沈黙は降伏②ー迷いと恐れ
教授との最後のメールをやり取りした後、しばらくしてccに入っていたアドバイザーの教授からメールが来ました。
アドバイザー
「見ていたけど、なかなか大変なことになったね。でも少し冷静になったら?成績なんて、卒業したら意味のない単なる記号だ。気にする必要ないよ」
はあ、このコメントには心底がっかり…教授の言動については一切ふれず、私への慰めもありません。とはいえ、アドバイザーのこの態度はある程度は想定していました。
このアドバイザーはどちらかというと「ことなかれ主義」で、トラブルは見て見ぬふりをする傾向がありました。しかもこのアドバイザーがこの教授を大学にひっぱってきたので、教授にケチがつくとアドバイザー自身にも影響が及ぶと考えていたのでは、と推測していました。アドバイザーの態度には非常にがっかりし失望し傷つきましたが、いずれにせよこの人にはもう期待できない(しない!)…と思いました。
アドバイザーに伝えました。
「私は、教授の言動に納得もいかないし他に言いたいこともあります。年明けに、この教授に対して正当な対応をするつもりです」
とはいえ、迷いや不安は消えない。
①これは本当は大したことではないのか、騒いでいるのは私だけなのか?
②私は外国人、しかも学生というマイノリティー(弱者)の立場である。そんな私に何ができるのか?
この時考えていたのは「”正当な形”で声をあげたい」ということでした。
私の職業を知る人からは「(例えば学内新聞などに)記事として書いちゃえば?」という声もありましたが、私は②のマイノリティーの立場でも活用できる”公的”な手段を、”段階”を踏んで進めていきたいと思っていました。それならば、もし今後他の学生が同じような経験をしても、「対抗する手段があるよ」と伝えることができるからです。
もし声をあげれば様々な対抗勢力や困難があるんだろうな、とは想像していました。途中でつぶされてしまう可能性もないとは言えません。ですが、そういう場合でも、公的な手段であれば何かしら防衛・対抗手段もあるのだろうと漠然と思っていました。
同じ授業を取っていた学生同士で連帯するという選択肢もありますが、このケースでは想定していませんでした。理由は後程の記事で述べます。
助けてくれたのは、別の専攻の留学生の友人たちでした。皆、アメリカで長く生活し、多かれ少なかれ同様の経験をしたことがあるのでしょう。今回の件を話し始めただけで「ああ、それはひどいね…」と事態を理解してくれました。
兄貴肌のニカラグア人のマインダートに相談すると、即座に「それは”オンブズマン事務局”に相談に行くべきだ。それと、”アウトリーチ&サポート事務局”。あとは”ストップバイアスチーム”と”留学生支援センター”にも行って!それからジェンダーなど機会均等事務局も」と、次から次へと頼るべき大学内の機関を列挙してくれました。それぞれ少しずつ、立場や重きを置いているポイントが異なるから、すべてに相談に行くといいよ、と付け加えて。
優しい性格のベラルーシ人のユーリは、「それは傷つくね」と一緒に嘆いてくれました。そのうえで、その教授の失点や指摘すべきポイント、主張の仕方などを一緒に整理してくれました。
アメリカに長年住んでいる日本人とも話しました。その方は「日本人は差別を受けた経験がない(または少ない)から、遭遇しても戸惑ってしまうだけで、なにも反応できない。だからこそ、なめられるのだ。自分自身が『えっ』と不快に感じたら、それはもう声をあげてよい、あげるべきだと思う」と淡々と話してくれました。
一方で、反対する友人もいます。同じ外国人学生でも「そんなことはよくあることだよ。言っても何も変わらないし、早く忘れたほうがいいよ」という人もいます。「あなたがそんなことで悲しんだり苦しんだりしてるのを見るのがつらい。そんなことよりも、せっかくの今を楽しんで」と言ってくれる人もいます。
それぞれ真実だと思います。私のことを思って言ってくれるのもありがたいことです。
リスクやデメリット等々、いろいろ吟味しつつ、「でもやっぱり黙って見逃すことはできない」という結論は揺るぎませんでした。
その教授は、私の自尊心を、尊厳を傷つけた。そんなことは許されないし、許されないことだということを、(ほんのわずかなダメージであったとしても)相手に知らせたい。と思いました。
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