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美味しく飲んで、意識せずいつの間にか健康に。カテゴリー・クリエイターへの挑戦 Vol.13

まずは現状把握といこう。
改めてS藤取締役とI橋から事業概要と今時点の進捗状況などをヒアリングした。

ご想像通り。さっぱりお話にならない。
能力の伴わない善意の人間ほどタチの悪い者はいない。悪気が無いから、どれだけ自分が愚かしいことをしていても、罪の意識がこれっぽっちも芽生えやしないのだ。
I橋の態度も良く判った。彼は商品供給の体系作りをし、その間を取り持つことで、ブローカーとしてのかすりを得ることと、当社から水事業に係るコンサルタント収入を得るというスタンスでしか関わる気は無いのだ。こんな奴に販路開拓など出来るものか。
しかし、S藤取締役にしてもS会長にしても何故そんなことも判らないのだろう。

善意の無能者と、悪意のハイエナ。
正に名コンビじゃないか。
溜まるのはストレス、出るのは溜息ばかりだ。

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すっかり彼らに絶望した私は、自ら全てを引き受ける覚悟をしたのだ。
「やるからには俺主導でやる。今日から俺が責任者となるから、その積りでいてくれ」

だが、そのタイミングも少し遅かったかもしれなかった。
私が事業責任者として立ったのは、2011年3月下旬からだった。
そう、2011年3月11日に発生した東日本大震災による、飲料水確保を目的としたパニック需要の波に完全に乗り遅れたのであった。
これはいかにも勿体の無い機会損失だったと言っておく。
こういう発言は不謹慎かもしれないが、東日本大震災による特需によって脚光を浴び、突然顧客を増やしたメーカーが実際にいる。フレシャスウォーターだ。

この会社は、それまで数々のウォーターサーバー比較サイトにかなりのコストをかけて、『一位広告(業界でNo.1評価! というヤツだ)』を出しまくっていた。
震災に伴い、水を求めた人たちが、名の通ったアクアクララなどへ連絡をしてみても、時既に遅し、在庫が売り切れになっている → 困ったコンシューマーがWeb検索を行う → どの比較サイトに行っても、フレシャスが一位だ → なら間違い無いのだろう → 注文、と言う具合で新規受注が殺到したのだった。

もっとも、アクアクララなどが、この時期に新規顧客を断っていたらしいのは、パニック需要のしっぺ返しを恐れていたこともあったらしい。
震災から数ヶ月後、勝手に捨てられて回収不要となったボトルが数多く有ったということを耳にしたし、騒動が収まった後の解約数も相当だったとも聞いた。

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そんなはた迷惑な受注さえ、当社には訪れては来なかった。その頃、MCMのめぐみなど、何処をどう検索しようが箸にも棒にもかかりはしない。注文が来る筈も無い。
前にも述べたが、モノがあっても、知られなければ誰にも買っては貰えないのだ

S藤取締役といえば、こんな際にさてどうしたか?
そう、私に向かって言ったのだった。
「商品PRを兼ねて、被災地にお水を送りましょう!」
私は訊ねた。
「どこの誰に? どう渡りを付けて?」
答えは? ーー勿論無い。
まったく、呑気な話だ。やれやれ。


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