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前日譚③:『移動本屋WSに滑り込んだはなし』 ー脱ぎたての靴下はまだ温かいー

前回までのあらすじ

このnoteでは、移動本屋の開業前日譚として…

『前日譚①:ニート同然だった僕の生活のはなし』では、時間があり余りすぎて、ほぼニート予備軍だった僕の日々の生活について。
『前日譚②:移動本屋と出会った運命のはなし』では、そんな僕が偶然にも移動本屋と出会った運命(のような思い込み)について。

それぞれの記事で描いていますので、ぜひ読んでみて下さい👇


そして本記事『前日譚③:移動本屋WSに滑り込んだはなし』では、移動本屋を開業したい人向けのWSに参加した経緯と講義で考えたことについて👇


移動本屋WSの主催社に懇願のメールを送る

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移動本屋を開業したい人向けに初めて開催されるという『移動本屋ワークショップ』。

この千載一遇の巡り合わせを、僕は一ヶ月もの間スルーしていたことになる。まずはそのことに絶句した。そして、この時すでにオンライン講義の第一回目が終わっているという事実に2回目の絶句。そこへ追い討ちを描けるように僕はあることを思い出す。なんとめでたいことにワークショップの存在を知った時点で、僕は仲の良い友達などに「面白いことを始めちゃうかも…」と匂わせを働いていたのだった。過去の己に3度目の絶句である。

しかし。一度「運命」だと思い込んでしまった手前、易々と後に引くわけにはいかない。かわいいが作れるように、運命だって作れるのである。

僕は「恥」という概念を一旦捨てて、WS主催のSPBS(SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS)社にメールをした。なんとしてでも〆切を過ぎたワークショップに潜り込みたかった。いや、潜り込むのである。

その決意を胸にSPBS社に送った実際のメール文面がこちら。

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我ながら、〆切を過ぎていたというズボラな印象を補って余りある好感度の高い文章。

僕は返信のメールを待った。

いつの時代も返信を待つ時間は焦ったいもので、新着メールをセンターに問い合わせてはガッカリした高校生のガラケー青春時代を懐古する。なかなか返信が来なくたって、待ち焦がれている時はいつでも自分の都合の良い方に考えようとするから不思議なものである。

「今日は平日だけど、きっと営業日じゃないんだ。創立記念日とかなんだよね」
「ちょうど担当者が一身上の都合で辞めたとかで、引き継ぎの人がごたごたしているんだよね」
「返信が来ないってことは、了解ってことでいいんだよね」

そうやってポジティブに考えては、やはり無謀なお願いだったのではないかとネガに引き戻されてを繰り返すこと3日。

返事が返ってきた!
(特例で)第1回講義のアーカイブ視聴と、第2回講義からの参加が可能になりました、との旨。
※どうやら僕のメールサーバー設定の問題でメールが止まっていたようで(苦笑)

歓喜の涙…! を流すほどではない仄かな喜びがじわじわと沸き上がってきた。やはり運命は作れるのである。

かくして僕は遅れること1ヶ月、移動本屋ワークショップに参加できることになったのだ。


参加の許可が降りたWSで感じたこと

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移動本屋のワークショップは、開業したい人向けのHOWTO講座とあって、内容が具体的でかなり充実していた。

WS講師は、現在も移動本屋として活動中の三田修平さん(BOOK TRUCK)。2012年から移動本屋を開業しており、移動本屋の先駆者的存在である。

この三田さんと主催SPBSのスタッフの方々の中に、各講義のテーマごとに専門的な知識を持つゲストを1名迎えて、セッションしながら進めていくという「おしゃれイズム」スタイルで講義が行われていった。

講義は全てオンラインであり、参加者は25名ほどであった。

講義の大まかな内容は以下
・移動本屋の基礎知識/リアルな実態
・車の選び方
・本の仕入れ方
・出店場所の探し方
・出店を想定したプレゼン

当然、新しい事業を始めるということは大変なことである。しかし実際に移動本屋として活動されている方の経験を踏まえた体系的な講義は、非常に分かりやすく役に立つことばかりだった。移動本屋を始めるにあたって何からどう取り組むべきか、ということを手取り足取り教えてもらえた。もしこのワークショップを知らなかったら、移動本屋の開業にまつわる全てのことをゼロから考えなくてはならなかったのだと思うと、改めて僕はこのワークショップに滑り込み参加ができてよかったと思う。やはり何をするにしても「情報」を知っているかどうかは、そのクオリティーや時間に絶大な影響を及ぼすのだ…。

一方で僕は講義を受けて始めて「絶望」(?)したこともあった。
それは「移動本屋で儲けを出すことは、まじでムズい」という現実に対してである。

例えば、車の維持費(駐車場代や車検費用)や出店場所へ行くための交通費などを「純粋な本の売上」だけで越えようとするならば、超ざっくり計算で1日50冊ほど売らなくてはいけないことになる。
※原価率7割の新刊本で想定した計算だが、本当にざっくりなので詳しくは聞かないでいただきたい。

出店する場所の人の多さや属性にもよるとは思うが、なかなか本50冊を1日で売るのは至難の業に思える…。このnoteで本音を正直に言っていいか分からないが、「迷った時はより困難な道を選べ」という受け売りのポリシーに則り、僕の本音を言うとすると「そんなに本買う人いるか?」である。もちろん、古本市など本限定の出店場所の場合は多分いるのだが、本だけを目的にしていない一般のお客さんに本を売るのはそう簡単なことではないということも、このワークショップを通じて分かってしまった。

つまり普通に移動本屋をやるだけならば、前提として赤字を覚悟しなくてはならない。前途多難である。それでもやりたいと思えたのは、それ以上に移動本屋を営むことの楽しさもたくさん教えてもらったからであり。そのことについてはまた、開業後の実感を踏まえて語りたいと思う。

かくして僕は移動本屋の開業ワークショップにギリギリアウトで滑り込み、HOWTOを教わりながら更に移動本屋への想いを膨らませるに至ったのだった。


WSの熱が冷めないうちに

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全5回の講義はあっという間に終わってしまった。

このご時世(2021年3月)全講義がオンライン開催だったこともあり、本来であればそのまま飲みに行く流れになったであろう参加者の方々とも、ZOOMの小窓越しに数回顔を合わせる程度となった。ぜひ無事に開業できた暁には皆さんにご来店していただき直接お話したい。移動本屋で僕と握手! これを言いたかっただけである。(でも本当に来てください…!)

脱ぎたての靴下がすぐ冷たくなってしまうように、熱を持っていた移動本屋への想いも、講義が終わってしばらく経てば簡単に冷めてしまう。想いの大小に関わらず、時間が経てば薄れゆくのが世の常である。

けれど僕は、せっかく滑り込んだワークショップの熱を易々と冷ますわけにはいかない。それでは僕の図々しい我儘を呑んでくれたSPBSの方々、そして講師の三田さんに申し訳が立たないし、何より久しぶりにワクワクしている自分が好きだった。このままワクワクしている自分のままでいたいと心から思った。

だから僕は、講義が終わったその足で自動車教習所へ向かった。そう、僕はペラッペラのペーパードライバーなのだ。移動本屋を営むと決めたならば、それは同時に運転をするという覚悟を決めることだった。車を選ぶのには少し時間がかかる。だったらまずは教習所だ!こうして僕の脱ペーパードライバー修行が始まった。


…と前日譚はここまでである。

これ以降は現在進行形の話としてnoteでエッセイとして更新する他、InstagramとTwitterでリアルタイムの開業情報を更新していきたいと思う。ぜひフォローして頂きたい。

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