見出し画像

元夫と行く湯治旅2022 8日目 湯沢温泉(秋田県湯沢市)ー湯川温泉(岩手県和賀郡)

そろそろ写真ばかりUPするのに飽きてきたし列車に乗るのも飽きてきたし宿のごちそうにも飽きてきた。あんなに欲していた雪景色にすら飽きてきた。一週間の雪国滞在でもう雪に飽きるなんて私が言うくらいだから雪国の人は見るのも嫌になって当然だ。川端康成が「雪国」を書けたのも雪国に住んでいなかったからに違いない。

だいたい地方のいいところは外から見ないと分からない、とか言われ、行政がそれっぽいプロデューサーとかデザイナーとか広告会社を東京から呼んで「地元の人が当たり前だと思っていたもの、それが実は魅力なんです」ってそれっぽいムービー作らせてそういうのがもう動画サイトにわんさかあってそうとう飽和状態だ。でもそれってホントにそういうもんか?

-------------

武司とは一度険悪になるような言い合いをした。バス停のベンチに置いてあった武司のリュックがグラッと傾き、落ちそうになったので「危ない!」と慌てて支えたら怒られた。私の声で振り返った武司が私のせいと勘違いしたのだ。その後も中の物が割れたらどうしてくれるんだと言われ、完全に濡衣かつ善意を全否定された私は猛反撃した。私の反撃はやかましいので武司もそんな大声周りに聞こえるだろと困った顔で睨んでくるが構うものか周りなんて誰もいねえだろクソがとさらに反撃をする。

まあ、たまにこういうことになる。旅の始まりからまだ一週間経ってないからあと数回はあるかも知れないが、険悪になるとつまらない。バスの中は互いに無言だったが後を引きずらないようその後は能天気な発言を連発して気まずさ解消に精を出す。

-------------

雪国の列車で窓の外を食い入るように見ているのは旅人で地元の人たちは無表情にスマホを触っているか眠り込んでいるかだ。たいてい長靴かそれに準じた靴を履いている。積雪の山中を走り抜けるワンマン列車。雪なし地方の私は、山の雪と言えばスキー場、もしくスキー場へ行く途中の木曽あたりの針葉樹林に降り積もる雪しか知らず、この地方のように山頂まで続くはげ山のごとき様相の広葉樹の景色は知らない。

八甲田山雪中行軍で捜索隊が出たとき、遠くに銃剣を支えに固まっている後藤伍長が発見されたと言うが、そんな遠くから見て人が発見されるわけなかろう。だいたい山の中と言うのは冬でさえうっそうと暗く、足元は年中シダで覆われ、枝の払っていないヒノキや杉がひしめき合い密集しているものだ。

しかし去年、実際に八甲田山に行ったときに分かったのだが、ものすごい遠くまで見える。遮るものはなにもなく、ただただ裸の枝を広げたブナの木ばかりがスケスケの状態でずっとずっと続いている。そこが真っ白い雪で覆われ太陽の光で輝いているわけだ。そりゃ見える。それだから見える。こういうことだったのかと、実感で分かる。

私はアホなので何かと自分の目で見て体験しなければ分からない。賢い人は本や写真で見たり、テレビやネットやYoutubeで見るだけで、行ってきたのと同じくらい理解できる人もいるだろう。いや謙遜して言ったが本当はそういう人を賢いとはみじんも思っていない。かと言って、体験だけをすごいものとも思っていない。ワインバーをしていた時、初めて行った海外(インド)帰りのお客さんがお前らインドを知らないだろう俺は知ってるぞ、とインドでのフレッシュ体験を語った後トイレで小便をくるくると盛大にまき散らし「インドはこんな風だったぜ」と騒いだことがあった。体験至上主義もいかがなものかと思う。

-------------

東北旅で始終、列車に乗っている、と言っても同じ車両にいるのはせいぜい10人程度で、誰もが眠っているかスマホを見ているか私たちのように窓の外を食い入るように見ているか。ごおおおと凍った線路を削るように走る列車の中は静謐そのもので、窓の外はさらに静かな白い悪夢だ。凍った雪が巻き上がり、シャベルを手に屋根に上る人も遠くに見える。屋根の雪下ろしは外注すると十数万~、シーズン中では数十万円はゆうにかかるらしい。雪国に来て7日目。実際には飽きてきたのではなく「なるほどこんなもんだな」と自分で分かった気になっている。なんだってそうだけれど、物事はこういうところからが勝負だ。

画像1

ゆざわ温泉の朝食会場。昨夜の宿泊は6組11名。6時半からの朝食に一番乗り。


画像2

画像3

在室のときに電気が点く、と言うかスイッチ入れたらつくんだけど。

画像4

舞台前の配膳コーナー。

画像5

前日の夜、子供の学校でコロナが出たので休みになり宿も休むからキャンセルさせてくれと宿泊予定だった十文字の宿から連絡があった。

今日は岩手の湯川温泉に二泊、その後その宿に二泊の予定だった。さあ、どうする。

画像6

岩手まで来た。ここはほっとゆだ駅。駅名は限りなく微妙だ。そしてこれが地方路線の時刻表。

画像7

ここは駅の横に温泉施設が併設されていることで有名。入口の上まで雪除けの板を渡すための閂鎹(かんぬきかすがい)が、設置されている。雪は凶器。

画像8

路線バスが廃止されたのでこのようにタクシーを使った町営湯けむりタクシーなるものを利用する。午前中に乗る場合は前日20 時までに要予約。

画像9

本日の床の間。今のところ床の間のテレビ鎮座率は100%。

画像10

洗濯物の乾き具合をチェックする武司。私の分もこまめに裏返している。

画像11

なんかドラマを見ている。

画像12

ご飯は部屋まで持ってきてくれる。

画像13

写真に映えるよう自分のだけ配膳を直している。

画像14

まだ直している。

画像15

満足して撮影。

画像16

ここは連泊。十文字の分もここに振り替えることができたので4泊することに。宿めしが続いていたので中二日は自炊に。自炊部のある宿でよかった。しかし周囲に商店はなし。ここで明日の昼用のお結びを作る。背後でとぐろを巻く充電器類。

画像17

本日の就寝19時9分。

この記事が参加している募集

至福の温泉

サポートありがとうございます!旅の資金にします。地元のお菓子を買って電車の中で食べている写真をTwitterにあげていたら、それがいただいたサポートで買ったものです!重ねてありがとうございます。