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旅に出ても痩せないわけ

なんとなく痩せるんじゃないかなすぁ、と毎回期待を抱いて出かけても、戻って体重計に乗れば出発時よりも1キロ~2キロくらい太っている。なぜだ?よその土地だからいつもより気も張っている。そういう意味で常にテンションはかけ気味。それだけでも十分カロリーを使いそうなものじゃないか。

移動時だって別段おやつを食べているわけではない。そりゃ、ちょっとは食べる。キオスクを覗くと土地の銘菓というのが並んでいる。最近はそれの1個売りと言うのがある。氷餅1個とか、信玄餅1個とかだ。まあ、買うわな。列車がロングシート(横並び)だと食べにくいけど、ボックスシートならごそごそリュックから取り出して食べる。そんなのは想定内のおやつだし、地元のお菓子だし、食べてしかるべきだろう。私はぜんぜん悪くない。

旅先ではとにかく歩く。まあまあ歩く。こないだ行ったお遍路では10キロ歩いたし、翌日も往復1時間くらい歩いた。なにしろ次の寺へ行くのに交通機関がない。だから歩くしかないわけだ。足摺岬の民宿田村の女将さんが

「次のお寺、ご飯食べるところとかないから」

と、お結びを持たせてくれた。もちろんこれは無料で(おそらく)宿の料金にも入っておらず、いわゆるお遍路さんに対するお接待であろうと思われる。ありがたい…。白い握り飯には梅干し。歩き疲れた体に染みる。私たちは平田駅という土佐くろしお鉄道の待合でほおばって次の寺へ行く列車を待った。

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その前日だって、昼ごはんはコンビニで買った腹持ちのいい系のチョコのみだ。つまり、移動中は常に次の列車のことや乗り換えがあるからゆっくり食べている暇などない。特に今回みたいなお遍路の場合はそうなる。地元の名物ランチなんて言うのはまったく望めない。そもそもお遍路とは修行の旅なのだ。グルメ旅ではない。決して。

旅で痩せるかと思っている理由は他にもある。歩くことは運動的カロリーを単純に消費するわけだけれど、漫然といつもの道を歩くわけじゃない。周囲の景色、その土地ならではの植生や建物の形状なんかを見たり、表示されている知らない地名の読み方を悩んだり、第一、この道が合っているのか、迷ってないか、などと考えながら歩くわけだ。もうそれだけで脳みそのリソースが多大に割かれ、脳が、私の脳がカロリーを猛消費しているはずなのである。

そうやって一日を過ごし、やっとのことで宿に着く。風呂に入って5時頃にはまずビールだ。とうぜんナッツや柿の種系をつまみながらとなる。そして夕食の時間がやってくる。待望の夕食だ。

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足摺岬の宿、民宿田村ではさすが土佐のかつおのたたきが出た。

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鈍川温泉ではなぜかカキフライ。料理人お手製の極太そばも。そして鯛の刺身。

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卯之町のまつちや旅館でも鯛。愛媛では3日連続夕食に鯛の刺身が出た。この頃は寒くなってきて、鍋であったまった。

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初日、徳島、阿波池田の宿で。下は塩江温泉。

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別段グルメ旅をしているわけではなく、全部ボロ宿の食事だ。しかもこれに朝食もついて、だいたい7,000円前後で高くても9,000円。温泉があるともうちょっと高くなるけど、それでも宿に着いてから食事に出かけなくていい。食事の場所を探すのは旅の楽しみのひとつではあるけど、お遍路で疲れ切っているからもうどこへも行きたくない。

また、翌朝もしっかりご飯がで出る。

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この朝ごはん、朝6時半とかに食べている。お遍路さんの宿の特筆すべき点は移動をする人のために、めちゃ早いご飯を用意してくれるということだ。作る人いったい何時に起きるん??ちなみに、通常チェックインは15時とかだけど、お遍路宿に関して言えば、みんなのチェックアウトが朝7時とか8時とかアホみたいに早いので掃除も早く済むためか、お遍路さんは15時より早いチェックインでも受け入れてくれる。これもありがたい。

さて、朝ごはんのおかずもたっぷりある。だからご飯はおかわりする。そう言えば前日の夜もやっぱりおかわりして2杯食べる。普段はそんなに食べないがおいしいし、おかずもたっぷりある。もちろんわたしは悪くない、むしろいい。

翌日も気を張って移動、そして宿について夕食、たっぷりのおかずとご飯を2杯。朝もたっぷりのおかずとご飯を2杯。まあ、そんな旅を7日間続けた。

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途中の宿での話。風呂の脱衣所で先にいたおばさん2人が体重計に乗ってキャッキャとはしゃいでいる。いつもより体重が少ないというのだ。私はすっかり着物も脱いで、風呂に入る直前だったのだがおばさんの話が気になって自分も体重計に乗ってみた。するといつもより2キロも体重が少ない。マジで?とおばさんのほうを見るとおばさんもこっちを見ていて

「やっぱり少なかった?」

と私に確認する。どうもこの体重計が少なく表示されるようで、これは別に珍しくない。だいたい宿にある体重計というのは正しくない。だから旅先で体重を計ることにはまず意味がないが、内心ちょっとはやせたかも、とその時わたしは確信した。

家に帰ってやっと体重計に乗るわけだか、なぜか増えている。出かける前よりも1.5キロ増えている。なぜだ。分からない。あんなに歩いて、気を使って、神経も使ったのに。私の考察によれば旅では食べ物以外のものも栄養になるようだ。おいしい空気とか、人の温かさとか、体重が増えたのはそういったものを今回もたくさん吸収したからに違いない。そう、私は悪くない。

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※メインのおかずの到着を待つ武司。

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