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「でも、いやだった。」

「娘さんの保育園はどうですか?」

先日、娘が小学校に上がる前の無料健康診断に行った時に、そこの女医さんが私に質問をした。
ここ、ニュージーランドでは子どもたちは5歳になると小学校に入学することになっている。時期が来たら、各家庭が自分の子どもを通わせたい小学校に、入学申し込み書を提出して許可をされたら入学のその日を待つ。その申し込み書類の中には、健康診断を受けているか、予防接種をちゃんと受けているかというのを一緒に提出することになっている。
我が家にもニュージーランド政府から無料の就学時前健診のお便りが届き、その指示通り近くのクリニックに行ってみた。

異国で初めての子どもの健康診断。
一体何があるのかあまりちゃんと調べずに行ったら、聴覚、視覚、歯の状態の検査、身長・体重測定に加えて、子どもが問題なく成長しているのかというのを先生からの問診に親が答えたり、子どもがちょっとしたアクティビティをやらせて先生が判断するという流れだった。

先生からの質問の中には娘さんは友達と仲良くやっていますか?とか、物事に集中できますか?
といった娘の社会性の確認やら、ADHD傾向がないのかなどを簡単に測ろうとする質問があった後、先生が突然私に聞いてきたのだ。

娘さんの保育園はどうですか?

と。一瞬、その質問に私は戸惑ってしまった。

娘の保育園は、結構、「教育熱心」な方だと思う。
先生は子どもたちは秩序がある中の方が安心して自分を表現できると考えているので、子どもたちはある一定のルールや決められたスケジュールの中で1日を過ごす。夫が保育園の説明会に行った時には先生たちが、私立の小学校に入学することになったとしても心配いらないですよ!と自信たっぷりに言っていたのが印象的だったという。
ニュージーランドにも色々な保育園があり、遊び中心の保育園もたくさんある中、娘の保育園はちょっと特徴的かもしれない。
こういうカチッとしたところが合わない、ということで子どもの意思で他の保育園に編入していく人もチラホラいる。

娘はとにかく型にハマらないタイプだ。クリエイティブだし、歌や踊りやファッションで自分を表現することが大好き。
いつかうたはちゃん(水曜日のカンパネラ)みたいに、口にピアスをあけてピンクのぱっつん前髪に刈り上げ姿でユニークな衣装に身を包むことになっても私は全く驚かない。
とにかくユニークなのだ。

そんな娘にとって、もっと自由な保育園に通えば、彼女にとって「楽」なのかもしれないなーと時々思う。

今朝は娘が保育園にさるのぬいぐるみとうさぎのぬいぐるみを一瞬に連れて行くと決めた。そしてさるくんとうさぎちゃんに彼女はこう話しかけたのだ。
「保育園では、先生の言うことをListenしなきゃだめだよ!」
口をすぼめて、先生が普段いうように滔々とぬいぐるみたちに言い聞かせるのだ。
保育園という場所は先生の言うことを聞く場所。
そういう彼女の理解は、保育園が社会性という場所を学ぶ場としては最高の環境だと証明しているのかもしれない。それでも私はなんとなく心に違和感が広がった。

そんなザワザワを打ち消したい私はちょっと娘の会話に入って質問をしてみた。

「誰の言うことを聞かなきゃいけないの?」

すると娘は先生の名前を順番に言って、最後に
「この先生たちの話を聞くの!」と教えてくれた。
あれ?一人先生が足らないよ。と私がいうと娘は
「その先生の言うことは聞かなくてもいいんだもん!」
と突っぱねるのだ。娘の先生というのは猛獣使いみたいなものなんだなーと娘に「なめられている」優しい穏やかな先生に同情してしまった。
色々と整った環境の中でも、娘は娘なりに自分なりのルールを勝手に作り出してそこで深呼吸をしているとも言えようか。

健康診断では、その後、女医さんが丸の形を見せて、これはなんて言うの?と聞く。
英語がそこまでできない娘はうーん、分かっているんだけど・・・と戸惑っていると、女医さんが
「Is this a circle? Or a rectangle?」
と助け舟を出してくれる。すると娘は元気よく
「circle!」と答える。
その後、お母さんの絵を描いて見てという指示のもと娘が私の絵を描いてくれた。幸いにしてニコニコ笑顔の絵でホッとした!というのも、つい最近、母の日のイベントに仕事で参加できないと伝えていたことに腹を立てた娘が、私を紫色で塗りつぶした得体の知れないギョッとするものを描いてきたばかりだったのだ。

そして女医さんは最後に娘に「自分の名前を書ける?」と聞いた。
我が家では数字もアルファベットもひらがなも何も教えていない。保育園でもそこまで練習をしてなかったのだろう。
娘は先生の目をじっと見て
「No I can’t・・・」
と小さな声で言う。
すると女医さんは自分の文字でもなんでもいいから書けるものを書いてみて、と再度繰り返す。
すると娘は意を決して、紙に
まるを小さく描いてその横にうねうねとしたアラビア文字のようなものを描いて先生の顔を恐る恐るのぞいた。
先生は
「このアラビア文字は、あなたの名前の頭文字にそっくりよ!よくかけたね!」と、褒めてくれてようやくそのセッションは終了。

娘も私もなんだかホッとした瞬間だった。

健康診断が終わったあと、娘は先生からご褒美にもらったシールを眺めながら
「頑張って、えらかった?」
と私に聞いてきた。そうだね。大変なのに頑張ったね!と伝えると、娘は一言
「でも、いやだった」
とボソッと付け加えた。
そうかー嫌だったかー
4歳なりにプライドが傷ついた経験だったのかもしれない。誰だって自分ができないことを無理に披露しなさいと言われたら嫌だろう。

社会性とかアルファベットとか、4歳の子どもも人の中で生きていくって色々と大変なんだなー
ちょっとくらい、家の中で娘のびっくりするようないたずらに振り回されても、それはそれで彼女なりの息抜き方法なんだから、と大目に見れるようになれたらいいのかなーいや、やっぱり難しいかな・・・
せめて、娘が自分で書きたい!と言い出すまでは、無理に彼女にアルファベットでもひらがなでも自分の名前を書けるようにと教えないようにはしよう、と思っている今日この頃。

【オークランドの街中を大人散歩!】私は日本時間、日本のカレンダーではたらいているため、日本の祝日はお休み。日本の祝日はこっちの平日。
ということで、今回は夫と平日の街をのんびり大人散歩。
平日の街中をぶらぶらするって、なんでこんなに贅沢な感じがするのでしょうか?!最高です。
子どもたちと一緒に楽しく色々と経験するのも大好きだけど、たまには大人ペースで過ごせる日も良いなーと感じた1日でした。
https://youtu.be/r-bPaHt1GzE


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