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Rambling Noise Vol.78 「LOST CHILD その1」

だからと言って、アサノさんがその「テ」の業界に仲間入りしたいとか考えていたのでは、決してない。


別に役者に憧れていたワケではないのだ。ただ単に松田優作がひたすら好きだっただけのこと。
アサノさんのガキの頃の夢は、漫画家かアウトローだ。創作者には秋波を送ることが有ったとしても、演じる側にはそれ程興味は無かった。

「そんなに興味が有るなら、石原プロに紹介してやろうか」
真意の程は判らぬ、あのお父ちゃんのすっとぼけた発言から約四十年後、アサノさんは、ちゃっかり演技者として舞台上にいた。


だが・・・だけれどもですね、2020年2月2日にホリエモン万博で公演された、その『ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル』にしても、当初から一回こっきりの予定で走っていたし、稽古中にしても、公演時に於いても、そして終演後であっても、キャストもスタッフも全員が全員、今後の展開など誰一人として考えもしなかった。
筈だ。

そうして、約三ヶ月間に及んだ素人演劇革命は幕を閉じた。

のであったが、悪いことには、ミュージカルだろうがストレートプレイだろうが、無論のこと自身初の舞台出演。さらには大役と言えば言えよう青年スクルージ役を務めるに当たり、その期間中かなりの度合いで没入していたアサノさんは、舞台を終えてからキッチリ二週間は

ふにゃふにゃのポン、

それこそ腑抜けと化したのだった。


畢竟、だからまぁ、HIU版 クリキャロを終えてしまってのアサノさんは、差し当たってHIUの中で特にコレって言うほどやりたいことも定まらずにいたし、実際のところ何をするってワケでもなく日々を過ごしていたのだった。

ふにゃふにゃのポンのポンコツ期間も終わりに差し掛かった頃、ようやく重い腰とiPhoneのメモを立ち上げ、HIUメルマガの特集用にと「ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント」というプロジェクトの始まりから終わりまでの裏っ側を描いた私小説を、コンニャロとざっと書き上げた。

その連載は2020年2月20日配信のHIUメルマガ vol.1366からスタートしたのだったが、ついでにアサノさんはHIUメルマガのレギュラーライターに就き、以後は毎週木曜日に配信されるHIUメルマガを書き続けることにしたのであったけれども、アサノさんは、なんとなーくその他に特段目立った活動をする気にはなれずにいた。

いや、気自体は有っても、機会が無かったというべきか。


というのは何故か?

(続く)

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