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美味しく飲んで、意識せずいつの間にか健康に。カテゴリー・クリエイターへの挑戦 Vol.90

2020年4月、ヤマトホールディングス株式会社の100%子会社の物流会社であるヤマトロジスティクス株式会社が、ヤマトフルフィルメントというサービスを始めるというニュースが目に留まった。
それは、Yahoo!ショッピングストア向けのフルフィルメントサービスであって、Yahoo!ショッピングストアに出品している商品を倉庫で保管し、且つ、出荷までヤマトロジスティクスが請け負うというものだ。

2017年頃から強硬な値上げ活動を行なってきていたヤマト運輸は、大変なジレンマを抱えていた。
人件費未払い問題を端緒に始まったヤマト運輸の業務改善とは、具体的には法人向け、個人向け双方の価格改定と、取扱量の制限であった。つまり、値段を爆上げして、仕事は選り好みしたのだ。なんという傲慢さであろうか。

その活動に於ける過ちの一つは、Amazonを甘く見たことだ。元々、佐川急便が逃げ出した為にヤマト運輸が独占していたAmazonのお仕事である。値上げしてもAmazonとしては受け入れざるを得ないと踏んだのだろう。確かにAmazonは価格値上げは受け入れたが、即座に逆襲へと転じるのであった。

まず、Amazonは佐川急便とゆうパックとの取引を始めた。
そしてまた、東京都内、神奈川県を皮切りに、中小の運送会社と契約して、デリバリープロバイダと呼ばれる運送会社網を組織した。
さらに、軽トラック、軽バンなどの軽貨物車による配送を、個人事業主に対してアウトソーシングする自社便まで始めた。その名をAmazon Flexと言う。
「Amazonでぇす」
と、テンション低めにやってくる黒ずくめの兄ちゃん。あれだ。

結果、Amazonからのヤマト運輸の受注量は激減した。ヤマト運輸は完全に履き違えたのだ。
Amazonという会社が、単なるEC販売の会社だと思ったら大間違いだ。実はロジスティックも本来の業務の一部なのだ。アメリカでは航空便まで自社で行なっているほどだ。

そのAmazonが、日本に於いては宅配会社に配達をお任せしていたのは、単に自社で賄わなくとも、安価で優れた全国網の物流が既存で在ったからに過ぎない。割りが合わなければ、外注先など切り捨て、自社で用意するまでのことなのだ。
Amazonは軽量な荷物などは自社便で、重い、大きいと厄介な荷物はヤマト運輸へと、その様に棲み分けを行なっていった。

加えて、Amazonが始めた大改革、Amazonフィルフィラメント。Amazonの倉庫で荷物も預かるよ、配送も請け負うよ、というこのサービスによって、宅配会社各社は通販業者の顧客たちを奪われたのだった。

ヤマト運輸のもう一つの過ち。それは、荷物受け入れ量を減らし過ぎたのだった。粗利益を向上させたまでは良かったが、人件費を上回るほどの仕事量が確保出来なかったのだった。つまり、値上げしたのに赤字、という、極めてかっちょ悪い状況を自ら招いていたのであった。
バカだなぁとしか思えないが、そういうことで、ヤマト運輸はまたも方針を翻えし、2019年の中頃から総量規制を止め、物量の確保へ走り出したのであった。

そして、今回のヤマトフルフィルメントだ。Yahoo!としてはAmazonに対抗したい。そしてヤマトとしては、価格交渉策で思いっきり失敗し、Amazonから奪われた仕事を補完したいというところなのだろう。
さらに、Yahoo!ストア向け以外の個々のショップの商品でもやりまっせ、ということであった。それは恐らく、Yahoo!の仕事を引き受ける条件として、ヤマト側から提案したのであろう。

私としては、Yahoo!ショッピングはどうでも良かった。
もし、大阪の工場近くのヤマトロジスティクスの拠点から出荷出来るのであれば、現在のスキームである、大阪工場から神奈川県の倉庫まで移動し、その倉庫から宅配便で出荷しているという無駄を省くことが可能だ。これは有り難い。
そこで、早速2020年4月7日、ヤマトロジスティクスの営業にフィルフィラメントの見積依頼をした。

だが、結果として、これは頓挫した。
まず、ヤマトロジスティクスが担当する保管料やら入出庫料などの倉庫に係る経費が、我々が委託している倉庫よりも既に高かった。
ただ、それをカバー出来るほど宅配送料が安ければ、トータルで安ければそれで良かったのだ。なんたって、大阪から神奈川県までの横持ち費用は掛からないのだから、アドバンテージは有るではないか。

しかし、実際に宅配を請け負うのはヤマト運輸の大阪の営業所なのだと言う。ヤマトロジスティクスがコントロール出来ない範疇なんですよ、と。そして、新規のお取引につきましては、殆ど定価でしか見積もりを出せないと言ってまして、とのことだった。

Yahoo!ショッピングその他諸々でのスケールメリットくらい、そりゃそれ相当有るのだろうと思っていたのが甘かった。
いや。と言うより、神奈川県に於ける当社一社向けの宅配便送料よりも高いとはどういうことか。
果たしてやる気があるのだろうか。
またもユーザーのことは置きっぱなしである。
アホとしか言いようがない。

状況が変わったら、また連絡してくださいと、ヤマトロジスティクスの営業に言いながら、私は、こんな殿様商売の体質で上手くいく筈はないと思っていた。
ヤマトフルフィルメントは大成しないし、Yahoo!ショッピングがAmazonを凌ぐ日など来る訳がない。

なお、ヤマトフルフィルメントは、その後本当に状況が変わるのだったが、それにはかっきり一年間の期間を要することとなる。


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