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中学生が挑む、本気のおもちゃづくり?!TOYエンジニアプロジェクト(中高生コース・探究ラボ)

こんにちは!今回note初登場の探究学習塾エイスクール(a.school)メンター、チャーリーです。今日は私が担当する、中高生コース「探究ラボ」クラスの様子を紹介します!

フィーチャーするのは、2020年10月〜12月で開講したTOYエンジニアプロジェクト。エイスクールでは「エレキエンジニア」や「メカエンジニア」といったプログラムに小学生から取り組みますが、中高生が挑戦するのはこの応用編。複数の技術を掛け合わせて、新しいおもちゃを生み出しました!

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はじめに:TOYエンジニアプロジェクトって何?

TOYエンジニアプロジェクトは、その名のとおり「おもちゃづくり」を行う授業です。といっても、中身はただの工作ではありません。既存のおもちゃを分析するところから始め、複雑なメカニズムを考えたり、電子工作を駆使して動きを工夫したりと、3か月間にわたって試行錯誤を繰り返しました。その結果生み出したおもちゃの数々は、高い技術と自由なアイデアを組み合わせたものばかり。

本記事では、前半の担当講師インタビューをとおしてプログラム設計・運営の意図を浮き彫りにしたのち、後半で生徒たちが実際に創り出した個性あふれる唯一無二のおもちゃを紹介します!

講師インタビュー① 電気とメカの両方を学ぶ、ハイレベルな授業とは?

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ほっしー(星功基):
学び表現作家/a.school研究開発者。慶應義塾大学環境情報学部卒業。佐藤雅彦研究室にて「ピタゴラスイッチ」(NHK Eテレ)や「日常にひそむ数理曲線」(ベネッセコーポレーションとの共同研究)などのプロジェクトに携わる。ベネッセコーポレーション進研ゼミ中学講座にて、12年間、理科や数学の教材編集、デジタル推進を担当。「学びは自分たちでつくる:Cスタ」など、学びと表現の間を探る活動・作品づくりを行う。「文字とことばのデザインユニット・二歩」として2冊の絵本を刊行。

チャーリー(濱祐輝):
東京大学教育学部。教育学部だけど実は理系出身。メカエンジニア編の教材設計に携わる。中学生の頃から電子工作を経験しており、工作全般が得意。好きな動物はひよこ。

チャーリー:3か月間の授業お疲れ様でした!早速ですが、TOYエンジニアプロジェクトって、そもそもどんな授業だったんでしょうか?

ほっしー:「電気をつかったオリジナルのおもちゃ」をつくることを目標に、120分×全12回の授業をとおして電気とメカ、両方の仕組みや実践的な活用方法を学んだプロジェクトです。

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プロジェクト前半(第1〜5回)はおもちゃの分析に始まり、エレキやメカの成り立ちを体感するワークショップを実施。物理的な動きを深く理解するための、知識や技術の習得(インプット)に焦点をあてたものです。

中盤でオリジナル・おもちゃの企画を練ったあとはひたすら試作を繰り返し、長い時間をかけて作品の完成度を高めていきました

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既存のおもちゃを四象限にわけて分析!

チャーリー:前半のワークショップでは、ミニ四駆を組み立てたり、ブレッドボードを使って回路を組み立てたりしましたね。

ちなみに僕のお気に入りは、ピタゴラ装置の動きの仕組みを分析するワークありふれた動きの中にも様々な機能が隠れていて、新しい発見でした。

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複雑な動きを可能にするメカの仕組み(一部)

ほっしー:インプット期間にたくさん手を動かしたことで、複雑な仕組みを深く理解できるようになったと思います。これが後半のおもちゃづくりにいきてきましたね。

講師インタビュー② 技術の掛け算がものづくり力をアップさせる

チャーリー:次に聞いてみたいのは、このプロジェクトで何を学んでもらいたかったのか、ということです。受講する中高生に向けて、どのようなメッセージを込めましたか?

ほっしー:このプログラムをつくるにあたって、狙い・願いとして考えていたことは主に2点です。

・電子とメカの技を組み合わせて、新しい動きを創り出すこと。
・「自分が面白いと思うことってなんだっけ?」という問いに向き合うこと

まずは1つ目について。エイスクールの小学生コースでは、エンジニア系の定番ワークショップがいくつかありますよね(メカエンジニア、エレキエンジニア、プログラマーなど)。

今回は中高生が対象ということであえてレベルアップを目指し、お題を「電気を使ったオリジナルの動くおもちゃ」づくりに設定したんです。電気(エレキ)とメカ、エンジニアの技を2つ掛け合わせることで、設計から製作までの難易度を高めたのですが、それは一重に「みんなのものづくり力を底上げしたい!」という想いからでした。

チャーリー:確かに。僕は小学生コースの「エレキエンジニア」も体験したことがあるのですが、これをメカと組み合わせることで桁違いに難しくなったなと感じています。

(参考)「エレキエンジニア」授業概要

ほっしー:そうなんですよね。一つひとつの仕組みや理論を理解しているのと、なにか実現したいイメージがある時に適切な仕組みを選び出しつなぎ合わせることができるのとでは、大きな隔たりがあるんです。後者の身のこなしを習得するには、何度も試行錯誤を重ねて体感覚を磨き理解を深める必要があるんですが、エンジニアにとってこの「Tinkering=いじくりまわしながら学ぶ経験」がすごく大事なんです。

講師インタビュー③ 自分の「らしさ」をこめた、開発者体験を

チャーリー:2つ目の狙い「『自分が面白いと思うことってなんだっけ?』という問いに向き合うこと」はなんで大切なんでしょうか?

ほっしー:ものづくり体験をとおして自分という個性を楽しんでほしいという願いがあったんですね。カードゲームにせよ絵本にせよ、なにかを生み出すエネルギー、つまりは開発者の原動力って自分自身の奥深くから湧き上がるものだからです。

そのためにもまずは、今までの人生でユーザーとして体験してきたおもちゃを、開発者目線で見つめなおしてもらいました。その過程で、「そもそも自分が面白いと思うことはなんだっけ?それはどうして?」と自分の好みや思考特性を俯瞰するいい機会になればなと。

チャーリー:確かに、3つの「プロの技」でも、自分の体験を通じて面白さを構想することを伝えていましたね!

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ほっしー:そうですね。あと、個性が現れるのは製作プロセスも同じで、生徒それぞれの開発体験を共有するのも大きな学びにつながりましたね。

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本物の開発者らしく、進捗を共有する中間発表会も行いました。

ほっしー:結果、技術の掛け算という複雑性に自分という個性を載せることで、電気とメカのバランスが様々に工夫されたおもちゃの数々が出来上がったと思います。

個性あふれる作品3つをご紹介!

ここまで、講師インタビューをとおしてプロジェクトの概要や狙いをお伝えしました。最後に、生徒たちが3か月かけて生み出した作品の一部を紹介します!

1)作品名:無題

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まず紹介するのは、「無題」と名付けられたこちらの作品。顔が付いたこの箱は、なんと倒れると悲鳴をあげるんです。裏側にあるのは傾きセンサーとブザーを組み合わせた回路。倒れることでスイッチが入り、音が鳴るようになっています。

また、蓋が外れることで表情が変化するギミックもついており、シンプルなアイデアながら、楽しい作品に仕上がっています。

2)作品名:ブルーライトスイッチ

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次の作品は、複数名対戦型の新感覚心理ゲームです。開発者曰く、将棋やオセロが好きな方にオススメとのこと!

ターンごとに山札から引き、カードの指示に合わせてスイッチを操作します。一つだけ色が異なるLEDライトそれのみを点灯させることができれば勝利です。

開発には試作を繰り返し、自由に動かせるカードを加えたり必勝パターンをなくしたりするなどの改良を行いました。勝つための戦略と運が勝負のカギを握る、ハラハラドキドキの対戦ゲームです。

3)作品名:宝探し

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最後に紹介する作品は、電子回路の設計に何週間も設計に費やした力作です。

このおもちゃは、部屋のどこかに隠して遊びます。探す人は、リモコンのボタンを押しながら部屋を歩き回ります。このおもちゃにリモコンを向けると振動するので、その音を頼りに隠し場所を探す、という遊び方です。

この装置には、赤外線センサーや振動モーターを組み合わせた複雑な回路が搭載されています。さらに、およそ1か月にわたる試行錯誤の末、赤外線を感知したら一定期間振動し続ける機能を実現しました。

何回失敗してもあきらめない心が、この複雑な制御を可能にしました!

授業を振り返って

TOYエンジニアプロジェクトは、メンターの僕から見ても本当に難易度が高い挑戦の連続でした。でも、「試行錯誤を繰り返すことで困難を乗り越え、作品を完成させる」という体験は、生徒のみんなにとって大きな自信につながったんじゃないかなと思います!

<おまけ>

僕のほかにもう一人、プロジェクトの伴走者を務めたメンター、おーえる(紹介記事はこちら)。ある日の授業では、誕生日を迎えたおーえるにバースデーソングの鳴る電子回路を組んでプレゼントする場面が。エレキの力はすごいですね♪


こんな回路で右下のスピーカーを制御しました。

▼ 2021年5-7月のプロジェクトは、STEAMがテーマ!あの、日本を代表するメーカーと共同開発したプログラムに取り組みます!(授業体験は5/19まで)


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