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多様性って「良いこと」なの? - 多様性のリスクとチャンスを理解しよう
こんにちは、オランダ在住のサービスデザイナーASAKO (あさこ) です。
最近よく「労働環境の多様性をあげよう!」と言われますが、それは本当に良いことなのかどうか、私なりに解説します。
多様性って「良いもの」なの?
よく「多様性」って、それだけで良いことでのように語られますよね。
けれど多様性って結局なにが「良い」のか、みなさん説明できますか?
平均点は下がるが、イノベーションのチャンスが上がるギャンブル
この図をご覧ください。右に行くほど多様性の高いチームで、黒いドットがそのチームの作った成果物の品質を表しています。
多様性が高いチームほど、成果物の平均点が下がっていることがわかりますね(笑)
![](https://assets.st-note.com/img/1704481509140-52cZuV28n3.png?width=1200)
そう。多様性が高いチームほど、チームの成果物品質が悪くなるというリスクを抱えるわけです。でも、この図、ラッパ型になってますよね。
そう。多様性が高いチームしか、ブレイクスルーになるような超スゴイ成果物が生まれるチャンスはないのです!!! 多様性が低いチームは平均点前後のものしか作れず、イノベーションの可能性ゼロと言うことです。ギャンブルかよ。
なぜ平均点が下がるのか?
ではなぜ、成果の平均点が下がってしまうのでしょうか?
端的にいうと、多様性の高いチームは意見の相違が生じやすく、仕事の内容や進め方、人間関係においてより多くの対立に直面しやすいからです(Jehn et al.1997)。
まぁよく考えたら、違う人たち集めるんだからそりゃそうですよね(笑)
タスクに関する対立
ある仕事を達成するために、どのようにタスクや担当を分けて考える?
関係性の対立
人間関係がうまくいかないイライラ、緊張、摩擦…
プロセス(進め方)の対立
タスクの進め方、誰が責任を持つのか、どう意思決定するのか?
「良いか悪いか」じゃなくて「どう良くするか」だ!
チームの多様性を高めるということは、何もしなければチームワークや成果物の品質に悪影響があるかもしれないリスクを取ってまで「ものすごい成功」を狙いにいく戦略的な行為です。
多様性自体はただの環境であり、その環境を活かして「良い成果が出るようにする」とこまで辿り着いて初めて、多様性は「良いもの」と言えるでしょう。
多様性のリスクは、チャンスに変えられる!
安心してください。多様性のリスクは「コントロール可能なリスクである」と研究者も言っています(Fleming. Lee 2004)。
一例として、マネジメント層が多様性戦略においてすべきことをまとめた論文を超要約してみますね。
超要約: 組織の経営層やマネージャーは、以下のような多様性の問題を見極め、以下のような多様性戦略で適切に打ち手を打っていこうね!という話
① 問題を見極める
多様性がチームの成功を阻む要因は大きく4つあります。
・コミュニケーション方法の違い (直接的なのか遠回しなのか)
・言語の違い (母語話者と第二言語話者の間の葛藤)
・権威主義の度合い(権威を敬うタイプか風通し平等タイプか)
・意思決定方法の違い(意思決定するまでに何が必要か)
② 問題に対応する
問題を見極めたら、対処方法はだいたい以下4つの戦略にわかれます。
・適応(違いを認め、問題解決の方法を現場レベルで適応する)
・組織的介入(チームの割当てを変更したりツールを導入するなど、構造的な対処)
・管理的介入(ルールや文化的ポリシー等を事前に設定したり、多様性を管理できるマネージャーをチームに投入する)
・異動(全てうまくいかないなら、メンバーをチームから抜き組み替える)
ここで書かれているような「多様性戦略」や、多様性の高いチームが気持ちよく働けるような環境・文化づくりが、ダイバーシティ&インクルージョンで言われる「インクルージョン」の方ともいえます。
このインクルージョンの検討が組織の成功とハピネスのためにめちゃくちゃ重要なので、ダイバーシティ(多様性)だけじゃダメなんですね!
よく数字あわせのように無理矢理外国人や女性の数だけ増やしたり、いきなり若い人を昇進させるような活動も見受けられますが、組織的な変革と努力がない限り多様性の魔法は起きません。
日本は多様性を上げざるを得ない
さて、ここまであの手この手で「多様性って良いことばかりじゃないよ」「大変なんだよ」と脅してしまいましたが(笑)リスクだからと言って、じゃあ日本はこのまま多様にならなくても良いのでしょうか。否!
理由1:数年後には労働人口が足りなくなる
少子高齢化が進む日本では、実は労働人口の供給が全然足りない時代がすぐにやってくるんです。なので労働人口を増やすために「新しい人材を外から投入するしかない→多様性が上がるしかない」というチ状況なんですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1704486616914-XR6dTrf2PB.png)
リクルートワークス研究所のレポートでは、労働力の不足はすでに始まっていることがわかります。もちろんAIやロボを活用して労働の効率化を進めることも必要ですが、それどころじゃない足りなさです。
喫緊に外部から人を入れ、適切な多様性戦略で管理しないと日本のビジネスが回らなくなってしまいます。
理由2: AI時代に平均点取りに行ってもしょうがない
最初にご紹介した「多様性と平均点」の図を思い出してください。
多様性のないチームは「平均点は安定して取れるけど大成功は絶対しない」チームです。AIによってほとんどのオペレーション仕事が代替・効率化される時代において、平均的でオペレーションが効率よく進められる人間のチームが一体どれだけ必要でしょうか?
需要はほぼゼロに近づいていくことが予想できます。
今の日本社会には「大成功を狙いにいけるチーム」が大きな人口で必要なのではないでしょうか!と私は思うわけです。
日本にとって必要な多様性とは
日本の多様性を考えたとき、まず大きな人口をドバッと投入できるカテゴリとしては「外国人・女性・高齢者」などを想像することができるかなと思います。
まず外国人労働者については、現在は労働人口のうち2.7% (300万人)程度。多いとは言えなそうな数字ですが、それでもここ10年で4倍に伸びています。女性の労働人口も、じわじわと増え続けています。
現在44.6%!人口の半分以上は女性のはずなのでちょっと足りませんが、それでも昔に比べたら健闘していますね💪
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…なんかおかしい
このデータを見たとき、何か体感値と違いました。私はこれまで中小企業〜超大企業まで4社ほどで働いてきたのですが、私が働いてきた総合職で女性も非日本人もこんなにいた職場はとても少ないぞ。
そう。ここでとても哀しいデータがあります😢
![](https://assets.st-note.com/img/1704488185589-6olZlEDUcS.png?width=1200)
ここ10年で労働力の絶対数として増加したのは、低・中所得者がメインなんです。そしてこの低・中所得者として増えた人たちの多くが先ほど述べた「外国人・女性・高齢者」に当てはまりそうと(参照記事)。
つまり、イノベーションの源泉を担うのではないかと思われる高所得層の多様性は一向に増えず、主に「オペレーション業務が多い」可能性の高い、なんなら多様性が低い方がうまくいく業種で多様性が伸びているということ…!?ガーン。
女性の労働人口を例にとってでこの現象を証明してみましょう。
先ほど労働人口の44.6%は女性だと書きましたが、「正社員」の人口を見ると女性は27.4%しかいないんです。なるほど…😢
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ここまでいろんなデータをご紹介して少し長くなってしまいましたが、つまり日本はいま多様性を上げざるを得ない労働力不足時代におり、これからAI時代に日本が生き残るためには「イノベーションを生むための多様性戦略」を持たなければいけないだろうというのが私の主張です。けれど現在データで見る日本はそうなっていないという現状があります。
組織の運営に関わる方がいらっしゃれば、チームの多様性について今一度検討し、多様な人材と素晴らしい未来を作る戦略を描いてみてはいかがでしょうか!
おまけ:多様性には2種類ある
多様性には今日取り上げたような社会カテゴリの多様性(性別・年齢・民族など)と、もう1つ情報の多様性(教育や職歴、経験、専門性など)があります。つまり、組織に同じ社会カテゴリの人が多くても「異なる専門知識や違う考え方ができるバックグラウンドの違うメンバーを集める」ことは可能です!(※一般的には社会カテゴリの多様性が高い方が、情報的多様性も高くなりやすいので社会カテゴリの多様性について語られることが多いですね)
そして何を隠そう、最初にご紹介した「多様性とBreakthrough」の図の調査では、社会カテゴリではなく情報的多様性の方により着目した調査結果です。自社で明日から検討開始できそうですね!
まとめ
思いの丈を綴ったら少し長くなってしまいました...
ここまでお読みいただいた方は本当にありがとうございました!
ノーリスクノーリターンの低多様性ではなく、戦略的にリスクを取り、ハイリターンを狙に行く「ダイバーシティ&インクルージョン」に挑戦したいかも、と思っていただける方が1人でも増えると嬉しいなと思い書き綴りました。
これからも多様性やインクルーシブデザインについて定期的に投稿していこうと思いますので、何卒よろしくお願いいたします。
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