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全米トランス•ライツ•アクション•デイの発起人、つくる・フォルスさん紹介

今回、明日少女隊が一緒にイベントの企画&運営をする、つくるフォルスさんに、自己紹介を寄稿していただきました。


皆さん、こんにちは。つくる・フォルスです。

今回、トランスの当事者として、トランス・ライツ(トランスの権利)をテーマとしたアート・プロジェクトで、明日少女隊の皆さんとコラボさせていただくことになりました。

その背景には、僕がアメリカで「トランス一年生」として、トランス/ノンバイナリーのコミュニティが抱える様々な痛みや困難を目の当たりにする中で、トランスの人権をめぐるあらゆる論争はまさしく「グローバル」だと感じるに至ったこと、そして、日本のトランスの事情についてもっと学びたい、日本のトランス当事者の方々やアライであるフェミニストの方々と情報交換、交流したいと強く願うようになったということがあります。

僕は19歳の時に大学進学のためにアメリカに渡り、以来、32年間ずっとアメリカに住んでいます。ビザの事情もあり大学卒業後わりとすぐに男性と結婚し、子供も産みましたが、結婚して4年後にレズビアンとしてカミングアウトしたのと同時に離婚し、ロサンゼルスにあるコンサルティングの会社でリサーチャーとして働きながらシングルペアレントとして子育てに没頭していました。

「ノンバイナリー」としてカミングアウトしたのは44、45歳の頃です。きっかけはジェンダー・アイデンティティをめぐっての子供との対話でした。実は僕の子供もノンバイナリー自認ですが、子供との対話を通して、「ノンバイナリー」とはどういうことか、を勉強し、探求していくうちに、僕の中でそれまで封印されていた扉が開くかのように、自分の存在が生まれてはじめて「意味をなした」と実感する瞬間があったのです。

言い方を変えれば、「パズルのピースがしかるべきところに収まった」感覚でした。それ以来、生まれた時に親から授かった「女性名」と決別し、それまで筆名として使っていた「つくる・フォルス」として生活しています。銀行口座も「つくる・フォルス」で持っていますし、現在の友人知人で僕の過去の名前を知る人はほとんどひとりもいません。

ここで、「ノンバイナリー」とはなにか、ということについて僕自身の言葉でもっと説明させてください。「ノン・バイナリー」、つまり、「男」「女」という「バイナリー(二元論)」の中にあてはまらない、自分の性別を「男」「女」という一直線上の世界観の中では定義しない・できない人たちを指します。もっと厳密にいえば、僕の場合は、「Aジェンダー(性別がない人)」が一番しっくりくる定義です。男でも女でもなく、「自分は自分」という存在。

ならなぜ一人称が「僕」なのか、そんなツッコミが聞こえてきそうですが、物心ついて以来、自分の中ではずっと自分のことをそう呼んできたから、それが自分にとって一番自然だから、というほか説明のしようがありません。僕は、ジェンダーとはそれくらい「自由な」ものであっていいのではないかと思っています。

「ノンバイナリー」として生きるうえでの一番のハードルは職場でした。僕の職場は「アメリカの会社」とはいえ、社長が日本人男性、社員のほとんどが日本人、クライアントがすべて日本の企業さんという特殊な会社でした。僕はその会社に21年働いて、それでも公には「コンサルタント」には昇格させてもらえなかったのです。

「君が男だったら立派なコンサルタントになっただろうな」と上司(会社の社長)に言われたことがあります。「自分的にはかまわないんだけれども、クライアントである中小企業の経営者たちは保守的だから認めてもらえないだろう」というニュアンスでした。そんな職場でしたから、「ノンバイナリー」や「トランス」としてカミングアウトなど論外でした。

2021年の2月にたまたま会社が廃業になり、職を失ったことが、奇しくも僕にホルモン治療を始める勇気をくれました。50歳の時です。「いい歳をして」というささやきが自分の中になかったわけではありませんが、「ほんとうの自分」として余生を生き、そして死にたい、という強い気持ちからテストステロン(男性ホルモン)治療に踏み切りました。

「性別移行」の中で最も感慨深かったのは「声変わり」です。英語で「自分の声を見つける(Find your own voice)」は思想や意見において自分の軸を確立することを指しますが、文字通りそんな感じでした。職業柄、以前から人前で話す機会も多く、「シャイ」ではなかった僕でしたが、常に「役割を演じている」という感覚がありました。いつも人と自分の間には壁があって、誰もほんとうの僕を知らない。そんな孤独感や、「自分は皆を欺いている」という罪悪感は、多くのトランス、ノンバイナリーの人たちが抱えて生きている共通の思いではないかなと思います。

現在は、トランス/ノンバイナリーの人たちが、「自分の声でありのままのストーリーを語る」機会を提供することをミッションとしたメディア・ネットワーク、トランス・ラディカル・アクティビスト・ネットワーク(TRAN)の共同創設者として活動しています。


私たちは、学生やアーティスト、学者の卵、主婦、非正規社員、正規社員など、様々な立場の女性が中心に集まったグループで、みなさんの寄付を頼りに助け合いながら活動しています。 今後も活動を続けるために、よろしければサポートをお願いします!(*^_^*)