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Rambling Noise Vol.35 「メルマガナイトへGo ahead! その23」
「事を起こすのにさしたる理由が無くとも構うことはあるまい。やってみたい、と思った。それだけで動機としては充分だろう」
その私小説は、こんなくだりで始まった。
タイトルは、「ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント」と、シンプルなものとした。
大体が、アサノさんの頭の構造そのものがシンプル(単純ね)なのだから、それもごもっともなこと。
執筆は主に移動中。
この際だから、ひとつ長文の私小説風にしちゃってみよう。
文体としては、アサノさんを第一人称としたハードボイルド調。どうせ書くなら、今時なかなか読まれない様な思いっきりガチガチ〜な固〜ぁい語り口にしてやろう、とアサノさんは決めた。
ついつい流行りに逆らってしまう天邪鬼な性格をここでもご披露するワケだけど、実はこの頃アサノさんは或る小説を読んだばかりだったことが拍車をかける。
その小説とは、小鷹信光の著作『探偵物語』。
![](https://assets.st-note.com/img/1667894543032-EVwnrY1X9E.jpg)
ハードボイルドミステリーの評論家であり、翻訳家でもある小鷹氏は、1979年から1980年にかけて放送され、松田優作の代表作の一つとも言われるテレビドラマ『探偵物語』の原案者ともされている。
ドラマの企画段階で招聘された小鷹氏は、「ハードボイルドとは」、「一人で生き抜く私立探偵とは」、などについて膨大な文字数の企画原案を執筆した。
ドラマの第12話「誘拐」に於ける
「日本のハードボイルドの夜明けはいつ来るんでしょうか。ねえ、 小鷹信光さん」
と言う松田優作の痛快なアドリブも有名だ。
だが、テレビドラマ放送開始と時期を同じくして刊行されたこの小説は、小鷹氏の完全なオリジナルなのである。
本書に於ける主人公の私立探偵 工藤俊作はベスパに跨ることはないし、黒丸のサングラスもソフトハットも身に着けてはいない。ましてや渋谷の街を飄々と駆け抜ける「工藤ちゃん」でもない。自分のルールに則り行動するハードボイルドの主人公で、共通しているのは元サンフランシスコの警察官という裏設定くらいであり、ドラマとは全くの別物だ。
そして、小鷹氏はとうとうこの『探偵物語シリーズ』以外には小説を書くことなくこの世を去っている。氏が如何に『探偵物語』に力を注いでいたのかが分かるというものだ。
おやおやと。
すっかりこちらの文体までお堅くなっちまいましたよと。
(そして、「これ、ほぼ書評じゃん」と、ご指摘を受けることになるであろうと思いつつ、続く)
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