ノンフィクション連続小説第②話 『妖怪の棲む家』
「さぁ、行くわよ。靴を履いてね。」
母と二人で毎日行く旧家。ここには父方の祖父母が二人で住んでいる。
ここに来ると母は、晩ご飯を作り置きし、ほうきで玄関先を掃いたり、庭の手入れなどを行う。
私は一人で家の中をぶらぶらしている。
異様な空気を感じて落ち着かない。
見られているような気がする。何者かがいるような気配がする。ここで見る祖父母は、顔が歪み奇妙な声でお化けのように見える。
「テレビでも見ておいて。」
母にそう言われて一人で2階の和室でテレビを見ている。「時をかける少女」「転生」など、今でいうスピリチュアル系のドラマだ。ここで見ると無性に怖い。肩を上げて緊張しながらテレビを見る。
昼の2時なのに、晴れているのに、なんでこんなに部屋は薄暗いのだろう。
周りを見渡してみる。ダーツの矢が2本落ちている。そっと拾うと重たくて本物の針だ。よく見ると障子がところどころ破れている。どこに投げているんだよ。祖父の入れ歯がコップに入っている。骸骨みたいで恐ろしい。祖母の仁丹が箱ごと無造作に置いてある。それから、動物の剥製、剥製、剥製。誰の趣味なのか、高級感を出したいのか知らないけど、色んな奇妙な物が独特のオーラを放っていて趣味が悪すぎる家。
1階に降りて、ピアノを弾きはじめる。すぐ横の部屋は台所で母がいるけれど、ピアノを弾いていると誰かが近づいてきてたとしても音が聞こえない。誰かに、肩に手を置かれそうで数秒に1回振り返る私。ピアノができない。弾きたいのに。いい音色で調子が出てくると、それを後ろで誰かが聞いている気配を感じるのだ。
ここにいると体の毛が全部逆立つ。
ここでは、皆がイライラしているようだ。祖母のヒステリックな金切り声、祖父のそれをあざけるような薄ら笑いとゾンビ歩きと尿の匂いの混じった体臭。たまにやって来る親戚とのちぐはぐなやり取りで部屋の空気がまたおかしくなる。
なんて居心地が悪いのだろう。数時間の滞在なのだが、心労し帰宅する。
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第2話はここまで。次回も子ども時代の奇妙な体験を書いていきます。ぜひご期待ください☆
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