『すずめの戸締まり』を観て。忘れたくないこと
映画『すずめの戸締まり』、観てきました。
すごく良かったです。
震災文学だと聞いて、観たいと思って行ったんですが、予想以上に、素晴らしい作品でした。まさか泣かされるとは思わなかったよ。
※以下、話の核となるネタバレはしませんが、作中のセリフを一部取り上げますので、それも嫌だという方は観賞後に読んでください。
作中、すずめと草太が“戸締まり”していく扉があるのは、廃墟。今はもう誰にも使われていないけれど、かつては誰かがたしかに生活していた場所です。
それらは歳月とともに、朽ち果てたり、あるいは自然がその痕跡を覆い隠したりしています。
東北、すずめの故郷へ向かう途中。
芹澤が「こんなきれいなところあったんだな」と言うんですが、それを聞いたすずめは「きれい?」と疑問符で呟きます。
個人的には、短いけどここがいちばん考えさせられたシーンでした。
3.11の東日本大震災からもうすぐ12年。
この物語の主人公すずめも、当時は4歳だったのが、高校生になった、それくらいの時間が流れました。
それでもなお、被災した人にとって、3.11の悪夢はまったく「過去のもの」とはなっていないんだな……そんなことを、すずめのたった一言に、はっと気付かされました。
作中出てくる景色は、さすが新海誠作品なだけあり、全く人気のないところですらとてもきれいなのだけど。
それを、きれいだ、と思える人と、思えない人がいるんですよね。
「いってきます」という日本語には、「行って、帰ってきます」という意味がある(だから「行きます」とは違う)そうですが。
ああ、震災のあったあの日、「いってきます」と言って帰ってこられなかった人がどれだけいるんだろう、と思うと。
日常が悪夢に反転するのは、ほんとうに一瞬。
震災を生き延びた側の人間であるすずめの「生きるか死ぬかは運でしかない」というセリフも、割とさらっと出てきますが。
こんなこと、たまたま運良く何事もなく生きてこられた人の口からは、なかなか出てこないと思う(すずめ、まだ高校生だよ……)。
それだけ大きな出来事だったんだと、思わずにはいられないです。
折しも、原発事故による生活の変容を余儀なくされた方々への、精神的損害として、賠償金の見直しも先日報道されたところ。
報道の数が減っても、震災の爪痕は、まだ残っているのです。
他にも、「大事な仕事は見えないほうがいい」という草太のセリフなどは深いなぁ。
物語はエンターテイメント性もきちんとありつつ、名言も随所にみられる、非常にメッセージ性の強い作品だと感じました。
アニメ映画は苦手だとか、新海誠作品は苦手だとかいう人もいるかとは思いますが、差し支えなければぜひとも観てみていただきたいです。
震災の多い日本という国に住むからこそ、考えさせられることが、たくさん詰まっています。
もう一度観たいくらい。良い映画です。
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