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とにかく、感動したのだ

こんなに感動したのは久しぶりかもしれない。

先日、息子が通うニュージーランドの小学校で水泳大会があった。
日本が春に差し掛かる時期、ここ、ニュージーランドではあたたかい夏から秋に変わっていっている。ついに寝具をもう一枚かけて布団の中で丸くなりながら寝るようになり、冷え込む朝と夜は家の中でバスローブが手放せない時期になっている。
それでも息子の小学校では本当にギリギリまでみっちりと水泳の授業がある。
温水プールになっているとはいえ、
「今日は寒くて飛び込めなかったよ」と言いながらも週2日もある水泳の授業を息子はとても楽しんでいた。
そしてその水泳授業の集大成ともいうべく、水泳大会があるという。

息子が小学校一年生だった時は水が怖くて水泳の授業に全く参加できず、先生のお手伝い係をずっと自ら名乗り出ていた。そのため、去年の水泳大会の日は先生の配慮で早めのお迎えに行った。
当時は英語もまだできない、友達もいない、そして水泳もできない、というないない尽くしで、異国・異文化に突然放り込まれて小さく縮こまっていた息子の手をぎゅっと握りながら、バシャバシャと元気よく子どもたちが泳いでいるプール横を通ってひっそりと家に帰って行った記憶が昨日のことのように思い出せる。

そして一年経った今。息子は夫と私に「絶対見に来てね!!」と水泳大会の参加を楽しみにするくらいまで成長した。
例の如く、水泳の授業で一体何をどんな風に学んでいるのかも分からないし、年末年始の夫の特訓でようやく水に顔をつけれるようになった息子が本当に泳げるのかが不明だった。
当日の朝は、快晴。立派な秋晴れの中、私は大きなストールに身を包み、夫もジャケットにスカーフをして、学校の中のプールエリアに初めて足を踏み入れた。

ニュージーランドの小学校のプールは観客が来ること前提で作られているのだろうか。
プールが上から見渡せるように三段くらいの観客席が備え付けられていて、息子の学年の親御さんたちが、スピーカーから流れるBorn in USAをBGMに続々と集まる。それにしてもなぜBorn in USA?日本ならウォーターボーイズの主題歌がかかるところだろうか。と書いて一体主題歌がなんだったか全く覚えていなくてググってしまった。とにかくアゲアゲな気分になることが重要なのだろう。中には子どもの名前を段ボールに書いて、本格的な応援団になっているお母さんもいてなかなかの一大イベント感だ。



そうこうしているうちに、アクセントが強すぎて私には言っていることの半分も分からない大柄の体育の先生が水泳大会のスタートを告げる。あの先生が教える水泳の授業を息子が理解しているとしたら、本当にすごいなーなんてまた思いながら、息子のクラスの番が来るのをドキドキしながら待つ。
学年全員が集まり、クラスごとに、最初は女の子、次は男の子、という順番で進んでいく。

いくら子どもは風の子なんて言っても、どの子も本当に寒そうにブルブル震えながら「温水プール」に入り、体育の先生の号令を待つ。すると、プールの短辺の方を使って、ビート板でのバタ足、ビート板クロール、ビート板使背泳ぎ、そしてなんと最後は「フリースタイル」という名のバタ足+クロール+適宜足をついて水の中を蹴って距離を稼ぐ泳ぎを見事に披露してくれるではないか!
ニュージーランドは島国だから水泳教室に通う子どもが多いと聞く。小学校二年生、日本なら年長さんの子どもが本当に見事に泳いでる様子にはびっくりした。
そして私と夫は顔を合わせて、
「ようやく水が怖くなくなったばかりの息子にあんなことが出来るのかな??」と、不安とワクワクが混ざった疑問を共有する。

そしてついに息子の番が来た。
意外にも息子は一切の不安を感じさせず自信たっぷりな素振りで私たちに手を振って嬉しそうに自分の場所についた。
号令の笛がなると、しっかりと顔を水につけながら、今まで見たことがないバタ足をして頑張って泳ぎ切るではないか!
すごい!!!
まさか出来ないだろうと思っていた背泳ぎは、顔が完全に水の下に入ってしまい、溺れているのでは?!と不安になるのだが、それでもなんとかかんとかほぼ泳ぎ切るのだ。そして毎回、私は力の限りの拍手を送る。
しかし、どの競技も息子は他の誰よりも遅くて、先生たちも息子が到着するのをじっと待っている。
そうしてなんとかかんとか一年前は棄権した水泳大会で、泳ぎきるという快挙を遂げた息子は満足そうに友達とはしゃぎながらまたプールの外に戻って行った。


いやー自分たちの想像を超えていた。
というか、水泳の授業ではニュージーランドの教育の凄さを感じた。こんなことを6歳のちびっこたちに教えて、集団の力で、お互いを励まし合って、なんとかやり切る力を与える教育の素晴らしさよ!!
他の科目についてはよく分からないけど、水泳の授業のレベルはニュージーランドはピカイチで間違いなし!と、感心し、そろそろイベントも終わりかなと帰る準備をしようとしていたら、なんとフィナーレとして、子どもたちがプールの長辺、つまり25メートルを泳ぐというのだ!!しかもビート板なしのフリースタイルで!

え?!それって水泳優等生だけが披露する特別競技かな?と想像していたら、びっくりなことに参加すると自ら名乗り出た子どもは水泳の上手い下手に関わらず誰でも25メートルを泳ぐらしい。
子どもたちの中には息子以上に全く泳げない子も何人かいて、そういう子は参加せずに待機していたし、寒さに耐えられない子も、マイペースに参加拒否をしていた。
だからまさか息子が泳ぐことはないだろうなーと思っていたら、なんと、息子が元気よく25メートル競技の列に並ぶのだ!
えーーー!!!なんていうこと?!

ワクワクしている息子を見る親の私の方が断然不安になってしまう。
自意識過剰な人だったら、これを公開処刑という表現をするのだろうけれど、息子はそんなことつゆほども思わない様子だ。
そうして25メートル競技開始の笛がなると、息子は勢いよく飛び出した。二、三回クロールっぽいものをして溺れかかっては、足をついて数歩、前に進む。そしてまた勢いよく顔を水につけて、水をかきながら進んでは歩き・・・そうこうしていると、息子が真ん中らへんまでようやく来た時には他の子どもたちはもうゴールをしていた。それでも息子は諦めずに最後の方まで泳ぎ、ゴールをタッチしたのだ。

そしてまたニコニコ手を振って、待機エリアに戻っていくではないか。

なんていうことだろう。



私が息子なら、自信がないからと絶対参加しない25メートルの水泳。彼は堂々と最後まで泳いだのだ!ちなみに担任の先生は、最後の方、プールサイドで息子の名前を大きな声で呼びながら、一緒についていって応援してくれた。
過去に英語がまだまだという時に、クラスの担任の先生から「努力賞」というのを2回もらった息子の姿がそこには確かにあった。

こうして水泳大会は無事幕を閉じた。
後から、息子にどうして25メートルの水泳もやってみようと思ったの?と聞いてみた。すると息子は
「ママに、オレが頑張っているところ、見せたかったんだー」
となんでもない感じでさらりと言ってのける。なんてかっこいいんだ!君は!と胸が熱くなる。
そしてボソッと付け加える。
「オレが一番遅かったけどね。」
その言葉には、恥ずかしい気持ちも、自分を情けなく思う感情も一切ないのがよくわかる。彼は周りが見えなくて、ただ必死に自分を誇示していたわけではないのだ。しっかり周りと自分の違いが分かりつつも、卑屈になることなく、自分をありのまま受け入れてそれを表現できていたとは。

いやーすごいなー
自分は親として特段何か特別なことはしてきていない。彼の生まれ持った性格と、周りの優しさのおかげだろう。



ちなみに同じ育て方をしているはずの娘の方は、頑張るということと無縁そうな人生を今のところ送っている。例えば、娘が通うダンス教室では3週連続で、娘はレッスンの半分くらい教室の中で座り込みボイコットをしていた。忘れ物をしたのがショックだとか、先生に怒られて嫌な気分になったとか、ダンスの音楽が彼女の趣味に合わないだとかなんとかで。うん。

まあ子どもは子どもでそれぞれの個性があるから面白いんだよね。
と思いながら、息子の頑張り屋さんな様子に刺激されて、私はしばらくは苦手意識があることにもえいや!と挑戦していけるような気がする。
そして、疲れたら娘のように全てを放り出して誰の目も気にせずに休むとしようか。

それにしても、本当に素晴らしかった!!
コンフォートゾーンをおもっきり蹴破って、成長していく息子に、私は大きな大きな拍手を送り続けたい。そしてそういう息子をあたたかく見守って指導してくれている体育の先生と、息子をどんな時でも応援してくれる担任の先生にも。


【サーカス最高!】夫も私も人が身体能力とクリエイティビティで感動させる系のサーカスが大好きで(マッスル系サーカスというのでしょうか?)、昔、ベトナムとカンボジアで見たサーカスの感動が忘れられません。なんとオークランドにアフリカからサーカスがやってくる!ということで、通常、先の予定を立てるのが大の苦手な私たちですが、珍しく数ヶ月前にチケットを予約して行ってみました。Afrique en Cirque のショーに!
いやー、もう、全くもって、本当に最高でした!!感動!!
音楽も生演奏がカッコよかったし、都会も良いものだなーと感動した体験でした。それにしても、反抗期の娘が大変すぎて・・・
動画を編集して、効果音をつけたら、なんだか全てがかわいらしく、愛おしく感じるのですが、その場で、全然前に進まない娘を前にすると・・・子育ては親育てって、こういうことだったんですかね・・???涙
https://youtu.be/oiKtnln_iag


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