙汰が無いからだ。あまりにも話が出なさすぎて、俺の中のベンガルトラがいつまで経っても檻の中でウロウロしてウイスキーで丸一日全部無駄にしてしまいそうだ。しかもスパソニにもほぼほぼ来ないの確定じゃんねぇ。

まぁそんなわけで去年はこの手のアルバムランキングをやる度にいろんな人から

「どうせThe 1975が一位」

「知ってました」

「もはや様式美」

など散々な言われようだったわけだが、今年は今のとこThe 1975はいません。残念だったなぁお前ら。ハハッ。

という感じで、一体何がランクインされるのか今のところ全く読めないであろう上半期ベストアルバム始めたいと思います。


30位 エース橋本 「Play.Make.Believe」

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まず最初のランクインはエース橋本のデビュー作。このエース橋本という日本大好きアメリカ人、実は元オッドフューチャーのメンバーであり、マックミラーやチャンスザラッパーなどのプロデュースを手掛けた実力者だ。さすがオッドフューチャー出身というだけあって、非常にスムースかつメロウなジャジーヒップホップが展開されており、向井太一や5lackといった客演も有効に活用した和洋折衷なオルタナティブR&Bの傑作。


29位 girl in red 「if i colud make it go quiet」

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ノルウェーの若きベッドルームポップシンガーのデビュー作にして、早速ベッドルームの域を飛び出した力強い楽曲を展開している。去年のBeabadobeeのアルバム同様、非常にオルタナ世代のロックリスナーの心を鷲掴みにするような芯食ったグッドメロディがアルバム全体で流れていて、それでいながら今のポップシーンの時流にも合わせたようなサウンドを取り入れたりと、器用さと力強さがいい感じに作用したかなと思った作品だった。


28位 Subsonic Eye 「Nature of Things」

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今年の邦楽なんかでもミツメの「IV」とかHomecomingsの「Moving Days」とかこの後登場する某ベテランの作品みたいな、安定して良作を作り続けるバンドがインディーギターロック畑からよく出てくることがある(僕はこれをReal Estate現象と呼んでいる)。だが個人的に驚いたのが前作で爽やかなドリームポップ・シューゲイザーを聴かせていたシンガポール出身のこのバンドが、そのようなバンドの系譜へと進化したことだろう。前作が好きでたまらなかった人には物足りなく感じるかもしれないが、僕は服を全部脱ぎ捨てたことでグッドメロディがさらに際立った素っ裸の彼らの方が好きだ。


27位 Spills 「Reflexions」

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普段あんまbandcampとか見ないんですけど、これはたまたまなんかおもれぇアルバムないかな~と思って探してたら見つけたやつです。非常にどんよりとした暗い色彩のドリームポップ・シンセポップでして、ジャケ写のヴェイパーウェイブ感なんかも込みである種のノスタルジック性といいますか、聴いてて悲しみや喪失感みたいなものが曲から感じ取れて、そうした幽玄的な美しさが光る一枚なのかなと思いました。


26位 Howie Lee 「Birdy Island」

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アジアを代表する電子音楽家の作品ですね。中国出身というだけあって、楽曲から漂う壮大なスケール感やオリエンタリズムな雰囲気は、まさに中国の絵巻を瑞々しいエレクトロサウンドで具現化したファンタジーな傑作といった趣ですね。それにしてもあれですね、エレクトロミュージックの感想って難しいですね。上手く語れるだけの語彙力が欲しいと思いつつ、次のアルバムはしっかりとレビューしていきましょう。


25位 Tohji・Loota・Brodinski 「KUUGA」

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24位 Julien Baker 「Little Oblivions」

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去年のフィオナアップルを契機とし、近年USインディーシーン(特にフォーク系)を中心に女性SSWの躍進が目覚ましいわけだが、年始からの先行リリースの時点で話題となっていたのがJulien Bakerの新譜も間違いない傑作でした。地元メンフィスで全ての楽器を自ら演奏した本作では、USインディーロックの土着さみたいなとこが表れた豊潤なカントリー調のサウンドに、彼女の持つ内省さとエモーショナルな展開が炸裂しまくった珠玉の12曲が収録されている。

23位 平井堅 「あなたになりたかった」

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ポップスターが内面的な狂気、もしくは際どい性癖といったものをある程度キャリアを積んだタイミングで突然あらわにすることがある。古くで言えばASKAの「kicks」などがいわゆる問題作と言われ、今年でもaikoの「どうしたって伝えられないの」がかなり生々しい言葉でグサっと我々リスナーの心を切り裂いてきたわけで。この平井堅の新譜も彼の変態性といった部分がいかんなくというか、そんなとこまで見せちゃって良いのってぐらいニタニタと笑うシリアルキラーのような作品であって、飾らない音色が優しくも怖い会心の一枚だ。


22位 NANORAY 「Zapper」

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Twitterでおすすめしている人がいて聴いてみたらよかった作品の一つですね。アメリカのEDM、Drum and Base系のアーティストらしく、日本のアニメのサンプリングからスタートする今作では、圧倒的情報量の密度が濃い電子音がひたすらに攻めまくってきて、とにかくその異様に高いテンションが感がどこか破滅的で、ポップな音像と相反する壊楽的な一枚だ。


21位 FRITZ 「Pastel」

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定期に激ヤバインディーロックバンドが出てくるオーストラリアからの一枚。シューゲイザー/ドリームポップをベースとしながらエモの疾走感を足した、まさにカレーにカツを足したようなそりゃみんな大好きだよねっていう一枚で、春の空気感を彷彿とさせる爽やかな曲調が印象的ですね。どこか懐かしさも感じさせるシンセや淡々としたボーカルなんかはAlvvaysを彷彿とさせ、まさにドリームポップ好きの性癖に刺さりまくるアルバムだと思います。


20位 underscors 「fishmonger」

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ブックオフのマスコットキャラクターみたいなジャケット写真からは想像もできないような、新時代のロックンロールを定義したような作品。元々はフューチャーベースやトラップなんかを作っていた人らしく、今作では00年代のガレージロックやエモをハイパーポップという観点から再解釈した構図となっており、その結果前者の持つ疾走感と肉感性と後者の持つ破壊性とサウンドの切れ味みたいなとこが上手く噛み合い、全方面においてカッコいい一枚となっています。


19位 serpentwithfeet 「DEACON」

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serpentwithfeetのセカンドアルバムはエクスペリメンタルR&Bというフィールドはおろか、2021年のポップスシーン全体を象徴するマスターピースになるんじゃないかなと思う。アンビエントやポストロックからの影響が窺えるミニマルなサウンドメイキングはシルクのように美しい世界観を演出し、ゴスペルを経由したボーカリゼーションは愛をテーマにした楽曲に極上のエロスをもたらす。その姿は偉大なる先人マーヴィンゲイを彷彿とさせ、表現者としてさらなる高みを見せつけた。


18位 踊ってばかりの国 「moana」

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色々とごたごたもあってバンドに対して距離を持ってしまった人もいるかもしれない。ただそんなことを抜きにしても近年の踊ってばかりの国の音楽面における充実ぶりは目を見張るものがあるし、今年は本作だけでなく下津光史ソロも傑作だった。牧歌的な音楽性に本来属されるはずなのに、狂気と退廃の二つの要素が楽曲からダダ漏れで、それを幽玄的なメロディと雄弁に歌うことで物凄いパワーを感じるんですよね。ほんと音楽の力ってすげぇ~って感心してしまうし、収録曲の「Leimuria」なんかは20年代のアングラシーンの一つの布石として語り継いでいきたい一曲だと思います。


17位 sonhos tomam conta 「wierd」

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このランキングを作成しているときに存在を知って、これは入れなきゃ!と思って急遽ランクインした一枚。ブラジルの宅録シューゲイザーでしてブラックゲイズなんかにもふくまれるのかな?個人的には初期のTurnoverなんかと似ているエモを経由したうえでシューゲイザーといった感じがしたのと、あとボーカルの声がいいからシャウトがめちゃくちゃ様になるし、なによりも魂の叫びのような曲の迫力・力強さが尋常じゃないんですよね。


16位 Miho Hatori 「Between Isekai and Slice of Life ~異世界と日常の間に」

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元チボマットの羽鳥美保のソロ作で、彼女がこれまで表現してきたサウンドが遺憾なく発揮された作品でしたね。僕はこうゆう感じのわかりやすくカッコいいサウンド、芹那風に言えばバキバキでぇ~ビカビカビカアァってしてて~グワワワワァァァンンンってしたサウンドに凄く弱くてですね、もう聴いた瞬間これは勝ち確ですわ、2019年の最終節のFC東京戦のマリノスと同じくらい勝ち確ですわってなったわけですよ。つまり何が言いたいかっていうとめちゃくちゃカッコいいし、あと羽鳥美保のボーカルは圧巻。


15位 LIL SOFT TENNIS 「Bedroom Rockstar Confused」

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LIL SOFT TENNISの1stアルバムがここまで心動かす作品になるなんて、去年の自分に教えたらびっくりするだろうなと思ったりする。正直にぶっちゃけちゃうと去年の「Season」なんかの時点ではまだ粗削りで惜しいなと思うとこもあったんですけど、今作は90sのオルタナっぽい方向にさらに接近したことで曲のキャッチーさみたいなものが増したように感じます。ヒップホップやエレクトロのクロスオーバーという本来の彼の持ち味で新しさという側面を保ちつつも、「Tell Me」や「Lucid Dreams」なんかのメロディアスな楽曲で懐かしさという側面をも標榜させたことで、全てのロック好きに聴いてほしい温かい作品になった。


14位 BROCKHAMPTON 「ROADRUNNER: NEW LIGHT, NEW MACHINE」

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BROCKHAMTONのアルバムを聴いていると、2019年のサマソニ3日目でパリピが一杯いるなというボヤっとした理由で大して好きでもないAlan Walkerのステージを見てしまった過去の自分を袋叩きにしたくなるし、それに加えて最近の解散するかもというニュースを聞くと余計その気になってしまうんですよね。それだけ彼らの作る楽曲は惹かれるものがあるし、ダニーブラウンやエイサップロッキー、JPEGMAFIAといった客演も豪華になったことで、とにかく強いなと思わせる一枚となった。


13位 Japanese Breakfast 「Jubilee」

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韓国出身アメリカ在住のシンガーソングライターの4年ぶりの新作。個人的に10年代のドリームポップシーンにおいて最も信頼してるバンドWild Nothingのジャックが参加した、ダンサブルなシンセポップが胸を高ぶらせる「Be Sweet」が先行曲でリリースしていた時からわくわくしていたし、この作品が出るまでは上半期ベストを決めることは出来ないだろうと悟っていた。そして待ちに待ったアルバムは表現者としての彼女に自由の羽を与えたかのようにワイドなポップスを展開し、逆にリリックの部分では彼女の心の内を描いたようなエモーショナルなものとなっており、まさに今年の注目作としてその一身に受けた期待にしっかり応えるどころか期待以上の結果を提示してくれたように思えた。


12位 For Tracy Hyde 「Ethenity」

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近年日本のオルタナティブロックシーンはとても激アツなムーブメントの一つなのは別の記事で触れたが、その中でもこのバンドのギタリスト夏bot氏を中心とした国産ドリームポップ界隈で軒並み良作を生まれてたのも個人的には凄くいいねぇもっとやれやれ!って感じで見てたわけで。そして本丸のFor Tracy Hydeが今年リリースした新作で、やっぱ本丸は強度が段違いやなとなりましてね、グランジの要素などが加わったことで彼らの鳴らすシューゲイザーが持つノスタルジーさが淡い色合いが増したように感じ取れた。怒涛のように繰り広げられるギターの洪水に振り回されながらも、最後の「スロウボードのゆくえ」で終わる流れは凄く品のある終わり方で構成としては文句なしでしょう。


11位 Quadeca 「From Me To You」

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こちらもTwitterで知った作品(情報源としてほんとありがたい)ですね。詳しくは知らないんですけどなんか元々はYoutuberの人らしいんですけど、アルバムの中身はエモラップと一言で片づけてしまうのは難しい底知れぬ魅力に溢れたものとなってます。まずとにかくトラックが強い、量産型にならない引き出しの多さが曲の質を数段上げている。そしてそれでいながらアルバムとしての統一感と構成力が高くて、もうすでに名盤としての風格が確立されているなと感じた。


10位 GRAPEVINE 「新しい果実」

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28位のSubsonic Eyeで触れた安定して良作をリリースし続ける某ベテランバンドです。この作品なにがズルいって1曲目の「ねずみ浄土」の時点でアルバムの質の高さを宣言しちゃってるところよね。徹底的な引き算の美学とも言える計算されつくしたバンドサウンドは、余計な音が鳴ってないことによりシンプルでありながら崇高な雰囲気すら醸し出している。また「Gifted」や「リヴァイアサン」などと言った彼ららしい美メロなギターロックも健在で、ベテランの余裕に胡坐をかかず先進し続ける姿勢が如実に現れた傑作だ。


9位 KID FRESINO 「20, Stop it.」

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2021年の邦楽シーンを先導する意思を見せるかのように、KID FRESINOは年始にこの強大なランドマークを築き上げた。前作「ai qing」をさらに煮詰めたようなダンサブルなビートを展開し、そのゴツゴツとしたビートすら糸も簡単に乗りこなすフレシノ節はさすがの一言。それでいながら長谷川白紙と共演した「youth」では非常に美しい光を示し、カネコアヤノとの「Cats & Dogs」では時間をも超越した温かいひと時を演出する、一表現者としての成熟度が窺える。邦楽シーンにおける重要な一枚であることは間違いないので、まだ未聴の場合は今すぐにでも聴くべきだ(脅迫)


8位 Cassandra Jenkins 「An Overview on Phenomenal Nature」

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これも今年を象徴する一枚ですよね。NYを拠点とするシンガーソングライターの2作目は、アンビエントフォークとチェンバーポップを掛け合わせたまさに今のUSインディーシーンの潮流のど真ん中を突くような作風で、繊細さが光る楽曲群を引き立たせるような穏やかで立体感のあるサウンドが本作の醍醐味と言ったところかな。時折グランジ的なざらついた音が鳴ることで心の淀みみたいなものが表れており、ただのインディーフォークで終わらない凄みと、ほんとは滅茶苦茶気を使ったサウンドプロダクションをしているはずなのに暖かい空気感でいい感じに緊張感をほぐしてるところもまた良き。


7位 Cathedral Bells 「Ether」

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時代が時代だったらDIIVの「Oshin」やWild Nothingの「Nocturne」みたいなドリームポップの金字塔になることも出来たんじゃないかなとすら思ってしまう傑作。ドラム以外のパートが残響系エフェクトをかけまくったせいで実体として存在せず、もはや雲の中を行ったり来たりするような浮遊感のあるローファイなサウンドが作品に幻惑性と冷たい空気感をもたらしている。全編通して不穏さが漂うメロディの美しさに酔いしれ、リバーブとシンセの洪水に身を委ね溺れる、まさにドリームポップ沼の住人のための一枚。


6位 black midi 「Cavalcade」

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近年驚異的な盛り上がりを見せ、その活況ぶりからロックの未来だー!なんて言われ始めたサウスロンドンのポストパンクムーブメント。個人的にはあまりこのムーブメントにノりきれてなくて、それこそ大絶賛されてたBlack Country, New Roadのデビュー作もそこまで褒めるもんか?って感じで笑。ただこのムーブメントの牽引役のblack midiだけはやっぱその中でも頭一つ抜けてるものがあって、元々ジャズが盛んな地域のムーブメントが影響なのかフリージャズのアプローチをポストパンクに取り込むことでキングクリムゾンを彷彿とさせるカオスな音楽性へと進化。それでいながらアルバムとしての構築美みたいなものも感じられて、聴かせる曲ではしっかり聴かせ、暴れる曲ではとことん暴れまくる、ぐちゃぐちゃも一周回れば究極のカオスとなることを証明したような一枚だ。


5位 Tempalay 「ゴーストアルバム」

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ネオシティポップムーブメントの端っこの方でKing Gnuなんかと一緒に奇天烈なネオサイケをやっていたTempalay、前者はメジャーな方向へと舵を切り破格の大成功を収めたが、後者はより求道者として深化を突き進めた結果本作で一つの完成形を提示したように思える。ファンクやヒップホップを怪しげなサイケデリアで演奏する基本のフォーマットを土台に、日本古来の祭りや原風景を想起させるようなオリエンタリズムな要素が大爆発する。小原絢斗の描く詞世界は独特のユーモアを持ちつつもどこか諦念的な顔が見え隠れし、オリエンタルなサイケという点では坂本慎太郎にも通じたとこがあるんじゃないかな?ラストの「大東京万博」で想起されるAKIRAと似たような混迷の時代となった今を生き抜くために、肉体を超越した先の脳内快楽としての音楽こそ「ゴーストアルバム」なのかもしれない。


4位 NOT WONK 「dimen」

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国産オルタナティブロックシーンをDYGLらと共に牽引する苫小牧の雄が満を持してリリースした4作目。直情的なガレージパンク、エモを奏でたバンドが、ワールドミュージックにジャズ、フォーク、ポストロック、シューゲイザーとありとあらゆる要素をこれでもかと食らいつき、ソングライティング面での成長を伺わせる。とはいえ元が筋金入れの直球パンクバンドなだけあって、音響の部分やアレンジの面では行き過ぎなんじゃないかと無鉄砲さすら見えたりする。結果としてこのアルバムを一言で言い表す上手い言葉が見つからずにいるままなのだが、明確に言えることがあるとするなら〈聴いてみな、飛ぶぞ〉ってことぐらいかな。


3位 Sweet Trip 「A Tiny House, In Secret Speeches, Polar Equals」

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もうずっと音沙汰が無かったSweet Tripが今年最新作を出すこともびっくりだし、しかもそのジャケット写真がなぜそれにしたってぐらい激ダサなのもびっくりだし、蓋を開けてみたらキャリア史上最高傑作と言っても過言ではないぐらい素晴らしい内容だったことが一番のびっくりだ。シューゲイザー/ドリームポップの甘い音像に、IDMやテクノの切れ味のあるサウンドでズタズタにする彼らのお得意の手法が、20年代を経てハイパーポップ的要素へと昇華されたことでサウンドの鋭利さはさらに増した。それに比例するかのように甘い音像の部分に磨きがかかったというか、ソングライティングの方で過去作と比べて耳に引っかかるメロディの曲が増えたように思えた。現代の音楽シーンにおいても耐久するどころか、さらに引っ掻き回してくれそうなぐらいのレベルアップ、まさに偉大なる帰還とでも言うべき一枚。


2位 Porter Robinson 「Nurture」

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この人もなんだかんだ7年ぶりぐらいのアルバムなんですけど、全くブランクを感じさせない素晴らしすぎる内容でした。曲自体は非常にキャッチーなダンスミュージックで、どの曲も耳馴染が良くポップな音像なはずなのにどこか悲哀な一面が見えてしまう。歌詞の方では自分の弱さや繊細さを初めて書いたらしく、そうした内省さみたいなとこが楽曲にある種の切なさとして反映されたのかのと思う。ポーターロビンソン自身スランプに陥り、パンデミックの到来によって自分の生活とより向き合ったことでこの作品を生み出すことが出来たと語る通り、閉鎖的な環境に置かれてしまった現代を生き抜く人々に寄り添うささやかなBGMとして今作があなたをダンスフロアへといざなってくれるのかもしれない。


さてさて、いよいよ一位の発表です。

一位は一体何になるのでしょうか...


















































1位 Parannoul 「To See the Next Part of the Dream」

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いつまでも長い夢を見ていたような気分だ。
じめっとした梅雨のせいでどこにも行けやしないし、いざ梅雨が明けたとなると今度はやれ夏休みだ、部活の予定だ、遊びの予定はどうするみたいな感じで、誰しもがもう2度と戻ってこない16歳の夏休みという永遠を可能な限りしゃぶりつくそうとして、時間という限りある概念を効率よく消費しようとする。
僕はと言えばその頃強烈なアパシーに陥っていて、遊びには誘われればホイホイ言ってたからそれなりに予定は入っていたけど、部活なんかも辞めてたし特段頑張りたいこともなかった。ただ家にいてゲームをやるかギターを適当に弾くかぐらいで、ほんと蒸し暑いだけのぼんやりとした日常を過ごしていた。そんな日々を過ごしていると無性に何かしたくなる衝動に駆られるわけで、とりあえず自転車でも漕いでみたりした。行先はどこにしよう、地平線の果てまで行ってみようかなぐらいのノリで。そんな感じで意味の無い珍道中を繰り広げるも結局意味が無いことには変わりは無いわけで、僕は無性に今していることにグラデーションを与えたくなる。そうしてiPodから音楽を流す、曲の名前は「OMOIDE IN MY HEAD」。

はい。半分フィクションのポエムを書いてみたんですけど、僕にとって何気ない夏休みを忘れられないあの日に変えてくれたナンバーガールの「SCHOOL GIRL BYE BYE」とかスーパーカーの「スリーアウトチェンジ」、Base Ball Bearの「十七歳」みたいな、まさに真っ青な夏の空に彩られた箱庭のようなアルバムという意味ではParannoulのこの作品は全く一緒だと思うんですよね。

シューゲイザーとエモという組み合わせが織りなす、どこまでも直情的でありながらも、ローファイなサウンドが心のざらつきというか複雑な機微を丁寧に描いている。またリリィシュシュをはじめとしたサンプリングの妙、そしてDTMで一人で作り出したという制作背景も含めて、非常に音楽好きとしてそそられる要素がある、いや、要素しかない。それだけ本作の内容は素晴らしいし、こんなふざけたポエムまで書いてしまうぐらい色々とそそられてしまうのだ。

どこまでも晴れやかなジャケット写真と相反するように、その孤独な制作風景からの邪推となってしまうが、間違いなく夏の解放感や夏の終わりの切なさではなく、鬱屈とした夏への閉塞感に対して必死に意味を持たせようともがく苦しむ葛藤が今作から感じ取れた。特に近年だとFrank Oceanが「Blond」においてこれ以上考えられないような夏の終焉を描いたからこそ、みんながみんな充実した夏を過ごせるわけじゃないんだよと真逆のスタンスでParannoulを置くことが出来るのかもしれない。まさにこのアルバムの本質的な部分って本当の意味の"エモい"だと思うし、出自こそ韓国のインディーでシューゲイザーという非常に狭い枠組みからなんだけど、小さな部屋から世界を突き動かすような力がこのアルバムにはあり、そして今後多くの少年少女の夏に特別な意味をもたらしてくれるバイブルとして聴かれ続けるだろう。そんな日が来ることを期待してこの魔法の言葉で今回の記事を終わらせたいと思う。

何聴いてるの?


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