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夜間外出禁止令の延長線上の毒入りスープ

「夜間外出禁止令で同居人との距離感が崩れないか」
このことを以前書いたけれど、その距離感が崩れたときに何が起こるか。僕は場合によっては、同居人に毒を盛られるかもしれないと思っている。

夜間外出禁止令が延長された今、同居人と一緒にいる時間がさらに長くなり、相手の嫌な部分がどんどん見えてきて、激しくぶつかりあってしまったら。

口論だけで済めばいいけれど、もし相手を憎む気持ちが増長してしたら、それ以上の事態に発展するかもしれない。

僕はバンコクに住んでいた時、台湾人の友人と同居していた。その友人と口論になったことがあって、その後彼に対して不信感を抱いていた時期があった。

そんなある日、彼が台湾料理のスープを作って、僕に出してくれた。おそらく香菇鷄湯というスープで、しいたけと鶏肉の香りに食欲がそそった。

そのときの僕は、そのスープに対して何も疑いを持たず、彼なりの和解の印のように捉え、ありがたく食べたのだけれど、次の日、激しい腹痛に襲われた。

僕はその時、腹痛の原因が彼が作ってくれたスープにあるのではないかと疑った。あのスープに毒が入っていたのではないかと…。

普通なら毒が入っているなんて考えるはずがないのに、考えてしまっている心理状態とは?口論をした直後で、まだお互いが憎しみ合い、許し合えていないのだと思い込んでいたのだと思う。

今となっては、少しでもこんな考えに及んだことに申し訳なさを感じる。

やはりいくら仲の良い間柄であっても、近づきすぎるのはよくないし、例え近づきすぎたとしても、疑っていい理由にはならない。

もし夜間外出禁止令が出ている今、まだ同居していたらどうなっていたのだろうと考える。

彼が部屋中に漂わせるアロマキャンドルの匂いを嗅ぐ時間がもっと増えて、ベランダの窓を開けたまま、吸うたばこの煙を浴びる量も増えて。

汗ばむほどの熱帯夜でも、リビングのエアコンをつけたがらないことに腹を立てながらも、夜風を涼しいと思い込もうとして。同居とは思いやりの連続だなあと思いながら。

複雑な思いの絡み合う真夏のバンコクのお家時間を過ごしていたに違いない。

時間がたって、あのスープに入っていたのが毒であっても毒でなくても、今はもうどちらでもいい。毒のことよりも、もっと大事なことを教えてもらえたと思っている。

2020年5月14日

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