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オリジナル童話『じゃんがら池のたからもの』1

広い森のなかに、
ひとりのカッパが住むじゃんがら池が
あります。

ある日、カッパの小僧が
池を囲む色とりどりの花を眺めていると、
黄色い花がゆらりと動きました。

風が吹いたわけでもないのに
どうしてだろう。

カッパは泳いで、そっと花のほうに
近づいてみました。

「なにをしているの?」

カッパは、黄色い粉まみれの見なれない
生きものにたずねました。

「びっくりしたわ。今、お仕事中なのよ。」

花の中にいたのは、ハチでした。

「あなたはだれなの?」

「おどろかせてごめん。ぼくは、
 じゃんがら池に住んでいるカッパさ。
 よろしくね。」

「・・・よろしく。
 わたしのうちは、こっちなの。」

そう言うと、忙しいそうなハチはすぐに
飛び立っていきました。

池を通り越し、ずいぶんと奥のほうへ
行ったかと思うとハチのすがたは
見えなくなりました。

カッパは、また会えるといいなと
思いました。

すると、視線の向こうから、
ハチが近寄ってきているではありませんか。

「向こうの通りにはね、
 ずっと木が並んでいてね、
 ちょうど百本目の木の上にあるのが
 私のうちよ。」  

少し息を切らしながら、教えてくれました。

カッパは、じゃんがら池から出たことが
ありません。

だから、池の奥に道が続いていることを
初めて知りました。

それから何度も、
ハチはじゃんがら池を通って、
花のみつを集めにやってきました。

カッパは、花畑にやってきては、
せっせと働くハチを見ていると、
なんだか嬉しい気持ちになれました。

ハチが池の上を通るたび、
みつの甘い香りがこぼれ、
なんだか幸せなのでした。

(続)

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