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親愛なる生理様②

 みなさんは「出血の止まらない女」をご存知でしょうか。新約聖書マルコによる福音書にでてくる、12年間も出血、つまり生理が止まらない女性のお話です。

宗教において、血や生理は穢れを意味します。彼女は周囲の人に穢れた女であるとされて12年もの間、誰にも触れてもらえずに過ごしてきました。しかし、彼女はイエスキリストが触れることで出血が止まり、元気に暮らします。

そんな、生理が止まらない、何てことがあるものなのでしょうか。

個人差はあれど、生理は月に一度の頻度できて、およそ一週間ほどで終わると言われています。小学生の保健体育の教科書には「初経後の数年間はホルモンバランスが不安定なため、不規則になることが多い」とありました。

その「数年間」とは具体的に何年くらいのことなのでしょうか。閉経を50歳前後と考えると、10歳で初潮を迎えた私の場合は40年間生理が来続けるとして、そのうちの初めの数年間とは…

私がこんなことを考えるようになった理由。それは、ある時から私の生理が不規則を極めたからでした。


女ばかりの世界

 姉についていくように、私は中高一貫の女子校に入学。キリスト教に出会い、学校でも特別に純粋で世間知らずなお嬢さまが多いクラスに入ってしまいました。

初潮を迎えていない子が当たり前にいるクラスの中で、初潮を迎えてからすでに2年が経っていた私は、生理がきてる・きてない、生理がくるかもしれない、とキャッキャとはしゃぐクラスメイトとのギャップを感じざるを得ませんでした。

また、女子校ならではの先輩達のオープン過ぎる生理の話や、古い会議室の椅子に染みた血液、合同のプールの授業でダルそうに見学している先輩を目の当たりにし、私の生理に対する嫌悪感は増すばかり。

さらに、私は生理中の方が発する独特な香りに敏感になってしまい「あ、この人、生理中だ」とすぐに察知できるようになってしまいました。(気にしている方には本当に申し訳ないです。)

「自分もこういう匂いを発しているのかな…」と思うと怖くて、制汗剤をつけたり工夫をして、とにかく自分が生理中であること隠すようになりました。

このように、中学生の私にとって生理というのは隠すべきもの、恥ずかしいもの、不潔なものでしかなく、生理の話をオープンにする人はだらしない、品がないと人だと思うようになりました。 

 そういえば、なんか生理長くない?

 そんな生理が嫌いで仕方のない中学一年の私でしたが、気づいた時には生理が来て一月以上が経過していました。つまり、出血がいつになっても止まらないのです。

生理が嫌いなあまり、生理中は心ここに在らずな私でした。勉強や部活に集中し、生理について考えないことに一生懸命になっていたため、出血して一月以上経っていたことに気がつかなかったのです。

かと言って、他者との会話で生理や身体について話題にすることは最も避けたいことだったので、生理が終わらないなんてことを誰かに相談することはありませんでした。

「初経後の数年間は不規則」という言葉を信じて、そのうち止まるだろうとあまり重く捉えないようにしていました。

そんな私の母は時々、私と姉に「ちゃんときてる?大丈夫?」と聞いてくることがありました。もちろん私は当たり前のように「大丈夫」と伝えていました。私にとっては生理が話題は1秒でも速く終わらせたいものだったのです。

しかし、とうとう生理がき続けて半年が経ち、流石にまずいと思った私は開き直って「なんかぜーんぜん生理が終わらないんだよねーまじストレス〜」と、母と姉に伝えたのでした。

そして中学2年の5月の暑い日、私は夏服のセーラー服を着て、学校の近くにある産婦人科を母と訪ねました。


いつからですか?
- 気付いたらずっと続いていました。多分、中学一年の冬くらいですかね。

おなかはいたいですか?
- 痛みは特にありません。基本的に生理痛はほとんどありません。

量はどれくらいですか?
- 普通から少ないくらいの量が繰り返し出ています。


私はお医者さんに幾つか質問されてから、内診台に座り、初めて人に触られ、おなかにエコーをあてられ、血液検査をして、基礎体温表をもらい、検査室を出ました。

お腹の大きな女性や、ヤンキー風の若い女性がいる待合室で待つ母は、私が見たことないような微妙な顔をしていました。私は会計をする母より一足先に外に出て、今まで起きたことを冷静になって振り返っていました。

それからというもの、処方された薬を飲んだり、大きな病院にも行ったりしましたが、生理は止まらず。生活に支障のない程度の量の血が毎日出続け、翌年、中学3年の8月にやっとそれが終わりました。

つまり私は、中1の冬から中3の夏まで出血の止まらない女でした。

生理の話はタブーと思っていた故に、どんなに親しい友人にさへ、このことを言えたのは中学卒業の数日前。友人は驚いていましたが「大変だったね。辛かったよね。よく頑張ったね。」と声をかけてくれました。

出血が止まらないのも慣れてしまえばどうってことない。別に悩み苦しんだわけでもない。と思い込んでいた私でしたが、彼女の言葉には心から救われたのでした。


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