ノンフィクション連続小説第①話 『妖怪の棲む家』
「あなたの家には井戸があるんですか?」
「はい‥。古井戸がありまして、1995年にあった阪神大震災の時に地盤隆起して井戸が埋まりましたが。」
「その井戸は昔よく使っていたのですか?」
「そうだと思います。その昔、近所のお子さんや犬が落ちて亡くなったと聞いています。」
「近所のお子さんがですか‥。なかなか複雑ですね。」
「はい‥。この家は近所では浮いている、孤立した存在です。何もかもが他の家とはちがうので‥。」
「他に、変わったところはありますか?」
「家ですか?そうですね。子どもの頃、ものすごく怖かったです。」
「どんな風に?」
「ひゅううううううぅ。と音が聞こえるような悪寒を常に感じていました。昼間しか行ったことがなかったのですが、室温が外のようで寒く、窓は大きいのになぜか日が入りづらくて薄暗かったです。鹿の剥製と目が合って、そこらここらにヒグマや鳥などの剥製があってこちらを見られているようで落ち着きませんでした。時間になったら古時計の音が鳴って、背筋がぞくぞくするようなところでした。あ、旧家のことです。私が小学高学年の時に、旧家を立て壊して鉄筋4階建の今の家が建ちました。」
「旧家は、母屋と蔵があり、廊下を隔ててボットン便所がありました。庭には小さな滝と小川があり鯉が何匹も泳いでいました。周辺では人一倍大きな屋敷です。」
「実際に何かを見たとかはありましたか。」
「幽霊などを実際に見てはないのですが、異様な雰囲気が土地中を漂っていました。子ども心に、化け物屋敷だと思っていました。」
「でもそこに家を建て直して、住むことになったのですね。」
「はい。その時に住んでいた団地が老朽化が進んで取り壊されることになり、立ち退きを迫られたからです。」
「そこに住み始めてから、まるで呪いがかかったかのようにすべてがおかしくなりました。家庭崩壊、病気、陰鬱、などです。」
「詳しくお聞きしましょう。」
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第一話終わり。長編になる予定です。次回は、子ども時代にさかのぼっていきます。ご期待ください。
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