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ハウスメイトはアフガン人③ーEidをともに祝う

私がBeheshtaたちと一緒に住み始めた時はちょうど、イスラム教でラマダン(断食月)の終わりを祝う「イード Eid」のタイミングだった。
(ということも、後から知ったのだが…)

ある時、BeheshtaとZuhalが朝からずっと台所で料理をしている。
二人がかりで野菜を洗い、大鍋で何かを煮込み…と、いつもの自分の分だけを作るのとは大違いの量だ。

「何作ってるの?」と聞くと、「イードのお祝いの食事を作っているの」と言う。普段は2人が食べない肉(羊肉)も見える。2人ともとても忙しそうで珍しく殺気立っており、なんだかそれ以上、邪魔するのがはばかられた。

その日の夜中、午前3時ぐらい。ふと、目が覚めた。次の瞬間、ものすごーくよいにおいに包まれた!何かを煮込んでいるような、食べ物のよいにおい。耳を澄ますと、BeheshtaとZuhalがキッチンで何か話している。朝からずっと料理をしていたのに、まだしているのかな?覗きに行きたかったが眠気に勝てず、再び寝落ちした。

翌朝、目を覚ますと家の中は空っぽだ。夜中のにぎやかさは跡形もない。

2人はどこに行ったんだろう…

と、昼前にBeheshtaが帰ってきた。見ると、刺繍がとてもきれいなヒジャブと衣装を身に着けている。いつものカジュアルな恰好もいいけど、今日は一段ときれいにドレスアップしている。

「お帰り、Beheshta!昨夜は何してたの?」

「ああ起こしちゃった?あれはね、イードのお祝いの食事よ!今日は朝早くにお祈りにいって、それからあの食事を友人宅に持っていき、みんなでお祝いしてたの」

そうだったのか!だから、おめかしもしてるんだ。イードの時は、そういう風にお祝いしているんだ。どんな料理を作ってたのか、もっとちゃんと話を聞けばよかった。

「今日の夜にも友達が来て、ポーチでみんなでお祝いするからあなたも参加して!」

わあ、ありがとう!絶対参加する!

「私は昨夜、ほとんど寝てないからそれまで昼寝する~」
といって、Beheshtaは自室に消えた。

さて、夜になった。
私は用事があったため外出し、夜もかなり更けたころに帰宅した。
家の近所まで来ると、静かな住宅街のなかにひそやかなおしゃべりが聞こえる。

家が見え、ポーチに明かりが灯り、Beheshtaたちがいるのが見えた。

「ただいま~!」


友人や家族と静かにお祝いができるって幸せだな、と思った

ポーチにはカーペットが敷かれ、その上にはさまざまな種類のお菓子やドライフルーツ、新鮮な果物の入ったお皿。そして深紅のバラが入った花瓶と、たくさんのキャンドルも置かれている。ポットに入った温かなお茶も。その周りでBeheshtaとZuhalが座って、おしゃべりしていた。派手ではないけれど、親密な人たちと静かに祝う気持ちが伝わってくる。

そしてそこに、異教徒である私を迎え入れてくれることにもしみじみと嬉しく思った。

Beheshtaたちはお茶を飲みながら、歌を歌ったり、ヘナでMehendiと呼ばれるボディアートを手の甲に描いたり。Mehendiも、イードのお祝いの意味で描くらしい。

「あなたもやる?手を出して!私、得意なんだから」
Beheshtaが言い、スマホで好きなデザインを検索し、私の手の上にかがみこんで様々な模様を描いていく。その隣では、Zuhalがお菓子に手を伸ばしながら、何か小さな声で歌を口ずさんでいる。


Beheshtaは、Mehendiが得意

少しひんやりとする夜気を感じながら、暗闇の中で静かに時間が流れていく。

豪華でも派手さもない祝宴。でも、Beheshtaたちの祖国の文化(宗教)を慈しむ姿勢、そして友人や家族を大事にする気持ちが伝わってきて、なんだか心が静まり安心する感じがする。異教徒、そして彼らの文化について無知な人でも(私のことです)、お祝いの場から排除することは一切ない。そのことがしみじみと嬉しい。アメリカという異国で、さらにアフガニスタンという国から来た友人たちと、彼女たちの大切な宗教を一緒にお祝いする。国籍も宗教も違くても、あっという間に飛び越えて、お互いを尊重しながら近づき合う。それがとても自然に実現していることに感動し、泣きたくなる。

「足るを知る」ってこういうことなのかなあ、とふと思った。

私の知識不足もあって今回は後から知ることもたくさんあったが、次回(があれば)もっとさまざまな知識を身に着けてお祝いの場に参加したい。

余談だが、私はピラティスが好きで、アメリカでも真っ先にヨガマットを購入し使っていた。アメリカを離れるときにBeheshtaにあげてきたが、ポーチでパーティする時の敷物として使ってくれているそうだ。

こんな形でも彼らの文化の役にたてて?嬉しい。


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