麻の葉

人事コンサルタントをしています。日頃思いついたことを、考え方をまとめるためにつらつらと…

麻の葉

人事コンサルタントをしています。日頃思いついたことを、考え方をまとめるためにつらつらと書いています。

最近の記事

『世界一流エンジニアの思考法』を読んで

書店で平積みになっていて、興味があったので購入して読んでみました。  エンジニア的な思考法に特化することなく、誰にでも通用するような考え方やスキルが書かれていたので、非常におすすめです。 ちなみに、筆者の牛尾剛さんはnoteも積極的に書かれていて、本書の内容の多くも読めるようです(本を買った後に知りました)。  今回取り上げる内容も、ほとんどこちらの記事で網羅されています。 未来の生産性を高めるために投資する自分なりに本書で書かれていたことを整理してみると・・・ 未来の

    • 共働きの難しさ

      最近「共働きでキャリアを積むのは大変だな」と思ったことがありました。 私は結婚していて、2歳になる子どもが1人います。私も妻も車や新幹線で数時間の範囲に実家はありますが、普段は3人で暮らしています。 私が連休中に3日間とも出張で仕事があり、同じく土曜日の夜〜日曜日にかけて妻も出張で会社の懇親会+学会参加がありました。  本当に偶然が重なって、出張先が同じかつ妻の実家のすぐ近くということもあって、子どもを出先の一時預かりに数時間だけ預けるだけでなんとかなったのですが、どこか

      • 従業員にとって「優しい対応」とは

        「当社は、従業員に優しい会社なので・・・」という話を、よく人事担当者や経営者から聞きます。  しかしながらこの優しさの陰にある、厳しさには目が向けられていません(あるいは目を塞いでしまっている?) メンタルヘルス不調者のフォロー優しいと自称する企業の多くは、休職者が復職する際の判断が十分ではありません。  完全な労務提供ができることを確認せず復職させているため、場合によっては不完全な労務提供しかできないことを前提として復職させているため、復職後は当然のことながら完全な労務提

        • 『知識創造企業』

          今日紹介するのは、およそ25年前の本『知識創造企業』です。1980年代を中心に、日本型企業で数々のイノベーションが生み出されてきた、その要因は何かということを、欧米向けに解説した論文が元となっています。 今となっては、かなり歴史を感じる時代背景ではありますが、現代においても非常に参考になる、示唆に富んだ内容でした。  特にポストコロナ時代における組織づくりに欠かせない観点が多数含まれていたと思います。また、欧米企業における組織への考え方、特にテイラーの科学的管理法をいまだに

        『世界一流エンジニアの思考法』を読んで

          職場におけるLGBT 『LGBTとハラスメント』を読んで

          先日、経済産業省におけるトランスジェンダーの職員が、性自認に基づくトイレの使用を制限されたこと等が不当であるとして、国を訴えた裁判で、高裁判決が出ていました。 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210527/k10013054841000.html  ―【性同一性障害の経産省職員 女性用トイレ使用 2審は認めず】NHKニュース、2021年5月27日 18時34分 職場において、性的マイノリティの方への対応は、まだ大きな問題にはなっていな

          職場におけるLGBT 『LGBTとハラスメント』を読んで

          これからの雇用体系

          前回に引き続き、『人事と組織の経済学』を読んで、個人的に考えた考察をまとめてみようと思います。新しい組織づくりの一助になれば幸いです。 1.「組織は戦略に従う」という考え方組織と戦略はどのような位置関係にあるでしょうか。  組織>戦略、あるいは戦略>組織、二つの考え方がありますが、私は「組織は戦略に従う」といういわゆるチャンドラーの考え方に基づくべきだと考えます。 具体的には、企業活動は、経営方針・経営戦略がまずある。方針や戦略を実行するために、経営資源を配分し、組織を作

          これからの雇用体系

          無限定正社員についての考察|『人事と組織の経済学』を読んで

          労働経済学の分野をもう少し深掘りしたくなり、こちらの本を読んでみました。 従業員個人と企業の関係について、経済学の観点から分析しています。具体的には、採用・教育・離職、組織構造・職務設計、人事評価・賃金制度・各種インセンティブなど、人事の諸分野に渡ります。 個人的には、各分野の議論も大変勉強になった一方で、経済学的なものの考え方が参考になりました。例えば、単純化・モデル化して考えることや、トレードオフの関係などです。  本題に入る前に、今回のテーマでも重要な考え方となる、

          無限定正社員についての考察|『人事と組織の経済学』を読んで

          『労働経済学』を読んで、年功賃金を経済学的に考える

          私は、文系の中でも人文系を履修したため、経済学をしっかりと学んだことはありません。診断士の勉強で経済学に触れてから、労働経済学という分野を勉強したいなと思い、清家先生の本を読んでみました。 数式はちょっとしか出てこず、グラフも分かりやすいです。 今回はこの中から賃金に関するお話を取り上げたいと思います。 1.賃金の大原則賃金の大原則は、成果と賃金は一定期間で見た場合に釣り合っている、というものです。ここで成果とは売上等から経費や会社の取り分を除いたもの、と考えます。

          『労働経済学』を読んで、年功賃金を経済学的に考える

          『戦略的思考とは何か』

          歴史や国際情勢を紐解き、国家戦略(防衛戦略にとどまらず外交面も含めた戦略)をどのように考えていればよいか、解説した本です。 私が読んだ本は改版前で、初版が1983年。本書内でも、アングロ・サクソンVSソ連を念頭において検討されていて、時代の流れを感じます。  ですが、応用して考えてみると、現在の中国の台頭や、あるいはリアルタイムで起こっている新型コロナの感染拡大に対して、国家としてどのように戦略を立てて対応するのか、色々と考えさせられます。 1.日本人の国民性日本は侵略や

          『戦略的思考とは何か』

          『働き方改革の世界史』

          濱口先生の新しい本ということで、面白そうだったので読んでみました。 英米仏独と日本の労働組合の役割とその変遷について、12冊の本を紹介する形でまとめられています。もしかしたらもう少し前の世代の方には、労働組合とか労働運動は常識なのかもしれませんが、30代の私にとっては非常に新鮮に感じました。  また、日本型雇用の特殊性、あるいは三種の神器の一つとして、企業内組合が挙げられますが、これがどれほど特殊なのか、よく理解することができました。 1.労働組合の基本本書ではまずウェッ

          『働き方改革の世界史』

          合理的配慮の適切な提供について

          近年障害者雇用が進むにつれて、「合理的配慮」の提供に関する相談事例が増えています。ですが、合理的配慮は日本にはそもそも存在しない概念です。そのため、合理的配慮そのものの理解があいまいであったり、誤解が生じていることも多く、適切な提供に至っていない事例が良く発生しています。 今回は合理的配慮に関する正確な理解と、具体的な提供方法について、検討したいと思います。 それに関して、 川島聡,飯野由里子,西倉実季,星加良司『合理的配慮―対話を開く,対話が拓く』有斐閣,2016. が

          合理的配慮の適切な提供について

          『武士道と日本型能力主義』

          武士道に対する世間一般の誤解と、主君と武士の関係が日本の会社や社会の原点になっているという説が紹介されていました。日本型雇用の原点はどこにあるのか探る中で、非常に勉強になる本でした。 1.武士道とは武士道とは、主君のために命を投げ出す武士というイメージから、一般的に「滅私奉公」「集団主義」というようなイメージを持たれがちです。しかしながら、本来は個人の自立性の上に成り立つ考え方であると指摘しています。 このように個人の自立を尊重するからこそ、主君に対して阿諛追従する姿勢は

          『武士道と日本型能力主義』

          『戦後労働史からみた賃金~海外日本企業が生き抜く賃金とは~

          日本型雇用を賃金制度や人材育成の観点から整理された本です。とりわけ、海外企業のホワイトカラーに対する誤解や、日本のブルーカラーの特徴について、詳しく言及がなされています。  そして今後の日本企業への提言として、現在の日本の賃金制度に、海外のホワイトカラーで適用されている上限付きの範囲給を導入することを推奨しています。 1.海外のホワイトカラーに対する誤解「海外、特に欧米を中心とした企業では職務給が一般的で、仕事に対して賃金が一律に決まっている」とよく言われています。しかし筆

          『戦後労働史からみた賃金~海外日本企業が生き抜く賃金とは~

          『アメリカ自動車産業』

          アメリカの自動車産業の、特に生産現場における現状や問題・課題について、詳細にまとめられた本です。とりわけ、1980年代の日本車とドイツ車の席捲により壊滅的な打撃を受けた後の、改革の様子が記されています。 生産現場の話ではありますが、その多くは現場における人事・労務管理の問題、あるいはアメリカのブルーカラーに通じる構造的な問題という感じがしました。  5年くらい前に一度読んでいたのですが、改めて読み直すと、知識が増えていることもあって、さらに深く読むことができました。 1.

          『アメリカ自動車産業』

          『援助者必携 はじめての精神科』

          精神科のベテランの先生が書かれた本で、この本自体も2004年に出版されてから、現在は第3版を数えるほどの、ベストセラーです。非常に参考になる内容が多くて、お勧めです(あと、表現が非常にエレガント)。 1.前提として、人事担当者の疾患理解は必要ない普段は(そしてこの本を読んだ後でも)、人事担当者が疾患を理解することは求めていませんし、むしろ必要ないと考えています。なぜなら、この本にも書かれている通り、 というように、非常に難しい分野です。専門的な援助者でさえ悩むのですから、

          『援助者必携 はじめての精神科』

          復職時のテレワーク・在宅勤務適用について

          新型コロナの感染拡大が続き、特に都会を中心に在宅勤務が一般的になってきました。それに関連して今年になって多くなってきた相談に、「メンタル不調からの復職とテレワークや在宅勤務はどう整理すればよいか」というものがあります。 これについては、労働新聞社の「安全スタッフ」にてコラムを執筆しました。さわりだけはこちらで確認できますので、よろしければご参照ください。 ここからは、テレワークと在宅勤務は明確に区別はせず、どちらも職場に出社せずに仕事をする、広い意味での事業場外労働として

          復職時のテレワーク・在宅勤務適用について