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抜け道を探していたら、地方に行きついたという話

のんびりしたいなー

そんな風な自分の心の声を無視できなくなりつつあったある日、私と夫はついに、最高(に思えるよう)な抜け道を探り当てました。
そうだ!東京を離れて、田舎暮らしをしよう。と。

16歳に現実逃避して英国に「脱出」して以来、いつもフワリフワリと転々として生きて来た私と、世界をバックパッカーとして旅してきた夫という放浪癖のある自分たちがびっくりするくらい長く東京に根を張っていました。
私たちが一つの場所に留まった理由の一つは、2017年に長男が、そしてその2年後に長女が・・・と家族が増えていったというのがあります。

職場にも近く、子育環境も整備され、医療についても安心できて、と利便性を追及した先に、東京都のど真ん中で数年暮らす生活がありました。便利さと引き換えに、東京の子育てはたくさんの選択肢が否が応でも目に入る現実があち、その度に自分の決断や価値観について気持ちがぐらりと揺らぎ、ほとほと疲れてしまっていました。そして田舎の子育てならば、もっとのんびりできるはず、という思いから一家でどっこいしょと地方にお引越ししました。

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東京の選択肢の多さは、ショーウィンドウを眺めるかのようで・・・


私自身の幼少期は、かつて江戸に水を供給していたということが自慢の多摩川がアイデンティにある、田んぼや畑がまだ景色に溶け込んでいるような神奈川県のなんの変哲もない町で過ごしました。ちなみに私や妹たちが通っていた公立の小学校には、年に1回くらい校庭に変質者が出たりするのが当たり前で、治安はお世辞にも良いとはいえないエリア。そんな私が親になって耳にする東京の子育て事情は、自分に馴染みのないことが多く圧倒されることばかりでした。

例えば、BMWやベンツ、レクサスを乗っているような親御さんたちが、入学時に100万円前後かかり、年間250万円以上かかるインターナショナルスクールを受験するのかどうか、受験するならどこの学校がいいとか真剣に相談しあったりする様子を聞きながら、小学校を卒業するときには・・・と脳内でシュミレーションをしてはクラクラとめまいを感じました。しかもインターナショナルスクール特有の長い長ーい夏休み付きです。

共働き夫婦の私たちにとって、保育園一択の上、新規で入園できる確率は80%と保育園激戦区(当時) で、どこでもいいから滑り込めたらラッキーだったのですが、ふと、専業主婦の人たちを見てみれば、モンテッソーリの幼稚園にするか、はたまた体育に力を入れている幼稚園にするかと悩んでいてびっくりしたり。
私と同じく共働きで一足早く子育てを始めた友達は、アメリカ発祥の探求学習をベースにした幼児教室に週末にせっせと通わせているということで、フルタイムではたらいているんだから週末くらいゆっくりしたいという自分は怠惰なのかなーとか。
そうこう言っているうちに、周りの人たちが小学校受験をするのかどうかの決断を早々下していく様子に自分の将来の姿を重ねられないまま、今度は小学一年生から中学受験準備のための塾のSAPIXに通わすのかどうか決めなければいけなくなるという噂にただひたすら戦々恐々としてしまいます。

自分の周りを取り巻く「都会の子育て」の選択肢はあまりにもたくさんあり、そういった選択肢をずんずんと掴み取ったり、これはいらない!とパシっと決めていき、前に進んでいく力強い周りのママ&パパ達を見るたびに、私の決断は正しいのか間違っているのか・・・と常に悩んで足踏みばかりでした
そして、一旦、子育てに関する色々な声が聞こえない、色々なことが見えないそれまでとは違う環境の地方に身を置くことを決めました。そうしたら、もっと気楽に子育てが出来るだろうな、という期待を胸に!

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自分たちがのびのび子育て出来る場所を!


そして私たちは、出来るだけ東京の子育ての選択肢に追い立てられないような、子どもたち以上に親である自分たち自身がのびのびと出来る場所に移り住みました。
そうして選んだ場所は、東京24区と言われる東京のエリート層が移住するようなエリアではなく、雄大な自然が目の前に広がり空気も綺麗な思い描いたような理想の田舎であり、かつ、別荘地として東京の喧騒から逃げたい人が訪れるといった、自由もほどほどありそうな地を移住先です。
実際に子育てのために移住する人はそれなりにいる場所で、私たちが移住した後にも子どもたちが通う保育園に他県から何人かの新しいお友達が引っ越してきていました。

適度に多様性がありそうな移住者の様子にホッとしながら、さあ誰の目も気にせず、何の声も聞こえないところで自由な田舎の子育てライフを!とスタートします。そうして観光客プラスアルファくらいの位置付けで、特段これといったコミュニティにも所属していない状態で、目の前に広がる地方の子育て環境は自由気ままで夢のようでした。

代々木公園のような広さの公園なのに、まばらにしか人がいない中、息子がストライダーでブイブイと縦横無尽に走り回る様子は、子どもが楽しそうということ以上に、親としても誰かにぶつかることも道路に飛び出る心配をすることもなくストレスフリーになりました。
農場がどこまでもどこまでも境なく広がる中を巡るミニSLは、いつ訪問しても他のお客さんががいなくて私たち家族だけのためにぽっぽーと動かしてくれて、大自然の空気を胸いっぱい吸い込みながら堪能するSLライドは解放感があります。
週末は家族皆で体験学習、ということで、好奇心の赴くままに洞窟探検から、滝巡り、平家の落人の里にまで足を伸ばしました。とにかく行きたいところは、天気と時間が許す限り、県をまたいであちこち巡っています。

とにかく、何も気にせずに、やりたいことをやりたいように出来る田舎の子育てばんざーい!という感じでした。



それでも、「誰かの目」はやっぱりあった


そうして、田舎での「のんびり」とした子育てを満喫していたのですが、時間が経つにつれて、色々とここでもまた「あなたはどうするの?」「それで、本当にいいの?」という問いに直面し始めました。

例えば、私たちは有機野菜の定期便を自宅に運んでもらい、毎日、ヒゲだかツノだかが生えた形の大根だったり、普段スーパーでは見ないような小さな可愛いサイズの間引き人参とか、色々な個性豊かなお野菜をいただいていたりします。とはいえ、毎日がオーガニック一色かというと、不健康な味が懐かしくなり、ごくたまーにマクドナルドに行くことがあります。そんな話を自然派子育てをしている人にぽろっとしたところ、「え、マクドナルドなんか行くんですか・・・」と、白い目で見られたり。

他にも、農作業を一緒に体験しませんか?という週末のイベント情報が届いたり、子どもたちと一緒に森を歩きながら、自然と人間の共存方法について考えましょう、なんていうお誘いも来たりします。その度に、私たちの自然の中での子育てをどこまで本気でやっていくのか、という覚悟を問われる気がするのですが、私たちは、結局そういうのに参加するほどの熱量もなければ、そもそも集団行動も苦手だったりして、毎回お誘いを見なかったふり・聞かなかったふりをして、やり過ごしています。

それに地方といえど、東京ほどでないかもしれませんが、幼児教育に熱心な人たちにも出会う機会があり、ピアノ、水泳、公文、バレエ、英語教室・・・と様々な習い事に毎日子どもの送り迎えをしている人たちに驚きました。我が家のワイルドな野生児たちもこのままでいいものか・・・と焦る気持ちから、いくつか試してみたものの、何かを教えられるのが苦手な息子は、あらゆる習い事の類と相性が悪く、今ではまた立派な野生児に戻りました。まあ、小学校になってからうんこドリルとやらで数字やひらがなを覚えることが出来るだろう、と私たちは腹を括っています。

誰の目も気にせずに子育てがついに出来るのか、と思えば、結局そんなことは夢だったのだと気づきました。やっぱりここでも、自分たちの子育てのやり方と、それ以外のたくさんのオプションはずらーっと私の目に入ってしまうものだなーと。

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子育てに限らず、私はずっと自分がついていけないな、と思ったらいつも抜け道に逃げこむ人生を送ってきました。
そして、主流の生き方についていかなくて良くなったーこれで自由だー!とほっとするのも束の間、すぐに新しい場所で「で、あなたはどうするの?」「あなたは何者?」という決断に迫られてきてばかりだったことを思い出します。

日本の勉強のあり方がいやで、海外の高校に留学をしたら、今度は「あなたは何が得意なの?」と自分の才能の有無から種類について考えなければならなかった。
国際協力の道をはじめ、誰かが作った組織ではやっていけないことを悟って、えいやと自分で起業をしたら「資金調達はどうするの?スケールはどのくらいを目指すの?」と、私の野心の大きさを試されることになったり。

結局、私自身が誰かの用意した物差しを意識し続けている限りは、どこに逃げても、何をしていていも、自由な気持ちなんて味わえないのかも、ということを改めて感じています。人は人、自分は自分、と思い切り割り切れる強さが欲しいなー。

そんな小心者の母親の私どこそこ、好きなものはなに?と聞けば「じーぶん!」と満面の笑みで答えるなんともご機嫌の娘と、こちらが怒る気力をなくすくらい、可愛らしいカラフルな落書きをして回る息子を見ていたら、何が子育ての正解か分からないけど、目の前の毎日はとても幸せで最高だから、全てこれで良かったかな、と思える気がします。
とりあえず、モロッコの絨毯屋さんと直接交渉して手に入れた絨毯についてしまった子どもたちのクレヨンのシミに、ぎゅっと目をつむることはなんとかかんとか出来るようになりました!

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【Podcastの新エピソードを公開しました!(6月21日)】
今回は、2017年の終わりから2年近く、オフィスに毎日ベビーカーを片道30分押しながら通勤して、ベビールームの中で子どもを育てながら仕事をする、という「子連れ出勤」に挑戦した時の体験談をお話ししています。
当時の写真を見返すと、笑顔で子どもと一緒に会社のメンバーと写っていますが、実際の毎日はとにかく大変でした・・・!
もしよければ、お聞きください👂
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