見出し画像

シンガポールでSTAY@HOME番外編(一時帰国) 6月8日~6月30日

以前noteで触れた、一時帰国中の滞在記です。2年半ぶりの祖国で感じたことを、日々綴りました。

―――――

6月8日(水) 日本への一時帰国0日目


 終わらないかに思えた準備を終えて、空港に向かう。普段はタクシーで家からどんどん離れると共に「パスポートさえ持ってたら大丈夫」と踏ん切りがついてくるのだが、今日はどういう訳か空港が見えてきても不安が拭えなかった。恐らく、運転免許やPCR検査の結果等、普段であれば必要ない物があるからだろう。

 何とか空港に着き、予約時から依頼していたマイレージを使ったアップグレードを敢行した。普段であれば考えもしないことだが、新型コロナウイルスの流行を考えると、少しでも他人と距離を取っておきたかったからだ。ただ、行きのタクシー運転手によると「もう、かつてと同じだけの人が空港に行く印象」とのことで、新型コロナウイルスの流行を気にしている人はあまり居ないのかもしれないとも感じた。

 アップグレードしてもらったお陰でラウンジを使うことができ、大好きなTWGの紅茶を楽しんだ。周囲を見渡すと深夜という時間帯のせいもあってか客は少ないが、スタッフはかなり多い。特に清掃に従事している人は多く、かなり衛生面に気を配っていることが伺えた。かつてのラウンジの様子は分からないものの、ここ数年で清掃に割く人件費は増えているのではないかと想像する。

 ちなみに、今この文章は飛行機の中で打った。なんとビジネスクラスは機内で無料のWi-Fiが使えるとのことで、データが飛ぶ心配もなく安心して書けている。次にいつ乗るか分からないが、本当に有難いサービスだ。折角の機会なので、十二分に味わっておこうと思う。
 
 

6月9日(木) 日本への一時帰国1日目


 飛行機が夜行便だったので、朝には日本に到着した。普段であれば朝のまだあまり店の開いていない時間をどう過ごすか悩むところだが、今回は母のPCR検査の国籍問題という不安材料で頭がいっぱいだ。

 母は日本人であり、シンガポールでPCR検査を受けた際にも日本国籍のパスポートを見せた。しかし、病院側のミスでなぜか国籍がシンガポールとなっていたのだ。加えてその事実に気づいたのは、日本入国に必要な情報入力をするアプリMy SOSに提出してからだった。チェックをしっかりしなかったのを母のミスとも言えるかもしれないが、老眼であることも手伝って見落としたようだ。多分、まさか国籍という初歩的な所でミスされると思っていなかったという気持ちもあったのだとは思う。

 かなり緊張したが、結局母の国籍問題は一度も問題になることなく、空港を出ることができた。絶対に何か言われると身構えていただけに、正直拍子抜けだった。何も言われないのは幸いではあるものの、母が出発の前日に慌てて送った修正版がきっちり繁栄されているかも不明なことを考えると、案外きっちりと管理されていないのだろうか、と一抹の不安が過ぎる。やぶ蛇になる気もして、こちらから水を向けることはしなかったが、今後も問題にならないことを願うばかりだ。


6月10日(金) 日本への一時帰国2日目


 昨日から病院回りをしている。何かしらの異常を沢山抱えている訳ではなく、一応検査しておくべき所が何箇所かあるのだ。シンガポールでもできるものの、国民皆保険がないため、全額自費となり、十分に飛行機代が出る金額になる。また、普段から英語を使って生活してはいても、医療用語は分からない単語が多い。医師との会話の中で毎回毎回単語を調べるのも厳しいため、母語で会話できる日本で診察することが帰国時のルーティーンになっている。

 大きな病院とは言え、今日は金曜で平日だから混雑していないだろうと思っていたら、意外に混んでいる。加えてソーシャルディスタンスの関係で、待合の椅子に全員が座ることもできず、皆立つ場所に困っている印象だった。空席を見つけたと思って座っていると、隣にスニーカーにハーフパンツという出立ちの男性が立っていた。オシャレな格好だし、若い人だろうと気にしていなかったのだが、ふと顔を見上げると、70代位に見える。

 慌てて席を譲ったものの、服装の雰囲気で判断してはいけないと反省した。また、今回の話からは少しずれるが、年齢を問わずファッションを楽しむ人は生きる姿勢としても格好いいと思うので、見習いたいとも思う。
 
 

6月11日(土) 日本への一時帰国3日目


 2年半ぶりに、髪の毛を切った。ずっと短くしたいと思ってはいたのだが、新型コロナウイルスの流行下でヘアサロンに行くことに抵抗感があった。加えていつもシンガポールではなく日本に帰国して切っていたので、今日まで先のばしになっていたのだ。昨日の時点で毛先は既に太ももにまで到達しており、トイレに行くにしても、単に座るだけにしても、髪をまとめないといけない状態だった。長い髪は好きではあるものの、結構面倒な部分があったのも事実だ。ちなみに、シャンプーは毎回大体5プッシュ使わないと足りない始末だった。

 単にカットを頼むだけではもったいないと思っていたので、切ってもらった髪はウィッグ製作に使用してもらえるというヘアドネーションに出すことにした。「折角の機会だから、自分で切ってみませんか?」と美容師から提案があり、初めてハサミを握らせてもらう。手前に引きながら切ると上手くいくとアドバイスがあったが、結構難しい。改めて専門職の技術を実感できた。
 2019年以来のヘアカットで、髪の長さはミディアムにまで短くなった。髪を重いと思ったことはなかったが、切ってみて感じるのは頭が軽くなったということだ。スタイリングの方法も聴いたので、しばらくは短い髪を楽しみ、次第に伸びてくる時間も大切にしていきたい。
 
  

6月12日(日) 日本への一時帰国4日目


 昨日、祖父母の家に到着した。既に高齢ということもあり、日本に到着してから数日はホテルで自主的に隔離していたのだ。少し山が近いのか、到着して滞在していた中心地よりも涼しい。正直、今の時期の日本はシンガポールの記憶と大差ないと思っていただけに、ちょっとショックだった。実家に服は置いているものの、メインはシンガポールで使う機会に恵まれない冬服だ。上着は持って来なかったらため、色のコーディネートは無視して着用している。

 ただ、ずっと日本で暮らしている祖母に言わせると、結構暑くなったらしい。個人的には肌寒いと感じるだけに、暑いと言われると少し戸惑う。今のところ寒い時期に帰国する予定はないものの、このままでは冬には絶対に戻って来られないと思う。

 衣類と言えば、ファッションもしばらく帰っていない間に、感覚がズレてしまったような気がする。以前は何を見ても可愛いと思っていた覚えがあるのだが、今回はあまりピンと来ない事が多いように感じるのだ。もしかすると、新型コロナウイルスの影響で個人的な服のニーズが変化したことも影響しているのかもしれないが、服を見るのも楽しみにしていただけに、あまり楽しめていない部分にショックを受けている。あまりお金を使わないで済むのは嬉しい反面、滞在中に感覚が戻ってくるのを願うばかりだ。
 
 

6月13日(月) 日本への一時帰国5日目


 新型コロナウイルスが少しでも収まって一時帰国したら、絶対にケーキ屋へ行きたいと思っていた。シンガポールにも、パティスリーはある。ただ、地域密着型の地元に愛される店のようなタイプではなく、チェーン店が多いのだ。どこで購入しても同じ味が楽しめるという利点がある一方で、ラインナップにない物が食べたいときは困る。わがままだとは思うものの、他にも好きなケーキ屋が近くにあればいいのにと思ってしまうこともある。

 今日は遂に行きたいと思っていた店へ行き、ケーキを買うことができた。いちじくや旬の桃を使ったケーキが揃っており、ショーケースを眺めるだけでも帰ってきた価値があるように思う。どれも美味しそうで、目移りしてしまう。悩んだ挙句、最後の1個になっていた期間限定の桃ショートケーキにした。

 帰宅して食べてみると、瑞々しい桃の甘さと生クリームがぴったりだ。加えて、底に敷いてあるパイ生地がパリパリで、食感にもアクセントがあって面白い。あっという間に食べてしまったのが、本当に惜しいと思うレベルの味だった。祖母や母が食べた、いちじくのタルトや和栗のモンブランも大満足だったようだ。スイーツが食べたくて日本に帰ってきた訳ではないが日本に帰ってきて良かったと思う瞬間だ。
 
 

6月14 日(火) 日本への一時帰国6日目


 昨日行ったケーキショップに、傘を忘れてきた。シンガポールでは1年を通して雨が多いものの、降る時間が短いこともあり、基本的に折り畳みしか持ち歩かない。昨日に限って、実家にある長い傘を使っていた。店を出る頃には雨が止んでいたため、うっかり忘れてきてしまったのだ。連絡を入れて、後日取りに行くことになったが、長らくこういった経験もなかったので、何だか梅雨だなあと改めて実感した。

 昨日から続く雨のせいか、今日はかなり気温が低くて長袖を着ていても涼しいくらいだった。明日も同じ気温だろうと思いながらニュースを見ると、明日は今日と比較して6度も高いらしい。温度が上昇するということは分かるものの、正直なところ何を着たら丁度良いのか想像がつかないでいる。

 シンガポールは基本的に気温が変化しないので、前日や当日に天気や気温を確認する習慣はない。日本を離れる流れる時間が長くなるにつれて、気温と服装の関係性が分からなくなってきた。信じられないかもしれないが、12月に半袖のカットソーとジャケットといういで立ちで外出して寒い思いをしたこともある。周囲には「何でそんな格好で来たの」と突っ込まれたものの、私は本気で服装の想像がつかなかったのだ。それで結局、明日は何を着たらいいのだろうか。
 
 

6月15 日(水) 日本への一時帰国7日目


 諸事情あって、家族がPCR検査を受けた。断っておくと感染が疑われるからではなく、病院で検査を受けるのに必要とのことで赴いたのだ。検査方法は、唾液を採取するタイプだった。出国時に鼻の奥に棒を突っ込まれた身としては、痛みがなさそうで羨ましいなあと思って横目でみていた。ただ、唾液の場合は、1時間食事や飲み物が摂取できないらしい。最後にコーヒーを飲んでから60分が経過していなかった家族は、その場で15分待機した後に検査へと移った。今まで唾液検査の方が絶対に良いと思っていたが、制約がない分、鼻の方が楽という考え方もあるかもしれない。

 検査の後は、祖父母と母と4人でちょっといい外食をした。新型コロナウイルスが流行し始めてからずっと帰国できなかったことを考えると、約2年半ぶりだ。近所の定食屋とは違う、少し良い食事をするのは、少し特別な気がする。ご飯が美味しいのはもちろんのこと、家族4人で外食ができて本当に良かった。ちなみに、牛タンを食べた。

新型コロナウイルスが次第に落ち着いてきたら、またこうして家族で食事がしやすくなるのだろうか。最近はサル痘の流行も危惧されていると耳にするが、2連続で病気が蔓延するのは嫌だなあと思う。
 
 

6月16 日(木) 日本への一時帰国8日目


 郊外にある大きなダイソーへ、久しぶりに行ってきた。シンガポールにもあるが、商品が全て輸入されている訳ではないため、楽しみにしていたのだ。行ってみると、100円以外の商品がかなり増えている印象を持つ。中には、1000円と表示されている物もある。実際、物も良さそうで確かに到底100円には見えない。品質が上がっているという意味では良いのかもしれないものの、元来のイメージとはズレている気がする。いや、昔の印象に固執している私が単に古いのだろう。

 そういえば、帰国して最初に驚いたのは、物の値段だ。消費税率が上がったのだから当然なのだが、ずっと体感していなかったからか、当初は戸惑った。増税と気づくまでは、個々の店が新型コロナウイルスの流行による苦境から、値上がりしたのかと思った程だ。帰国できない間に、私が知らないだけで、ダイソーや税金以外にも、色々な物が変化したのかもしれない。今しがた思い出したが、お気に入りの飲食店がいくつか閉店していた。継続している店もあっただけに仕方がないものの、少し残念に思ってしまう。新たにお気に入りの店を探す、良い機会だということにしておこう。まだ2週間ほど滞在するが、これからも同じような発見をするに違いない。
 
 

6月17 日(金) 日本への一時帰国9日目


 先日注文していた、ブルーライトカットが60%入っている度入りの眼鏡ができた。眼精疲労がひどく、帰国したら絶対に作りたいと思っていただけに、本当に嬉しい。可愛いフレームも購入していたので、完成を楽しみにしていたのだ。実際に対面してみると、思った通り素敵な眼鏡だ。掛けてみると母には「アーティストっぽい」というコメントをもらい、満更でもない気分だった。

 しかし、眼鏡をかけた自分の顔を鏡でじっくり見てみると、結構胡散臭い。金を貸して欲しいと言っておきながら、返さない人に見える。更に付け加えると、金を儲けて倍にするからとか何とか適当なことを述べて、踏み倒しそうだ。もっとも、あまりにも怪しいため、実際は誰も金銭を貸さないかもしれない。断っておくと眼鏡に罪があるのではなく、私の顔面と掛け合わせたことによる結果だ。ただ、この眼鏡を掛けていると躊躇うことなく文筆業を名乗れる気がする。会社員と言う方が、怪しまれそうな風貌だからだろう。

 予想外の結果にはなったが、これで眼精疲労が軽減されるはずだ。前から母よりも目のトラブルが多くて困っていた身としては、強力な武器を手に入れた気分だ。今後は、目から来る頭痛で画面が見られないという日が減るといいなと思う。
 
 

6月18 日(土) 日本への一時帰国10日目


 実家にある、冷蔵庫の整理をした。滞在する上で、私や母が使いづらいと感じたことが1番の理由だが、祖母にとっても使いやすいとは言えなさそうな印象を持ったからだ。特に年齢を重ねることで身長が縮み、以前よりも小柄になった祖母には、1番上の棚は不便に見える。確認はしていないものの、上段の奥はあまり見えないのではないかと推測している。仮に見えていたとしても、使いやすくはないはずだ。住人の使う頻度に応じた配置にした方がいいと思い、祖母と週末で仕事が休みの母の3人で片付けを決行した。
物の位置が決まっていないためか、同じ物が別の場所からも出てくる、といった現象は度々遭遇した。手近な所に入れることを繰り返した結果、物が点在するようになったようだ。個人的に、本棚がそれに近い状態にあり、他人事ではない。

 私の場合、本は捨てたくない。でも、本棚に入らなくなったら、何か考えないといけないのも事実だ。シンガポールに戻ったら、本棚の整理をしようと思う。しかし、その一方で新型コロナウイルスの流行で帰れなかった分、日本に居る間に沢山本を買い込みたい自分もいる。買ってしまえば本棚から溢れるのは明白である以上、買い足すのは厳しいが、買わずにいられないのも事実だ。両方の間で、悩み続けている。
 
 

6月19 日(日) 日本への一時帰国11日目


 大好きな刑事ドラマ「MIU404」の展示会があり、遊びに行ってきた。放映から既に2年が経過しているにもかかわらず、今でもなおイベントがあることから、改めて人気作であることを実感する。展示の目玉は作中に登場したメロンパン号と呼ばれる車だ。ただ、作品の中でメロンパンを販売する描写はないためか、会場の手前にも「メロンパンの販売は行っておりません」との文言が書いてあった。会場には多くの人が遊びに来ており、自分と同じように作品が好きな人が沢山いると嬉しくなる。

 今回の帰国を決めた時点で、イベントが実施されることは知らなかった。日程を決めてから予定を当てはめていく内に、丁度遊びに行けると気づいたのだ。個人的に「MIU404」が好きになったのは、既に放映が終了してからだったため、ドラマを楽しみながらもブームに乗り遅れてしまったと思っていた。時流に乗ることが重要だと考えてはいないものの、タイミングを逸すると楽しめたはずのイベントを逃す結果になる。それだけに、展示会に行けるのは本当に嬉しい。

 撮影に使用された小道具や台本も一緒に展示されており、ドラマではチラリとしか映っていなかった物をじっくりと眺めることができた。会場で知り合った他のファンと一緒に盛り上がることもできて、本当に遊びに来られて良かったと実感できた。新型コロナウイルスが流行してもインターネット上等で、誰かと繋がることはできる。ただ、実際に会うのは違う喜びがあると感じた。
 
 

6月20日(月) 日本への一時帰国12日目


 昨晩、四川料理を食べた。日本に帰国している間に中華料理を食べるのは、本当に久しぶりだ。シンガポールは華人が多いこともあり、中華料理店が多いため、帰国中に食べようと思うことは滅多にないのだ。ただ、中華料理店の方と先日偶然知り合い、ぜひ一度食べてみたかったので、足を運んだ。麻婆豆腐やエビチリ等を注文してみたところ、どの料理も美味しい。デザートの杏仁豆腐も、濃厚でもっちりした食感を堪能できた。結果的に注文し過ぎてしまったが、行って本当に良かった。加えて、四川料理を食べていると、何だかほっとした。

 シンガポールは華人が多いためか、中華料理店が結構ある。いつの頃からか日本への帰国の前後には、行きつけの中華料理店に行くのが習慣となっている。その影響か、四川料理を食べたときに同じような気持ちになったのだ。丁度、海外旅行から帰ってきたときに、味噌汁と白米のシンプルな和食を食べた際に抱く感情に似ている。

 中華料理を食べて、心がほっとするようになる日が来るとは思わなかった。何年日本を離れていても祖国は日本であり、郷愁を誘うのは和食しかないと思っていたからだ。ちょっと驚いてはいるが、自分が根を下ろしている場所が増えているということにしておきたい。
 
 

6月21日(火) 日本への一時帰国13日目


 先日、名探偵コナンの映画「ハロウィンの花嫁」を観た。元々は日本での上映スケジュールが分からないため、シンガポールで鑑賞してから帰国するつもりだった。しかし、帰る準備が想像以上に慌ただしくて、結局観るタイミングがないまま日本に到着。もう今年の映画は観られないだろうとかなり諦めていたものの、一応行きやすい劇場をチェックしたところ、なんとまだ上映している。慌てて、映画を観に行くことにした。

 私の中で名探偵コナンの映画鑑賞は、毎年の恒例行事となっている。観に行かないと、何となく落ち着かないのだ。新型コロナウイルスが流行になる前からなので、最早習慣と言えるだろう。ただ、個人的には過去の作品の方が好きだと思うことも多く、今年もきっとそうだろうとある意味で期待はしていなかった。予想は大幅に外れた。滅茶苦茶面白かった。

 新型コロナウイルスが流行する前、シンガポールが名探偵コナンの映画の舞台に選ばれたことがある。自分が暮らしている所が選ばれたことは嬉しかったし、画面も日本の風景とは違うためインパクトはあった。今年の映画にはそういった非日常感は少ないが、その分現実と地続きのような印象を覚える。新型コロナウイルスが流行で遠くに行きづらくなり、身近と思える内容の方が好まれる傾向にあるのかもしれないと思った。

 

6月22日(水) 日本への一時帰国14日目


 日本ハムのシャウエッセンが、大好きだ。日本に一時帰国すると、色々な料理が食べたくなる。その多くは料理店で食べられるものだが、ソーセージだけは別だ。実家の近所のスーパーで買って、ピーマンと一緒に炒めて食べるのが特にいい。多分、一時帰国する度に必ず食べている料理の1つだ。

 スーパーに入ると、店内放送が流れてきた。シンガポールのスーパーでも流れているが、DJが独りで話すラジオ風になっており、日本の「いらっしゃいませ!!」という呼び込みのようなスタイルとは違っている。普段からシンガポールの店内放送をしっかり聞いている訳ではないものの、声のトーンから日本のそれと違っているのは明白だ。そのためか、久々に聴く放送はかなり新鮮に聞こえた。

 新型コロナウイルスの流行で、日本の様々なものから遠ざかっていた。日本にしろシンガポールにしろ、スーパーの店内放送に今まで注意を払ったことはなかったが、今回は期間が空き過ぎたせいか、違いを実感する。日本での滞在も、後1週間程度になってきた。いつもであれば、そろそろ日本に馴染んでくる頃だが、今回はいつもよりも違和感が付きまとっている気がしてならない。期間を延ばしたり、今年再度帰国したりできたら、今抱いているズレも消えていくのだろうか。
 
 

6月23日(木) 日本への一時帰国15日目


 日本の店員さんは、どこも優しいことを今回の帰国で実感している。シンガポールの店員さんが冷たい訳ではないが、丁寧な人ばかりではないのも事実だ。来星したばかりの頃は、日本では見ないような反応に戸惑っていたものの、今では比較的慣れた。それと同時に、日本の店員さんの対応に、不安を覚えるようになった。

 シンガポールの場合、無理をして客に優しくする人は少ないような気がする。閉店時間の10分前には店に入れてくれない所も多いし、店員に品物の質問をしても割と「知らない」との返答をもらうのだ。客としては困るが、店員の立場としては楽なのではないかと思う。

 日本で、接客業をしていたことがある。私の適性の問題だと思うが、内心苛立つことも多かった。気持ちを押し殺して丁寧に対応しようとすると、どうしてもしんどい。自分の生命維持に必要な量の水を減らして、他人に分け与えている感じだった。その経験があるためか、丁寧に接客する人を見ても「本当はどう思っているのだろう。ひょっとして無理をして私に優しくしてくださっているのではないか」と、心の内が気になるのだ。偏見だが、シンガポールの店員さんの多くは、無理をしていないと想像する。

 客として、日本の接客を受けるのは好きだ。ただ、どうしても心配になるのも事実だ。
 
 

6月24日(金) 日本への一時帰国16日目


 一時帰国の楽しみとして、日本での買い物がある。以前に比べて、シンガポールで買える物も増えてきたが、やはり日本でしか買えない商品も存在する。生活必需品もあれば、書籍や紅茶のような趣味の範疇で買いたい商品もある。

 アクセサリーショップでピアスを見ていると、店員さんに話しかけられた。最初は商品の質問だったが、気づけば私が一時帰国中であることも話していた。流石聞き上手だなあと思いながら話をしていると、店員さんが「お友達にも会えますね」と微笑まれた。曖昧に返事したものの、実は誰とも会う約束をしていない。

 断っておくと、友人が誰もいないという話ではない。ただ、小さな子どもが居る人や遠方の人が多いため、相手も自分も感染リスクを高めてしまうと思った結果、連絡ができなかったのだ。平時であれば、忙しそうな相手でもメッセージを送って会えないか尋ねていたと思う。新型コロナウイルスの流行がもう少し下火になるまで、会うのはお預けだろう。

 良くも悪くも、ここ数年の状況に慣れてきたものの、感染リスクや重症化リスクが下がった訳ではない。次に帰国する頃には、気兼ねすることなく、もう少し人に連絡を取りやすい状況になっているのだろうか。
 
 

6月25日(土) 日本への一時帰国17日目


 新しく作った眼鏡をかけ状態でうたた寝をしてしまったせいか、フレームが歪んでしまった。鏡を見ながら何度か動かしてみたが、どうも右側が上に上がっている。家族に話してみると「そういえばそうだね」とのこと。私の顔を四六時中見ているのに、気付かなかったらしい。結局、眼鏡は再び店に持っていって相談することにしたが、人の顔は家族ですら存外見ていないものだなと感じた。

 新型コロナウイルスが流行してからマスクを着用しているため、知り合いですらよく分からないことも多いと思っていたが、それとは関係なくあまり見ていないようだ。確かに、よく「人は自分のことをそれほど見ていない」といった言い回しはよく耳にする。今までは、にわかに信じられないと思っていたものの、本当のことのようだ。言われてみれば、私自身も他人の顔をしっかりと見ているとは言えない。情けない話、相手が誰だったのか思い出せなくて曖昧に笑って誤魔化すこともある。

 ここ数年、新型コロナウイルスの流行を他人の顔が分からない言い訳にしていた。しかし、マスクが取れたときに、きちんと反応できるようにしておかないといけないなと思う。他人のことをよく見ている人が、羨ましい限りだ。
 
 

6月26日(日) 日本への一時帰国18日目


 一時帰国して思うのは、日本の空は広いということだ。ただ単に実家が位置する場所が田舎なのかもしれないが、シンガポールで見る空よりも広くて高い。手が届かない所に雲がある、と当然のことを実感するのだ。今まで何度も帰国してきたが、空に注意を払ったことはなかった。

 当たり前のことながら、植物の青さも違うなと感じる。じっとりと雨が降る時期だからか、緑が濃いように思う。上手く言えないが、空に向かって生える木々の葉も、緑は緑でも色合いが異なっている。植物の種類にもよるとは思うものの、何となく日本の方が若そうな黄味を帯びている印象だ。夏に向かって、どんどん葉の色は深い色になっていくのだろう。

 シンガポールは乾季と雨季しかなく、基本的にずっと同じ気温であることもあり、通年を通して同じ草木を見る。いつでも同じ花が眺められるのは、ある意味安心感があるものの、違う花を見たいという気持ちもある。近所を歩くだけで、四季を感じられる日本は少し羨ましい。

 一方で、毎日気温のチェックをしなくても、服を選べる点は、シンガポールが好きだ。四季がないからこその利点で、いつでも暑すぎることも寒すぎることもない。後は、四季がないからこそ、葉の色の違いを気づけるというのも、良い点なのかもしれない。
 
 

6月27日(月) 日本への一時帰国19日目


 多分今回の一時帰国で、はじめて晩御飯を作った。実家に来てから外食やデリバリーを多用していることもあり、御飯を調理するのにしても手軽な物が多かった。ただ、冷蔵庫の中を見ていると、日頃料理しているお陰か自然と頭の中で献立が組み上がってくる。結局、色々な野菜を使って麻婆茄子や煮びたし、浅漬けといった物を作った。作りたいメニューを決めて食材を選んでいないこともあり、少しまとまりのないラインナップにはなった気もするが、家族が喜んでくれたので良しとする。

 2年半ぶりの帰国で、祖父母の様子を含めて色々なことが実家でも変化していた。新型コロナウイルスの流行がある以上、高齢者を感染リスクに晒したくないという思いがあったからだが、かなりの月日が空いてしまったという感想も私の中にはある。本来ならもう少し頻度が上げられていたはずなのに、という気持ちと未だ折り合いが付かない部分もあるものの、帰国できない内に料理スキルが上がった点だけは、良かったことのようだ。

 シンガポールで普段の生活を送っているときも同じが、作った料理を喜ばれると嬉しい。特にレシピを聞かれると、更に気分が上がる。再び日本を離れるまで数日だが、今回の滞在中にまた料理できたらなと思っている。
 
 

6月28日(火) 日本への一時帰国20日目


 例年と比べて、かなり早く梅雨が明けたらしい。ここ数年、シンガポールに居たこともあり、あまり異常性が分かっていないが、ニュースを見ているとかなり異例と報道されていた。何度か既にnoteにも書いているように、日本の夏はシンガポールよりも圧倒的に暑い。その意味で、帰国直前に梅雨が明けて本格的な夏になったのは幸いだったかもしれない。個人的に、今日の気温は特に暑いと思わなかったが、きっとここからぐんぐん気温が上がっていくのだろう。

 夏と言えば、今までは日本の衣類が買えるのが利点だった。過去形なのは、何年か帰国しない内にファッショントレンドに取り残されてしまったらしいからだ。結局、帰国間際の今でも琴線に触れる服には逢えていない。シンガポールの服装の方が好きという訳ではないのだが、新型コロナウイルスの流行で家に居る時間が伸びたせいか、外着への興味が薄らいでしまったことも一因のようだ。

 今回の帰国は、免許の更新や病院巡りなど明確な目的があってのことだったが、最後まで日本と自分の間に壁があるように感じてならないままだった。知らず知らずのうちにシンガポールに馴染んでいることを喜べば良いのかもしれないものの、祖国に対して違和感を覚えたままの滞在になったのは少し残念だ。
 
 

6月29日(水) 日本への一時帰国21日目


 明朝の飛行機に乗ると言うのに、なかなか荷造りが終わらない。片付かないことは目に見えていたため、今日1日は外出しないつもりだった。しかし、そう上手くはいかず、ずれ込んだ予定を消化しようと、夕方まで出掛けていた。その結果、深夜を回っているにもかかわらず、終わりが遠くに見えるのだ。

 幸いにして、シンガポールをたつ前に色々と計画していた内容は、ほとんど終えることができたものの、結構慌ただしかった。最初に計画を立てた時は余裕を持った行動ができると思っていただけに少し驚いてはいるが、長めの滞在を予定しておいて本当に良かった。

 今回の帰国で何より良かったのは、祖父母の顔を見られたことだろう。電話やメールで互いの状態はある程度知っているつもりではいても、実際に顔を突き合わせてみると想像と異なっている部分は多かった。百聞は一見に如かずという言葉の意味が、身に染みたような気がする。

 最近、シンガポールでの新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加傾向に転じているらしい。最近は色々な規制が緩和されていることも、感染が広がりやすくなっている一因なのかもしれない。次回の帰国は、今回のように2年半も間が空くようなことにしたくはないが、感染症の流行度合に左右されそうだ。
 
 

6月30日(木) 日本への一時帰国22日目 


 シンガポールに帰ってきた。日本への入国とは異なり、何の準備も要らないと思っていたら、ウェブ上で健康状態の提出が必要だったらしい。入国審査の前に設けられたブースに行き、慌ててオンラインで記入した。ちなみに、どこの国から入るかにかかわらず、シンガポールに入国したい人は国民であっても、申請が必要とのことだ。私は自分のスマートフォンを使ったが、当地のインターネットが使えるデバイスを持っていない人でも問題がないよう、ブースには複数のタブレット端末も設置されていた。

 行きの飛行機が深夜便だったためか、海外への往来は以前より少ない印象だったが、今日の空港は結構な賑わいをみせていた。地元の学校やインターナショナルスクールが夏休みに入ったのも、人が多い理由の1つかもしれない。ただ、空港全体としては便数が少ないのか、以前と入国審査までの動線が変更されていた。お陰でいつも以上に免税店を見ながら空港内を歩くことができたが、あまりに遠いので途中で迷子になったのかもと不安になったのも事実だ。

 荷物を一旦自宅に下ろしてから、近所の中華料理店に行く。日本から戻ったときは必ず訪れる店で、料理を食べるとシンガポールに帰ってきた実感が徐々に沸いてきた。忙しかったからかもしれないが、今回の滞在はいつも以上にあっという間に感じられた。次に帰るときは、もう少しゆったりと過ごしたいものだ。
―――――
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?