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長編小説「インフルエンサー」

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長編小説「インフルエンサー」第三章

第三章 
 この章では、これまでの俺の言葉から紡ぎ出された彼の華麗なる姿に対して、いくらかの留保を与えるかもしれない。なぜなら現時点においてのあなたは恐らく、彼の完成された人間性を信じているだろうから。しかし、一方であなたは疑ってもいるのかもしれない。俺が説明し、あなたが実際に目撃したインフルエンサーとしての彼は、本当の彼だったのかと。非の打ちどころのない聖人のような人間がいるなんて、あまりにもリ

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長編小説「インフルエンサー」第二章

 第二章
 ここで彼との出会いについて話そう。
 俺たちは幼馴染で、お互いが小学一年生の時に出会うこととなった。小学校入学時ちょうどに彼の家族が俺の住んでいた愛知県に移住したのだ。つまり俺たちの生まれはそれぞれに違う。俺は愛知生まれ、彼は宮城生まれだった。
 彼の引っ越した家がたまたま俺の住んでいた家に近かったこともあり、俺たちは自然と仲を深めていった。また、小学一年生と二年生の時には同じクラスで

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長編小説「インフルエンサー」 第一章

 第一章
 彼はインフルエンサーだった。若くして全てを手に入れた成功者として、周囲の人々は彼を囃し立てた。彼の振り撒くかぐわしい成功の香りを我こそはと浴びる世間は皆、彼の一挙手一投足に目を奪われ、賛美した。彼が笑えば嬉しくなり、彼が泣けば悲しくなる、そんな一体感すら人々にはあったはずだ。
 そう、彼はただのインフルエンサーではなかった。彼は最も優れたインフルエンサーだったのだ。彼の言動全てに謙虚さ

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