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読書感想文*幸せなひとりぼっち

ものすごく頑固で実直、そして死ぬのが下手な爺が、隣に越してきた朗らかなイラン人の妊婦とその家族に巻き込まれることで徐々に心を開き、自殺を諦める話。

こう単純化して書いてしまうには少しもったいない。
この作品を個人的に気に入った最たるポイントは、リアリティ。
決して運命や偶然で感動を誘わないところが素晴らしい。

映画版の爺の方は笑ったり子どもをあやしたりといったシーンがあるけれど、小説版では、感謝の言葉も一切の誉め言葉も発しているシーンはないし、もっとシャイで恋愛不器用なオーヴエが描かれている。
その分、ハートの温かさのギャップで涙するのだ。

そして不思議なことに、主人公の爺オーヴエが、アルプスの少女ハイジに登場する山小屋のおんじのビジュアルで脳内再生される。

泣けるのがわかっていても泣くのが清々しい。
そんな風に思える作品である。

映画版を観る前に小説版を見た方が、よりいっそう泣けるのでお勧め。




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