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[推し本]短くて恐ろしいフィルの時代(ジョージ・ソーンダーズ著 岸本佐知子訳)/いろいろ風刺が詰まってる!

国が小さい、と言うのはよくある話だが、<内ホーナー国>の小ささと来たら、国民が一度に一人しか入れなくて、残りの六人は<内ホーナー国>を取り囲んでいる<外ホーナー国>の領土内に小さくなって立ち、自分の国に住む順番を待っていなければならないほどだった。

から始まる奇妙奇天烈に非現実的な世界設定で、缶詰やネジや機械の部品などでできた、肉も血も感じさせない内ホーナー人(全国民7人)、外ホーナー人(全国民多分十数人)。すべてが完全に創作の世界観なので、想像の翼を思いっきり広げてみてください。

薄いのでさらっと読めてしまいますが、星の王子様的ファンタジーと思うなかれ、途中から背筋がゾーッとするような空恐ろしさを覚えます。
内・外ホーナー人の領土諍いから独裁者が生まれるまで、最少人数でも嫉妬や諍いや裏切りが発生するメカニズム、ちっぽけなコンプレックスを抱いたフィルが権力を掌握していく過程、ポピュリズムが声の大きいものに寄っていき独裁者に担ぎあげていく共犯性など、なんとも現実世界を風刺した思考実験のように思えます。
これが書かれたのは20年近く前ですが、その後を予見するような現代性があります。

岸本佐知子さんはルシア・ベルリンの「掃除婦のための手引き書」「すべての月、すべての年」の翻訳も手掛けていて、こちらも超おすすめです。


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