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夏の道~国道191号宇田トンネル旧道

春から秋のシーズンは虫や熊や藪が怖いので、あまり変な道に入りこまないことにしている。そうすると必然、誰もが行くことのできる軽めの道をドライブすることが多くなるのだが、軽めの道はだいたいGoogle先生が網羅していらっしゃる(近年ではかなりハードな酷道・険道にも進出しているが)ので、あまり紹介する欲も湧いてこない。
しかしながら、ストリートビューをPCの画面で見る景色と、実際に道に立って感じる景色とは当然違うものなので、現地において感動や興奮の閾値を超えた道については、敢えて私が紹介してみてもよいと思うのだ。

前置きはこのくらいにして。
今回の道は、私が最近はまっている国道191号にある宇田トンネル旧道だ。
おおよその位置はここ、いまや萩市に取り囲まれてしまった山口県阿武町。

おおよそ印の位置に宇田トンネル
緑のラインが今回の旧道+α

上図のとおり、現道の宇田トンネルの脇に元浦、今浦という漁港集落を通過する旧道が描かれている。旧道自体は今浦の郵便局の先から現道に合流することになるが、今回は途中、岬にある神社の方へ進んでみた。

それでは、宇田トンネル北口から現地の様子をご覧いただこう。
撮影日は2024年6月15日。

これが現道の宇田トンネル。昭和46年竣工で延長は113m、日本海まで落ち込む岩尾根を貫く隧道で、このアングルから見るとなるほど隧道がなければまともな道は通らない、そんな地形だ。

宇田トンネル正面からは、海側にある旧道の存在がよく分かる。車を道路脇のスペースに置いて徒歩で旧道に入っていく。
この日の気温は30度超で日差しが肌を灼くじりじりとした熱さを感じるが、かすかに海風が吹くおかげで不快感はゼロだ。

旧道入口から海側の斜面を覗いてみると、現代的な消波ブロックの先に古そうな石垣が見えている。旧道から7~8mほど下にあるあの石垣は、もしかしたら更に古い旧旧道の遺物か?もしそうだとしたら、

こういうことになる。かもしれない。
赤で囲んだ範囲の石垣が旧旧道の路肩工なら、その間にある岩尾根を抜く青印のような隧道がなければ道として成立しないが・・・。
これを書いている現時点では旧旧道の存在は不明なので、今後の調査に委ねたい。
ともかく、初っ端からわくわくさせてくれる道であること。出会いの印象がよくて、既にこの道が好きになりかけている。

旧道入口から振り返って撮影。
拡大すれば、ずっと向こうに素掘りの尾無隧道と撮り鉄に人気の惣郷川橋梁が見えているのが分かる。

これが旧道だ!
夏、空、緑、海、私はこういうノスタルジイを感じる道に弱い傾向があって、この道は理想的だなと思った。今この場所の景色は、きっと昭和の時代とほとんど変わっていないだろう。熱い日差しの下でこの道路風景をずっと眺めていたい。ストリートビューのどんよりした画像では決してこの道の魅力を知り得なかった。

藪の窓越しに海を見る。角のように突き出した枯れ木が印象的。

少し進んでこのカーブ。カーブミラーはきちんと磨かれている。交通量はほぼないが、ここは現役の道なのだ。
左手に岩尾根が見えてきて、道はどうする?

当然、ZUI☆DOU!!
分かっていたことだがやっぱり隧道が見えると嬉しい。

隧道へはもったぶって、ちょっと海の方を眺めたりする。
私にとっての海は瀬戸内海が基準なので、対岸も島も見えないような広大な海には茫漠とした恐ろしさを感じるが、このときは道と天候のお陰でただただ綺麗だと思った。

この隧道であるが、現地に素性が分かる扁額などは何もない、短い素掘り隧道である。おそらく後補でコンクリート吹付けがされたものと思う。
穴蔵さんでは後平(うしろびら)トンネルとなっていたが、由来は分からない。

隧道は短いのですぐに通り抜けてしまい、反対側坑口を振り返り見る。
プレハブの倉庫のような建物が隧道直近に2軒あり、ボートが陸揚げされている。漁具などをしまっておく倉庫だろうか。
そして、隧道から50mほど離れて海側を見ると、

小さな鳥居と祠がある。だが、これは地図にある神社ではない。鳥居の左に海側へ伸びる細い道があるので、これを入っていく。

この道は、参道になっている。
左右両側を海に挟まれた参道。
そしてさっきからめちゃ気になるのだが、

ここってゲームだと絶対重要アイテムがある場所だw
行ってみたい気もするが、安全面はどうかな。それに神域だとすれば、私のようなよそ者が立つべき場所ではないかもしれない。近づいてから決めよう。

社殿前の鳥居には「三穂神社」の扁額。鳥居はまだ新しいが、社殿は昭和中期ころのものだろう。
社殿左に見える石垣を登って裏に回り込めば、あの場所へのルートが開けるはず。

鳥居から反対側を見るとすぐに海。この社殿と鳥居は海に正対しており、漁業との関連を強く示唆する。

石垣から裏へ向かおうとすると、やたら迫力のある神様がおられる・・・。
特に立ち入りを禁じる看板などはないので、神様に20円をお供えして裏に回り込んでみた。

ごつごつした岩場を登り、尾根上まで来た。
見てのとおり、多少足場は不安定だが、先端まで行こうと思えば行ける感じだ。しかし、私は自重して、この場で一休みしたあと引き返すことにした。
この神社は地域住民に大切にされていそうだし、あの象徴的な場所への余所者の立ち入りを快く思わない住民もいると思われた。そういう思いも含めての神域だ。気軽にあの場所へ行けるほど、私個人の冒険心には価値がない。それに、この撮影地点でも十分に景色がよく、気持ちいい。

以上、ドライブ途中に立ち寄ったちょっとした旧道があまりに心地よく、神社も有名ではないのに印象的な場所だったので、レポートしてみた。
んだば。

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