召喚したから密入国(ショートショート ファンタジー)
自転車修理に苦戦していた。
寝転がって地団駄踏んでいた。
「ああー!もう!こんな時、自転車に詳しい弟がそばにいれば!えーい、召喚するぞー!しょう、かん!」
もちろん、私にはそんな特殊能力は‥なかったはずだった。
ところがなぜか召喚できてしまった。
「う‥‥ぐ‥‥」
気づいたら私の上に弟が立っていた。
「おねえちゃん!え?なんで?」
「と、とりあえず降りて救急車呼んで‥」
寝転がったまま召喚したのが悪かったらしい。
私の胸の上に弟が召喚され、肋骨が折れて肺に刺さっていた。
私が入院している間に、自転車の修理は弟がしてくれた。
ところで大問題があった。
弟は実は仕事でフィリピンにいたのだ。
それを召喚してしまったものだから、つまり密入国になってしまったのだ。
退院した私がフィリピンへ行って、もう一度召喚することになった。
「もしもし、今家に着いたから、今からやってみるね」
フィリピンの、弟の家に到着して、さっそくやってみる。
あのときのポーズを思い出し(空手の廻し受け風)、
「しょう、かん!‥‥あれ?しょう、かん!しょう、かん!しょう、かん!‥だめだできねー‥」
何度やっても召喚できなかった。
さて、どうしよう。
腹が減っては戦はできぬ。
ひとまず屋台で腹を満たす私だった。
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