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国道187号ドライブガイド1 美しき三重奏編

国道187号は、山口県岩国市の立石交差点から北へ向かって遥々日本海岸は島根県益田市の中吉田交差点へと至る一般国道である(一部国道2号、9号との重複区間あり)。総延長72.3kmはすべて改良されており、中国地方を縦断する快走路としてドライブには最適の道路である。道の駅が4箇所もあるぞ!
今回は国道187号の中でも島根県内、そして国道9号と重複しない吉賀町・津和野間のドライブで発見された素敵スポットを何回かに分けてご紹介したい。どうせ私のことだから、一般受けする観光スポットは皆無である。タイトルに騙されて間違えて来てしまった方は、回れ右だ。

上記吉賀町・津和野区間では、紹介するほどではないが味のある場所や、紹介したらいけないような超素敵スポットまで、多く出会うことができた。
諸事情を考慮して私がレポートで紹介するのは①~③までの3箇所とし、今回は肩慣らしとして①について語ろう。

上記地理院地図の中央に島ヶ原という半島状に付き出た小集落があり、そこから高津川対岸の国道に接続する橋がある。ここが①のスポットである。
橋の接続部分のすぐ下には、長方形に斜線の入った地図記号。地図を見慣れない人は知らないかもだが、これは洞門、いわゆるロックシェッドや落石避けと呼ばれる構造物だ。山岳道路をドライブしているとき、道路を覆う屋根状の構造物を見かけたことがある人は多いはずだ。あれが洞門。後ほど写真をお見せする。

さて、地図を見るだけでは、橋があって国道に洞門があって、それで終わり。この路線では実は洞門は珍しくもない。
しかし私はここを通りかかったとき、あまりのカッコいい風景にやられて(後方確認の上)急ブレーキを踏んだ。
橋のある所から北に100mちょっと進んだ所に車を停めて見た光景が、これだ。

さすがに遠くてよく分からんか。
高津川はきれい。
もう少し近づくと、こう。

朱色の鉄骨が目を惹く洞門に、同じく朱のワーレントラス橋。そして、かつてトラス橋完成以前に高津川に架かっていただろう吊橋の主塔が一同に会している!

これは、やべえでしょ。
かっこよすぎの美しすぎ。

地図だと何でもない場面に思えたこの場所が、実は洞門・トラス橋・廃橋という3要素が絡み合い独特の景観を誇る(私にとって)魅惑的な場所であったのだ。こういう発見があるから、初めての道をドライブするのは本当に楽しい。

枯れた蔦が絡まった主塔の内側に、こじんまりとしたブロック造のバス停が収まっている。シチュエーションは可愛いが、赤いインクで壁面に直書きされた「国鉄バス杉山橋停留所」という文字は血文字感があって少々不気味な印象となっている。少なくとも国鉄時代からここはバス停だったことは分かった。
吊橋の主塔にはその由緒を示すものは見つけられなかった。

国道側の親柱にはそれぞれ高津川、杉山橋。杉山橋の銘板がある親柱の前にコンクリートブロックが落ちていて、道幅を狭くしていた。これはちょっと危険かもしれない。

杉山橋を渡る。橋の向こうに島ヶ原の小さな集落が見えている。

昭和43年12月竣工。50年以上ここに架かっている。洞門も同時期のものだと思う。吊橋は昭和43年には役目を終えたと見ていいだろう。

あの洞門の上の崖を見てくれ!落石防止工がしてある40mくらいの高さ。かつて崩壊した斜面であろう。洞門は落石の危険がある崖下の道に取り付けられるのが普通だ。洞門ある所に危険あり、ということをまざまざと見せつけてくるような迫力ある対岸の眺めである。

私は洞門、トラス橋、廃橋が織りなす地形と構造物、そして歴史の三重奏にしばし浸り、また洞門上に見た自然と道路との峻烈な緊張関係に若干の先行き不安も感じつつ、この地を後にしたのだった。

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