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ファッション誌とアイデンティティ

由香、シンガポールは毎日暑い日が続いています。当たり前だね(笑)。

さてさて、雑誌の話、由香と今もう一度したかったからうれしい。
私はやっぱり雑誌がとても好きで、表紙を見るだけですごくワクワクするものであってほしいと、今も強く思ってる。

今、だいたい毎号買いたいと思ってしまうのは、『otonaMUSE』かな。写真や着こなしが素敵なのはもちろん、年齢的にもしっくりきて、個々のモデルやスタイリスト、ヘアメイクとか、それぞれの人たちのおすすめを信頼できる気がする。美容情報のページの言葉遣いとかも、なんかリアルで、表面的な美辞麗句じゃない感じもいいんだよね。

私が夢中で雑誌を読んでいたころは、選ぶ雑誌自体が自分のアイデンティティだった。
「私はCUTiEが好きなんだけど、あの子はnon-no読んでるんだ、あの子はJJなんだ」って。
どの雑誌を読んでいるかによって、趣味・志向がはっきりわかる気がしてたし、同じ雑誌を読んでいる人とは分かり合えるような気がしていたよ。
雑誌は、おしゃれの教科書でもあったし、それと同時にコミュニティでもあったんだと思う。
(確か、就活時に、宝島社のエントリーシートにも私は、こんなことを書いた)

だから、気に入った雑誌があると毎号買い続けて、そのうち自分の趣味が変わったり、雑誌の編集方針が変わったりすると少し残念に思いながらさよならして、自分にしっくりくる新たな雑誌を探し求めたりして……。

もうそんな感じで、雑誌に自分自身の生き方を重ねてしまうようなことってないのかもね。

それに、今となったら、コミュニティの機能は、それこそSNSのほうがずっと優れているわけだしね。

「この春はこれを着るべき!」みたいな正解を押し付けるやり方も、確かに今っぽくないよね。
もう、ノームコアが一大トレンドとなった数年前の時点で、毎シーズン新しいデザインの新しいものを買わなきゃいけない……みたいな感じはなくなってしまったのかも。
今や老若男女、ベーシック中のベーシックなUNIQLOで満足な時代になっているから、去年と今年で変わる部分ってそんなになくて。

ただ、私はもともとコンサバ誌を読まずに育ったせいで、あまり正解を押し付けるような雑誌を通ってきていないかもしれない。(自分が編集に関わってきたのは、コンサバ系統に位置づけられる雑誌だったから、さんざん「これ着とけば間違いない!」って煽ってきたけれど……)

それよりも、私にとっては、雑誌は自由に服を着ることを教えてくれた気がする。
90年代のCUTiEやZipperは、「周りがどう言おうと、好きな服を着ていいんだよ」というメッセージを強く発信してた。
あと、確か私が高校3年生だった1999年にVOGUE日本版が創刊されたと思うんだけど、創刊の新聞広告が出てたから、すごく楽しみに買いに行って、そのときに初めてモード誌に触れたの。
美しい誌面とコレクションのお洋服の独創性に思わず見入ってしまって、まだ、その当時のVOGUEは保管してあるよ。
あと、VOGUEは、昔の女優の生きざまと私服とかのスタイルを見せてくれたりもして、それからアンナ・カリーナとかヌーヴェル・ヴァーグの女優に憧れてみたり……。

当時、田舎の高校生だった私にとって、手に届くファッションの情報はそれしかなかったの。

今は、ネットがあれば、自分の好きなファッションは検索できるよね。でも、検索って自分の興味のあるキーワードでしか探さないじゃない?
そうすると、自分の興味の範囲外だったけど、出会えたことで新たに好きな世界が広がる……みたいなのが減っちゃうと思うんだよね。

「これが流行ります」っていう表面的な事象だけじゃなくて、博識で美的センスがあってこだわりの強いエディターやスタイリストに、ファッションの歴史や世界観の裏側まで教えてもらえる……というのは雑誌の醍醐味だと思うし、無料のWEBと差がつけられるのは、プロがきちんと作って「お金をかけても読みたい」と思ってもらえるものを作れるかどうか、なのかな。
いつか、そういうものをWEB上でも作れるといいなと思ってる。

でも、由香の言う通り、そのエディターやスタイリストの素性というか、生の言葉がもっと前に出てきたほうがいいのかもね。
インスタと違って、雑誌はどうしても「雑誌の看板」が言っていることとして表現するから、個々のエディターやライター、スタイリストとか、そういう人たちのスタイルや、意見という形になってないよね。
(そういう意味でも、冒頭で話した『otonaMUSE』は、関わっている個々の人たちが際立っていて、リアルなファッションや美容の情報が生き生きと伝わってくるのが面白いのかも)

あと私が最近気になっているのはね、「自由さ」みたいなものが、世の中から少し失われた気はするの。私たちが10代~20代前半だったころと比べてね。
ファッション誌が打ち出すトレンドみたいなのも押しつけがましいけど、逆にUNIQLOみたいなベーシックのみが席巻しちゃって、そこからはみ出ると「悪目立ちしちゃう」みたいな感覚になるのも、つまんないな……。

ネットというツールは本来、すごく自由や多様性を叶えてくれるものだと思うんだけど、その反動か、出る杭を打つような傾向も感じることがあって。

由香に問いを投げかけられて、あらためて考えてみたけど、私自身は、雑誌の世界でも、WEBの世界でも、凝り固まった「これ着とけば正解!」じゃなくて、ファッションの自由さや楽しさみたいなのを見たいんだな、と気づいたよ。

由香は、最近、ファッションで気になっていることはある?


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