『人たらしの教科書』 作者:小室和哉
読む前と、読後の印象がこれほどコロッと変わるのも珍しい。すっかり表紙や謳い文句に騙されてしまった。あー、良い意味に決まっている。
なんてったって、その表紙には、「遊びながら年収一千万に!」などと書かれているのだ。なんてナメくさったチャラいことを、と想っても仕方があるまい。
そして、序文に於いて、社長になって資金繰りで頭を一杯にするより、気楽に、自由気ままで、相応に豊かな人生が送れるのが会社員だ、と言われてしまえば、その通り実に年がら年中資金繰りに悩んでいる経営者たる私としては、「何を好き勝手なことを!とほほ・・・」と、せんかたやるせない気持ちにもさせられると言うものだが、考えてみれば、この世の中のビジネスマンの大方は、社長ではなく会社員だ。とすれば、この本が一般的な会社員にフォーカスしていることは、まま正解と言えるし、「起業して成功しよう」という様な本とは真逆であり、ビジネス書として考えれば、希少価値があるのかもしれない。
本文では、Chapter1から7まで、32のセンテンスを以て、他人から「人たらし」と評される著者が実際に体験してきたことを元に、「こうすべきだよ」ということが書かれている。そう、あれこれたっぷりと。
というと、如何にして他人に取り入って、上手いことやっちゃおうか、という様なノウハウが書かれているのだろうかと思うかもしれないが、ちゃうちゃう、そんな薄っぺらいものではなかった。
他人をおもねる方法を模索するのではなく、自分を高めることに努めつつ、楽しく生きることを求めることで、結果として他人から好まれ、会社にも貢献出来、我が身に返ってくることも多くなる。
それは、上辺の既成概念を容易に信じないことであったり、見た目を磨くことであったり、無駄と思えることをキチンと行なうことだったり、スケベ心を忘れないことだったり、その他諸々と、その内容はビジネス書というより、むしろ自己啓発本と言える。
因みに、人たらしと言われる様になっていった著者の歩みの土台として、序文ではまず著者の半生が紹介されているのだが、少年時代のデブ人生、高校卒業後は遊び尽くして色々と経験値を広げていき、自分というものを捉えていった、という経歴は、私も近似している。
しかし、著者が母親の言いつけに従い、勉強だけは没頭する様に行なったという点は決定的に違った。
う〜ん、残念。いや、勿論私がね。
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