アサヨム

大好きな作家や、深く愛する作品を推してます!人生で迷ったり、つまづいたとき、遅効性でし…

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大好きな作家や、深く愛する作品を推してます!人生で迷ったり、つまづいたとき、遅効性でしっかり長~く効きますよ。 偏愛は須賀敦子、カズオイシグロ、柴崎友香、宮本輝、森田真生、サンテグジュペリ、モンゴメリ、Lisa Genova、Jhumpa Lahiri、大阪もの。

記事一覧

[推し本]職場で傷つく(勅使河原真衣著)

職場で、○○ハラやメンタル休職などが起こってしまう、もっとずっと手前で起こっている傷つきを、ともすればないことにされるものを著者は正面から捉えます。 個人の能力…

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4日前
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[推し本]ロシア文学の教室(奈倉有里著)

デビュー作「夕暮れに夜明けの歌を」で、ロシア留学時代の文学漬けの日々をとても滋味あふれる文章で描いた奈倉さん。 本書は、その留学時代の講義を再現するようなものか…

アサヨム
4日前
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[推し本]しぶとい十人の本屋(辻山良雄著)

昨今、書店が減っている一方で、個人開業のいわゆる独立系書店、というものが少しずつ増えています。その端緒を作ったともいえる、東京・荻窪のTitleという本屋さんの店主…

アサヨム
4日前
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[推し本]夏の嘘(ベルンハルト・シュリンク著 松永美穂訳)

夏に読もうと積読数年、ようやく読了です。(理想的には、避暑地の湖べりで白いワンピースとか着ちゃってアイスティでも飲みながら読むはずが、、、) ベルンハルト・シュ…

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1か月前
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[推し本]スイマーズ(ジュリー・オオツカ著 小竹由美子訳)/娘は母を解剖する

夏にいい感じ〜なタイトルと表紙で読み始めたら、涼しくなる訳ではなく(ちょっとは泳ぎたくなりますが)、著者の母へのオマージュと言える作品でした。 10年に一作というペ…

アサヨム
1か月前

[推し本]短くて恐ろしいフィルの時代(ジョージ・ソーンダーズ著 岸本佐知子訳)/いろいろ風刺が詰まってる!

から始まる奇妙奇天烈に非現実的な世界設定で、缶詰やネジや機械の部品などでできた、肉も血も感じさせない内ホーナー人(全国民7人)、外ホーナー人(全国民多分十数人)…

アサヨム
1か月前

[推し本]飛ぶ教室・死んだ山田と教室/中高生の読書感想文にもぜひ

「飛ぶ教室」(エーリヒ・ケストナー) 新潮社文庫の今年のプレミアムカバーが可愛いのと、それほど分厚くないので、名作と言われる本を一冊読んだ、という自信を得られる…

アサヨム
1か月前
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[推し本]中動態の世界 意思と責任の考古学(國分功一郎著)/スリリングな冒険譚!

「暇と退屈の倫理学」でお馴染みの(本離れと言われて久しいですが、この本がロングベストセラーであると言うことに希望を感じますね)國分先生。 中動態から始まる問いは冒…

アサヨム
1か月前
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[推し本]文化の脱走兵(奈倉有里)/国ではなくそこにある人に思いを寄せて

デビュー作「夕暮れに夜明けの歌を」ではなんとも静謐ながらまっすぐ真摯にロシア文学に取り組んだロシア留学時代を書いた奈倉さんのエッセイ集。奈倉さんの文章に一度でも…

アサヨム
1か月前
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[推し本]企業変革のジレンマ(宇田川元一)/ビジネスでの臨床医師のような趣

人事組織・業務変革コンサルティングに携わる職業柄、参考文献は目を通しますが、本書はありがちな変革方法論とは一線を画し、日頃からもやもや考えていたことが言語化され…

アサヨム
1か月前
5

[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅最終日

まだまだ居たいところですが、帰る日となりました。 最終日はハリファクス空港に朝5時には着くように、3時半起きです。松本侑子先生はモンゴメリ学会発表のためにPEIに戻…

アサヨム
2か月前
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[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅5日目

午前:コンフェデレーションブリッジを渡って本土へ 今日はPEIを離れ本土に向かいます。 昼食:Inn on the Lake 午後:ハリファックス、シタデル要塞、墓地公園、レッド…

アサヨム
2か月前
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[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅4日目

午前:モンゴメリが教えていたベデックの学校、兵士の記念碑、サマーサイドの塔のある家や街並み 4日目は、キャベンディッシュを後にし、PEIの南側のサマーサイドに向か…

アサヨム
2か月前
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[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅3日目②

午後:モンゴメリ生家、フォーウィンズの内海、銀の森屋敷、炉辺荘と虹の谷 この日は昼前から雨模様。 キャベンディッシュからバスで数十分ほどのニューロンドンにモンゴ…

アサヨム
2か月前
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[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅3日目①

宿泊しているKindred Spirits Innはグリーンゲイブルズから徒歩3分の好立地。実は前日に、グリーンゲイブルズへの近道(隣のゴルフコースを突っ切るだけ)を教えていただい…

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2か月前
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[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅2日目②

昼食:競馬場横のRed Shores 岩合光昭の世界ネコ歩きにも出てきた競馬場、馬の後ろに操縦車のようなものを付けるタイプで、騎手もコロッとしたおじさんたちでなんとものど…

アサヨム
2か月前
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[推し本]職場で傷つく(勅使河原真衣著)

職場で、○○ハラやメンタル休職などが起こってしまう、もっとずっと手前で起こっている傷つきを、ともすればないことにされるものを著者は正面から捉えます。 個人の能力や弱さのせいにせずに、傷つきのメカニズムを注意深く見ることが組織開発の起点となるといいます。 昨今、人的資本やパーパスやウェルビーイングや心理的安全性など、その界隈では流行りの新しい用語とソリューション的なものが取り上げられがちですが、まあうっすら漂う「ほんまか?」な匂いはありますよね、ええ。 著者から見ると、上司

[推し本]ロシア文学の教室(奈倉有里著)

デビュー作「夕暮れに夜明けの歌を」で、ロシア留学時代の文学漬けの日々をとても滋味あふれる文章で描いた奈倉さん。 本書は、その留学時代の講義を再現するようなものかと思ったら、想像以上に独創的で面白かったです。まさに読むVR。 マイスターならぬ枚下(まいした)先生が、教壇に立つとあら不思議。授業の度ごとに学生たちはゴーゴリやドエトエフスキーなどの課題図書の物語世界に、はい行ってらっしゃい、と一瞬で紛れ込んでしまう体験型授業が繰り広げられます。 そのVRさといえば、物語の登場人

[推し本]しぶとい十人の本屋(辻山良雄著)

昨今、書店が減っている一方で、個人開業のいわゆる独立系書店、というものが少しずつ増えています。その端緒を作ったともいえる、東京・荻窪のTitleという本屋さんの店主、辻山さんが、全国の独立系書店を巡る旅に出て、それぞれの書店主と響き合い、本屋のあり方を見つめ直す著作です。 泣くとは、思っていませんでした。 書店のビジネスモデルは厳しくて、本を読まない人が増え、街からどんどん本屋が消えていく中を抗うように、はたから見ると非効率でも、しぶとく矜持をもって本を商う人たちがいる。

[推し本]夏の嘘(ベルンハルト・シュリンク著 松永美穂訳)

夏に読もうと積読数年、ようやく読了です。(理想的には、避暑地の湖べりで白いワンピースとか着ちゃってアイスティでも飲みながら読むはずが、、、) ベルンハルト・シュリンクといえば、ベストセラー「朗読者」ではナチス時代のユダヤ人迫害側の傷を抱えた女性と、母子ほど歳の違う若者とのタブー的な恋愛関係から話が始まるのですが、戦後ドイツがナチ時代の犯罪にどう向き合うかセンシティブなテーマでした。しかし、どこか本当に歴史に対峙することからの「逃げ」のようなものも感じていました。 「オルガ

[推し本]スイマーズ(ジュリー・オオツカ著 小竹由美子訳)/娘は母を解剖する

夏にいい感じ〜なタイトルと表紙で読み始めたら、涼しくなる訳ではなく(ちょっとは泳ぎたくなりますが)、著者の母へのオマージュと言える作品でした。 10年に一作というペースだけあって、62歳にして第三作目となるこの一作に結実するまでには相当の習作、絵画なら下絵やデッサン的な、があったのではと想像します。 地下にある公営プールでは、重力からも、地上での病気や家庭や仕事の悩みからも解放されて、それぞれの決まったルーチンで泳ぐ人たちがゆるやかなコミュニティを築いていました。プールの底

[推し本]短くて恐ろしいフィルの時代(ジョージ・ソーンダーズ著 岸本佐知子訳)/いろいろ風刺が詰まってる!

から始まる奇妙奇天烈に非現実的な世界設定で、缶詰やネジや機械の部品などでできた、肉も血も感じさせない内ホーナー人(全国民7人)、外ホーナー人(全国民多分十数人)。すべてが完全に創作の世界観なので、想像の翼を思いっきり広げてみてください。 薄いのでさらっと読めてしまいますが、星の王子様的ファンタジーと思うなかれ、途中から背筋がゾーッとするような空恐ろしさを覚えます。 内・外ホーナー人の領土諍いから独裁者が生まれるまで、最少人数でも嫉妬や諍いや裏切りが発生するメカニズム、ちっぽ

[推し本]飛ぶ教室・死んだ山田と教室/中高生の読書感想文にもぜひ

「飛ぶ教室」(エーリヒ・ケストナー) 新潮社文庫の今年のプレミアムカバーが可愛いのと、それほど分厚くないので、名作と言われる本を一冊読んだ、という自信を得られるでしょう。 ギムナジウム(いわば小中高一貫の男子校)で寮生活をしている5人の男子仲間の友情、義侠心、勇気、そしてかつて生徒だった理解あるベク先生(道理さんという愛称で呼ばれる)のクリスマス祝い前後の数日を巡る物語です。 学校でのクリスマス祝いの出し物の劇タイトルが「飛ぶ教室」、でもそれがどのような話かは詳しくは書

[推し本]中動態の世界 意思と責任の考古学(國分功一郎著)/スリリングな冒険譚!

「暇と退屈の倫理学」でお馴染みの(本離れと言われて久しいですが、この本がロングベストセラーであると言うことに希望を感じますね)國分先生。 中動態から始まる問いは冒険的に広がって行き、ラテン語研究からメルヴィルまで思いもよらぬところで点と点が繋がり、新たな問いが新たな探求の原動力にもなっていくかのようです。 難解なテーマで、著者自身も終わりが見えなかったであろう冒険譚のクエストを一緒に解決していくようなスリリングな読書体験でもあります。 さて、多くの日本人が初期の英語学習で刷

[推し本]文化の脱走兵(奈倉有里)/国ではなくそこにある人に思いを寄せて

デビュー作「夕暮れに夜明けの歌を」ではなんとも静謐ながらまっすぐ真摯にロシア文学に取り組んだロシア留学時代を書いた奈倉さんのエッセイ集。奈倉さんの文章に一度でも触れたら、どんどん読みたくなる、そんな書き手です。 私の以前の「夕暮れに夜明けの歌を」書評も多くの方に読んでいただけたようです。 「文化の脱走兵」では、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、ヨーロッパ各国から集まった文学大学の日々でつい「○○○人の誰それ」と国名が名刺のようにつきまとうのに戸惑っていた時に、

[推し本]企業変革のジレンマ(宇田川元一)/ビジネスでの臨床医師のような趣

人事組織・業務変革コンサルティングに携わる職業柄、参考文献は目を通しますが、本書はありがちな変革方法論とは一線を画し、日頃からもやもや考えていたことが言語化されて腑に落ちるところが多々ありました。 みんな大好きコッター先生や三枝匡さんのV字回復ストーリーは明快ながらも「実際はちゃう」となる部分、そもそも前提が違うから、と至極当たり前な指摘に改めて視界がクリアになります。 そう、現実には、プロジェクトXのように崖っぷちから這い上がるドラマティックなストーリーがないことのほうが

[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅最終日

まだまだ居たいところですが、帰る日となりました。 最終日はハリファクス空港に朝5時には着くように、3時半起きです。松本侑子先生はモンゴメリ学会発表のためにPEIに戻るのでここでお別れ。1ヶ月後の同窓会も準備されていてアフターフォローも至れり尽くせりです。 トロントで乗り継ぎで、つい5日前に来たのにもう懐かしい。それくらい濃い旅行でした。そしてここが最後のお土産チャンスです。職場向けやら何やらを買い、残っていたカナダドル消費に努めます。 ちなみに、PEIでもどこでも、たいてい

[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅5日目

午前:コンフェデレーションブリッジを渡って本土へ 今日はPEIを離れ本土に向かいます。 昼食:Inn on the Lake 午後:ハリファックス、シタデル要塞、墓地公園、レッドモンド大学のモデルDalhousie大学、アンが求婚されるあずまや、Last Steps アンはアヴォンリーで教師をしていましたが、ひょんなことから大学進学が叶います。曲がり角のむこうには新たな人生が開いていきます。 (アン 18歳) モンゴメリは、島の北西部で教師をした後、ダルハウジー大学

[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅4日目

午前:モンゴメリが教えていたベデックの学校、兵士の記念碑、サマーサイドの塔のある家や街並み 4日目は、キャベンディッシュを後にし、PEIの南側のサマーサイドに向かいます。 アンはクイーン学院卒業後、奨学金を得て大学に進学するはずが、カスバート家がお金を預けていた銀行が倒産し、その新聞報道にショックを受けてマシューが心臓発作で急逝。マリラとグリーンゲイブルズを守るためにも、アンは進学を諦めて地元の学校で教えることになります。 (アン 16歳) モンゴメリは、20歳で教員免

[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅3日目②

午後:モンゴメリ生家、フォーウィンズの内海、銀の森屋敷、炉辺荘と虹の谷 この日は昼前から雨模様。 キャベンディッシュからバスで数十分ほどのニューロンドンにモンゴメリが生まれた生家が残っています。モンゴメリの父がここでよろず屋を営んでいました。モンゴメリは実際にここで暮らした記憶はあまりないはずですが、それがゆえに、アンがギルバートと新婚時代を過ごす「夢の家」にこの地や近くのフォーウィンズ湾を舞台にして、そのまま幸せに続いたかもしれない父母の結婚生活を想像したのかもしれません

[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅3日目①

宿泊しているKindred Spirits Innはグリーンゲイブルズから徒歩3分の好立地。実は前日に、グリーンゲイブルズへの近道(隣のゴルフコースを突っ切るだけ)を教えていただいていました。 時差ボケで早起きしすぎた翌朝、今日も一日どんなわくわくが待ってるかしらー?とアンの気持ちでスタートです。 近道を抜けて、朝焼けしたグリーンゲイブルズはこちらです。この日の日の出は5時半。庭先にはスノーボールズ、スコッチローズ、ライラック、青い羊歯、リンゴの木が植えられていて、鳥がさえず

[モンゴメリ生誕150周年]アヴォンリーへの道ー旅2日目②

昼食:競馬場横のRed Shores 岩合光昭の世界ネコ歩きにも出てきた競馬場、馬の後ろに操縦車のようなものを付けるタイプで、騎手もコロッとしたおじさんたちでなんとものどか。PEIの人にとっては、日が長い夏場のお楽しみでしょうか。 この横の観覧席があるレストランでスープとサンドイッチのランチでした。 午後:各州公式タータン生地屋、マシューが馬車でアンを迎えにいくブライトリバー駅モデルのハンターリバー駅舎跡、モンゴメリパークと向かいにあるモンゴメリのお墓、キャベンディッシュ