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大阪府の進学校Mapその2(南部)

※この記事は、『大阪府の進学校Mapその1(北部)』の続きです。

Map(大阪府南部)

【南部郊外】

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【南部都心】

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※大阪府北部の進学校Mapは「大阪府の進学校Mapその1」の記事に掲載。

※地図は『MANDARA』で作成。

※赤字は公立進学校、青字は国立・私立進学校。♂を付けた学校は男子校、♀を付けた学校は女子校。下線を引いた学校は、中高一貫教育を行っていることを示す。

南部:奈良と和歌山にも手を伸ばす

大阪府南部を構成する旧第3学区と旧第4学区のうち、旧第3学区は2006年度までにおける旧々第5学区、旧々第6学区、旧々第7学区を統合されてできたもので、旧第4学区は旧々第8学区と旧々第9学区を統合してできたものだった。

旧々第5学区:大阪市(中央区の一部、天王寺区、東成区)、八尾市、柏原市、東大阪市

旧々第6学区:大阪市(浪速区、阿倍野区、住之江区、住吉区、西成区、生野区)

旧々第7学区:大阪市(東住吉区、平野区)、堺市の一部、松原市、富田林市、河内長野市、羽曳野市、藤井寺市、大阪狭山市、太子町、河南町かなんちょう、千早赤阪村

旧々第8学区:堺市の大部分、高石市、泉大津市、和泉市

旧々第9学区:岸和田市、貝塚市、泉佐野市、泉南市、阪南市、忠岡町、熊取町、田尻町、岬町

北部と同様、それぞれの旧々学区で最も合格難易度が高い公立高校には文理学科が設置されており、大阪府教育委員会お墨付きの進学校となっている。これに当てはまるのが、旧々第5学区にある高津高校(大阪市天王寺区)、旧々第6学区にある天王寺高校(大阪市阿倍野区)、旧々第7学区にある生野高校(松原市)、旧々第8学区にある三国丘高校(堺市堺区)、旧々第9学区にある岸和田高校(岸和田市)の5校である。2007年度に9学区が4学区に再編されたのちは、学力最上位層の人気度で、天王寺高校が高津高校や生野高校よりも優位に立ち、三国丘高校が岸和田高校よりも優位に立った。さらに2014年度に1学区になってからは、大阪府南部の学力最上位層の人気は天王寺高校に集中し、天王寺高校は大阪府北部にある北野高校と並び立つ存在となっている。

大阪府南部の公立高校で文理学科設置校に次ぐ大学合格実績を保っているのが、堺市堺区にある泉陽高校だ。泉陽高校は旧々第8学区ではいわゆる“2番手校”だが、その合格難易度は、旧々第9学区のいわゆる“トップ校”である岸和田高校に迫っている。これは、旧々第8学区の中学校卒業者数(2017年3月現在。以下同様)が約11000人と、旧々第9学区(約6000人)の2倍近くいることが背景にある。

大阪府南部のうち、旧第3学区では奈良県の私立高校に通う生徒が多い。とくに、東大寺学園高校(奈良県奈良市)や西大和学園高校(奈良県河合町)は大阪府出身の生徒が奈良県出身の生徒よりも最多となっていて、学力最上位層の生徒が奈良県に遠征していることが伺える。また、旧第4学区では和歌山県にある私立高校への通学が目立ち、和歌山県和歌山市にある智辯学園和歌山高校や近畿大学附属和歌山高校は大阪府出身の生徒が約2割を占める。

大阪府外の私立進学校に対抗し、大阪府南部で学力最上位層の生徒を集めている私立進学校と言えば、大阪星光学院高校(大阪市天王寺区)や四天王寺高校(大阪市天王寺区)、清風南海高校(高石市)の名前が挙がるだろう。大阪星光学院高校はキリスト教のサレジオ会が設置した中高一貫男子校で、四天王寺高校とは谷町筋を挟んだ向かい側に位置する。四天王寺高校は中高一貫女子校で、聖徳太子が建立した仏教寺院・四天王寺の境内に位置する。清風南海高校は中高一貫共学校で、高野山真言宗の大僧正が創始者である。なお、四天王寺高校にはアスリートやアーティスト養成を掲げるスポーツ・芸術コースがあり、進学校Mapではこれ以外のコース、すなわち中高一貫生向けの医志コース、英数Ⅱコース、英数Ⅰコースと、高校からの入学者向けの理数コース、英数コースを進学校として選定した(コース名は2020年春卒業者のもので、現在は別の名称となっている)。

大阪市天王寺区にある清風高校は、清風南海高校と創始者を同じくする姉妹校で、中高一貫男子校である。当初は電気科や商業科を持つ高校だったが、やがて普通科のみとなり、大学合格実績を競う高校のひとつとなった。進学校Mapでは中学入試および高校入試の合格難易度を鑑みて、中高一貫生の学力最上位クラスである理Ⅲ6か年コースと、高校からの入学者の学力最上位クラスである理Ⅲ6か年編入コースを進学校として選定した。清風高校の近くに位置する明星高校(大阪市天王寺区)も、同様の理屈で6ヵ年一貫コース特進コースと3ヶ年コース文理選抜コースを進学校として選定した。なお、清風高校が仏教教育校なのに対し、明星高校はカトリック教育校である。

大阪星光学院高校や四天王寺高校、清風南海高校、清風高校、明星高校は、
中学入試で確保する将来の10%erの方が、高校入試で確保する10%erに比べて多い。これに対し、桃山学院高校(大阪市阿倍野区)や近畿大学附属高校(東大阪市)は、中高一貫教育を行っているものの、10%erの多くを高校入試で確保している。『大阪府の進学校Mapその1(北部)』で述べたように、公立高校の文理学科の併願校になることで、10%erだが文理学科に不合格になった生徒を多く入学させているのだ。

桃山学院高校の学力最上位クラスであるS英数コースや、近畿大学附属高校の学力最上位クラスであるSuper文理コースの合格難易度は、公立高校の文理学科に匹敵する。つまり、桃山学院高校のS英数コースや近畿大学附属高校のSuper文理コースの入試は、公立高校の文理学科を志望する生徒にとって“文理学科直前模試”の役割を果たしている。これらに受かれば安心して文理学科に志願できる(北野高校や天王寺高校に限ると安心できないかもしれないが)。ちなみに、大阪府の文理学科ではない公立高校では、東京大学・京都大学合格者は0~1人/年がほとんどだが、桃山学院高校では2018年~2020年の3年間で東京大学・京都大学合格者が16人出た。しかも、このうち中高一貫生だったのは1人だけで、残り15人は高校からの入学者だった。これを見れば、桃山学院高校S英数コースに受かった生徒が次のように考えても不思議ではないだろう。

「文理学科に受かるかは五分五分だけど、文理学科でない公立高校に志望変更するよりは、思い切って文理学科に挑戦してみて、落ちたら桃山学院S英数に行く方がいいかな」

河内長野市にある私立中高一貫校の清教学園高校は、中学入試での定員と高校入試での定員を均等にしていたが、2020年度入試から中学入試での定員を減らし、その分高校入試での定員を増やした。近年、東京都では高校入試での定員を減らす、または高校入試をやめて中学入試だけにする中高一貫校が相次いでいるが、その流れと逆行する変更だ。この変更の背景には、清教学園高校の高校入試に公立高校の文理学科と併願する生徒が増え、高校からの入学者(公立高校の不合格者が多くを占める)に学力が高い生徒が増えたことがあると考えられる。文理学科の合格難易度があまりに高いために、その不合格者であっても十分に学力が高い生徒が相当含まれると認識されているのではないだろうか。こうした背景を踏まえて、清教学園高校のうち、高校からの入学者の学力上位クラスであるS特進コース理系を、進学校Mapにおける進学校に選定した。

大阪教育大学附属高校が持つ3つの校舎のうち、大阪府南部にあるのが天王寺校舎(大阪市天王寺区)と平野校舎(平野区)である。どちらも進学校Mapにおける進学校に選定したが、いわゆる難関大学の合格実績では天王寺校舎に軍配が上がる。天王寺校舎は大阪教育大学附属天王寺中学校からの連絡進学がほとんどで、他の中学校からの入学は1割程度なのに対し、平野校舎は1学年約120人中、大阪教育大学附属平野中学校からの連絡進学が約70人、他の中学校からの入学が約50人となっている。

大阪府の進学校Mapその2(南部)

大阪府南部大学合格実績211012

※進学校は黄色で示す。各高校の公式Webサイトで発表されたものを参照した。原則として現役・浪人の総数で、現役での合格者数が分かる場合は( )内に併記した。★は高校全体の実績を示していることを意味し、四天王寺高校は普通科スポーツ・芸術コース(1学年約40人)も含めた実績である。また、清風高校(1学年約610人)、明星高校(2020年春卒業者数411人)、桃山学院高校(2020年春卒業者数611人)、近畿大学附属高校(1学年約920人)、清教学園高校(2020年春卒業者数387人)は学校全体の実績である。

大阪教育大学附属高校のうち、天王寺校舎は附属天王寺中学校の卒業者のほぼ全員が連絡進学しているので、進学校Mapでは中高一貫校として扱っている。一方、平野校舎は附属平野中学校の卒業者のうち約3分の2しか連絡進学できないので、進学校Mapでは中高一貫校として扱っていない。

【2021/12/27追記】この記事を含む中部・関西地方の進学校Mapの記事を、加筆修正して収録した書籍(同人誌)を通販中です。詳細は以下の記事をご覧ください。


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