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お金をかけずに出版してみたら、かけがえのないものを見つけた話

今まで、多くの出版をお手伝いしてきたのですが、多世代向けの冒険物語である『リトLITTO日本語・英語版』という本ができました。日本語に興味のある英語が母国語の人や、英語を学びたい日本の子供たちのために、簡単な言葉で絵本の様な仕様で作りました。子供だけでなく大人でも楽しめます。著者は皆にカッコちゃんと呼ばれる、山元加津子さん。元養護学校の教員でしたが、映画をつくり、本を出版し、講演会を世界中で行っています。カッコちゃんが出演した『1/4の奇跡』というドキュメンタリー映画を上映した時からの古い友人だったのですが、「いつか本を出版しましょう。」という長年の目標がやっと実現したのでした。


この本の制作を制作するためには、
原文の日本語短縮→短縮版の著者確認→短縮文の英語翻訳→翻訳された英語のネイティブチェック→イラストの貼り付け・アートワーク(デザイン)→日本語と英文の最終チェック→印刷

という、なかなか面倒な作業をする必要がありましたので、まずはカッコちゃんを慕うチームを結成して、本の制作実行委員会を作りました。翻訳も印刷も全てボランティアの方に無償でお願いしました。カッコちゃんを慕う方には優秀な方が多く、プロ並みの翻訳分が出来上がってきました。英語訳には小学生でもわかる英語にしてもらいました。ネイティブチェック(母国語がアメリカ人に英語を確認してもらう作業)にも2名にお願いしました。著者に出版の概要計画を伝えたら、「私も著作権料は要りません。」という驚きの連絡がありました。もちろん印刷には実費はかかるのですが、ボランティアでデザインをして、なんと印刷代以外はお金を1円も使わずに善意の本が出来上がったのです。


本を出版したいと思う方は多いと思いますが、商業的な自費出版会社に依頼すれば、結構な金額になってしまいます。そのために電子書籍までで断念する方も多いと聞いています。もちろん電子書籍は自分の著作物を発表する大きな手段ではありますが、なんとか自分の書棚に手元に置くことができたり、自分がいなくなっても本として家族にも残していきたいという要望もお聞きします。

実は、出版における、印刷費用の割合は思ったより小さいのです。

もちろん、私見です。印刷物はこだわれば、いくらでもお金をかけることができますが、できるだけお金をかけない印刷も可能だということです。おそらくネット印刷が主流になってきており、印刷会社の競争になっているような気がします。出版したいと思う方には良い流れなのだと思います。あとは、自分や友人が校正やデザインを担当できれば、後世に残る自分の本ができ上がるのです。


少し脱線しましたが、今回作った本のことに戻ります。対訳本にはいろいろな形がありますが、見開きの左側に日本語、右側に英語を配置することになりました。こうすることで、日本語の対訳の英語がすぐに右側に見つけられます。大きさは縦21センチ、横21センチという、正方形のかわいい本になりました。

物語の中では、リトが物乞いのおばあさんや羊飼いの男や猫盗りのおじさんとなどと交流する中で、自分自身が世の中で必要とされているかを問いかけます。死を間近にした老犬はリトに、言います。


「“かけがえのないもの”とは、失った時に悲しくなるものさ。
そして、“かけがえのないもの”があれば幸せで、頑張れるのさ。」

『リトLITTO日本語・英語版』より


リトは冒険を続ける中で、様々な考え方に出会い、病気や死を経験する中で、“かけがえのないもの”を探していくのです。


そして新作の映画『しあわせの森』を携えて、カッコちゃんが訪米しました。ロサンゼルスとオレンジカウンティだけでなく、ニューヨークとミシガンにも回る上映と講演会の全米ツアーでした。カッコちゃんはアメリカに住む多くの人と交流する中で、リトと同じように“かけがえのないもの”と出会うための冒険をしたのでしょう。そして出会った人々には“かけがえのないもの”を探して欲しいと伝える旅であったのかもしれません。

そう、この本の売り上げは、渡航費やホテル代として使ってもらったのです。そしてアメリカツアーのために用意した本は、ほぼ完売という嬉しい結果になりました。また今後、図書館や学校にも寄付をしていく予定です。(子供達に寄付を希望されるご担当者はお知らせください。)

この本はクリスマスのプレゼントにもぴったりだと思います。日本では本屋さんに注文すれば購入できますが、モナ森出版から直接購入できます。(『リト』は日本語版だけでなく、英語版やドイツ語版など様々な国の言葉で翻訳されています。)

この本の発行日は、2023年12月25日となっています。クリスマスという日を楽しく過ごすのも良いのですが、友人やご家族に本当に大切なことを伝える日でもあると思います。“かけがえのないもの”は、お金では買えません。暴力で奪い取ることもできません。でも“かけがえのないもの”は、気がつかないだけで、本当はきっとあなたの近く、手の届くところにあるのです。
今年も平和で素敵なクリスマス、が皆様のところに訪れることを願っています。 


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