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エディンバラ暮らし|Foraging(野草採集)の日

英国で道端の草を食べたという話。

※10/30追記あり


「自然・コミュニティと繋がりたい」と考えていたら、地元の人との緩いつながりができたり、王立植物園でガーデニングしたり、海洋生態系保全のボランティアをやらせてもらえたりなど色々な角度で願いが叶っている。

今回のForaging(野草採集)も、そのひとつだ。

Cambridge Dictionaryによればforaging:”to go from place to place searching for things that you can eat or use”とのことなので、
ざっくり「山菜狩り」に近いんだと思う。

山菜狩りが「食べられる」「山の草」なのに対して、foragingは「食べたり道具として使ったりできる」「あらゆるもの」なので範囲が広い。



エディンバラの自治体が開催しているこのワークショップは、平日18時にゆるっとスタートした。

採集場所はHermitage of Braidという自然保護区で、私の家から歩いて10分もかからないところだ。よく散歩でお世話になっている。

フリーランスのgardener/foragerとして活動しているJさんが道端の草を解説していく。私が普段完全にスルーしてきた草たちの、個性的なプロフィールが次々と明らかになる。


例えば…

エルダーフラワー / elderflower


写真は実だけど、初夏には白い花を咲かせる低木。

シロップやワイン、コーディアル(漬け込み)、レモネードなどになるそう。喉風邪を癒したりなど様々な薬効がある植物としてイギリスでは古くから親しまれていて、スーパーでもたまに売られている。

生食ではなく、ちゃんと調理するようにとのことだった。

イラクサ / nettle


道脇にわんさか生えている植物。ザ・雑草という風情である。

でもこれが薬として優秀で、免疫の調整やエネルギー増強を期待できるんだって。

お茶やコーヒーにもなり、味は抹茶・緑茶に近いらしい。


ブタクサ ハナウド/ hogweed

このnoteを書くために和名を調べて驚いた。「ブタクサ」、花粉症の人ならよく聞いたことがある名前ではないだろうか。

これの種子はスパイスになり、風味としてはクローブに近いんだとか。
「好き嫌いあるけど」とのことだった。

2023/10/30追記訂正

英語のhogweedはブタクサだけでなく、セリ科ハナウド属やキク科ムカシヨモギ属まで含む広い俗称だった。そしてこの写真の植物はおそらく、ハナウド属のようだ。茎の液でかぶれることがあるらしい。英辞郎より。https://eow.alc.co.jp/search?q=hogweed


メドウスイート / meadowsweet

水辺に生息している。
エルダーフラワーやハナウドとおなじくこれもまた白い花だけど、その特徴的な香りで識別できる。葉っぱは爽やかに、花は甘く香る。

グリセリン6:水4で作ったというシロップを舐めてみたら、おどろくほどの糖度だった。砂糖を加えなくても満足な甘さ、それがメドウスイート。


***

ところで、印象的だった言葉がある。


「花を摘むと『タネを作らなければ』という植物のやる気が持続するので、結果的にますます花が咲いてくれます」

(食べられる花や葉っぱについて)「動物たちとシェアしているので、取りすぎないように。まあこのくらいかな」

Jさんは、「人間が採集する」という行動をエコシステム全体の流れの一つとして捉えている。

例えばよく言う「自然を守る」や「自然に配慮する」といった言葉にはあくまで人間と自然を区別し、人間が一方的に自然をコントロールできるという考え方を前提としているようなニュアンスがある。
一方でJさんの言葉からは人間も自然の一部であることを前提に、「自然の一部として流れの中で生きる」というようなコンセプトを感じた。



サマータイムの明るい夜の、たった1時間半のワークショップだったけど、終わる頃にはいつもの森の風景がまるで違って見えた。
ひとくくりの「雑草」が、それぞれ個性を持った植物として自己主張してくる。学びは世界の解像度を上げる。生まれてきたこの世界を楽しむためにこそ勉強は存在するのだ。

ただでさえ鳥を追いかけてるおかげで散歩の時間がやたらと長いので、植物まで楽しみ始めたら埒があかないと考えていたところだった。

だけど生態系は全て繋がっている。植物があるから鳥はいるのだし、鳥がいるから植物が繁栄する。生き物たちの相互作用がわかれば、世界はどう見えるだろうか。生態系をもっと理解したい。もっと植物のことを学んでみたいと思った。

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