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ガラスの山の魔法の実【ショートショート ファンタジー】

すみません、めっちゃ長くなりました^^;いつものショートショートの2倍強くらいあります。

もしそれでも読んで頂けたら、泣いて喜びます(ToT)

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ガラス山の魔法の実
小学校で噂になっていることがあった。
学校の窓から見える三角山の向こうには、切り立った、地獄の針の山のような山があって、その頂上には魔法使いが住んでいるらしい。

「カズト、お前今日もピーマン食べられなかったんだな」
学校帰り、カズトは嫌な奴に声をかけられた。いじめっ子のヨウスケだ。取り巻きも三人いて、三人揃ってはやし立ててくる。
「やーい、やーい、弱虫カズト」
「悔しかったらピーマン食べてみろよ」
「ぼ、ぼく、弱虫じゃないもん。少しは食べられるようになったもん」
カズトはおずおずとだけれど言い返した。
するとヨウスケは言い返されたのが気に食わなかったのか、カズトをドン!と押した。
「ほんとに弱虫じゃなかったら、魔法使いの実を持って来いよ!そしたら信じてやるよ!」
それだけ言うと、ヨウスケは取り巻きを引き連れて行ってしまった。
カズトは、尻もちをついたまま、泣き出しそうになっていた。明日魔法使いの実を持っていかなかったら、何をされるだろう‥‥。カズトは考えただけで怖くなって悲しくなって、その場に座り込んだまま泣きだしてしまった。
「カズト!またヨウスケにやられたの?」
カズトが目をこすりながら振り向くと、アヤコちゃんが立っていた。
アヤコちゃんはカズトの隣の家に住んでいて、幼稚園の頃から泣き虫なカズトを守ってくれた正義感の強い勇気のある女の子だ。
魔法使いの実を取ってこいと言われたと話すと、アヤコちゃんは怒り出し、そんなに言うならとってきてやろうじゃないの、と言った。
「ええ!魔法使いの山なんて、危ないよ」
カズトが言うと
「大丈夫大丈夫、実を食べたら魔法使いになれるんだから。魔法使いになって、ヨウスケたちに仕返ししてやろうよ」
とアヤコちゃんは言った。

三角山は、そんなに大きな山ではなくて、ハイキングにはピッタリなんだけど、カズトは頂上までしか行ったことがなかった。だから向こう側がどんなふうになっているか知らなかった。
頂上まで登ると、もう魔法使いの山が見える。本当にとんがってギザギザしている。つららが地面から沢山生えているような山だった。
魔法使いの山を見ると、やっぱりカズトは怖くなって、帰ろうよ、とアヤコちゃんに言った。
「大丈夫だって。私この先も行ったことあるから」
アヤコちゃんは勇気があるなあ。でも僕怖いなあと思いながら、カズトは恐る恐るアヤコちゃんの後について行った。
三角山の反対側は、ハイキングコースと違ってジャングルのようだった。カズトはアヤコちゃんとはぐれないように、ぴったりとくっついて歩いた。
三角山を降りると、すぐ目の前に魔法使いの山があった。
本当につららがたくさん並んだだけのような山で、こんなとこどうやって登るんだろうと思っていたら、迷わずアヤコちゃんは裏側へ回った。
するとガラスの螺旋階段があった。
「実はここまでは来たことあるんだ」テヘと言ってアヤコちゃんは笑った。
ためらいなくガラスの階段を上るアヤコちゃんに驚いてポカーンとしていた僕は、1歩遅れて慌ててついて行く。
この山は、どうやらガラスでできているみたいだ。階段を歩く音が周りのつららにカツンカツンと響く。その音を魔法使いが聞いて頂上の家から飛び出てきて怒られるんじゃないかと、カズトはヒヤヒヤした。
けど、カズトの思いとは裏腹に、頂上にはあっけなく着いた。そしてその先には門が見え、更にその先には家が見えた。魔法使いの家と言ったってそんなに大きくはない。カズトの家とそんなに変わらないくらいだ。そして家の向かって右側に、実がなっている木が一本生えていた。木の枝はまるで手招きする魔女の手のようにくねっていて薄気味悪かった。そこに、柿みたいだけれど妙に赤くて熟した実がいくつかついていた。
「よし!いくよ!」
アヤコちゃんは意を決して門扉を開けて入っていく。
「そんな、勝手に入っちゃだめだよ」
カズトはアヤコちゃんにやめようよと言うが、アヤコちゃんは聞かないで前へ進むので、カズトもおっかなびっくりついていく。
そしてアヤコちゃんが実に手をかける。実は力を入れなくてもプチリという音を立てて採れた。
カズトは魔法使いがこらーっと出てくるんじゃないかと周りを見渡した。けれど出てくる気配もないし、それじゃあ僕も1つ‥とちぎってみた。すると手にした瞬間、なんだかものすごく甘い香りがして、カズトは耐えられなくなって、一口かぶりついてしまった。
「ダメ!」
アヤコちゃんは止めようとしたけど、間に合わなかった。アヤコちゃんは、実を食べると魔法が使えるようになるなんて信じてなかった。けど、カズトに勇気をだして欲しくて言ったのだ。けれどまさか本当に食べてしまうなんて。
「おーおー、かじってしまったか」
二人は家の方からの声に、はっと身構えた。
庭側に面したほうにあった扉から、魔法使いがこっちへ向かって歩いてくるのが見えた。
サックスブルーのトンガリ帽子に揃いの服を着ている。ちょっと庭までなので、足元はサンダルだ。
「男の子、舌をベーと見せてみなさい」
カズトは下を抜かれるんじゃないかとビクビクしたが、言われる様に下を出した。
「おおー、こりゃあかんな、魔法学がかかっとるわい。そっちの女の子は食べとらんのじゃな?」
アヤコちゃんはコクコクと頷いた。
「男の子、しばらくご飯が食べられんようになるぞ」
「え?ご飯って‥どういうことなんですか?」
「つまりじゃ、お主の食べようと手に取ったものは、わしの口へ入ってくるんじゃ」
「え?だって、これを食べたら魔法を使えるようになるんじゃあ‥」
「魔法を使うには鍛錬が必要じゃ。そんなもの1つかじってつかえるようになるようなもんじゃない」

とりあえず、カズトはかじりかけの実を1つ、アヤコちゃんはかじっていない実を1つ持って家へ帰った。
魔法使いが怒って帰してくれないんじゃないかとか不安に思っていたカズトは安心した。
夕飯の時間になって、いただきまーすとハンハーグを口に入れたはずなのに‥あれ?ご飯を食べても‥あれ?
次の日、カズトは空腹のまま学校へ行った。実を見せびらかしたらヨウスケたちは何も言ってこなかった。
そんなことよりもカズトは不安だった。もしかして給食も?
そして給食の時間になった。
カズトは本当にお腹が空いていたので嬉しかった。いただきまーす。パクっとパンに食いつく。ピーマンの肉詰めだって、この際食べちゃう。
‥‥けど、全部だめだった。

放課後、ぐーぐー鳴り続けるお腹を抱えてカズトは魔法使いのところへ行った。
魔法使いは満ち足りた顔をしていた。
「男の子よ、どうだね、あれからご飯は食べられたかね」
「ちっとも食べられなかったよ」
魔法使いはにやっと笑って言った。
「そりゃそうだわな。君の食べたぶんは全部私が頂いておるのだからな」
「え?どういうこと?」
「つまり、君が君の手で口に運んだものは、全部、わしの口へ入ってたという訳だ。
「え?じゃあ、僕は、食べても食べてもお腹いっぱいにならないってこと?」
「まあ、そうじゃな」
魔法使いはホッホッと笑った。
「そんなぁ、僕、僕、どうしたら…。これ、いつまでこうなんてすか?」
カズトは泣きべそかきながら聞いた。
「そうじゃなあ。一ヶ月くらいかのう」
「い、一ヶ月!?僕、そんなに食べなかったら死んじゃうよ」
カズトはとうとう泣きだしてしまった。
泣き出したカズトを見て、魔法使いは少し慌てて言った。
「まあ、それより早く治る方法がなくはないが」
カズトは目を輝かせた。
「ほんとに!どうしたら治るの?」

あの日こらカズトは放課後、魔法使いのところへ毎日寄っていく。
「おじさーん、この実はこれくらいでいいのー?」
大鍋をかき混ぜながらカズトは魔法使いに聞く。
「あと2つ入れておくれ」
あの日魔法使いはカズトに解毒薬をくれた(一ヶ月というのは冗談で、本当は2日くらいで治ったらしいが)。その代わりにカズトは魔法使いの手伝いをすることになった。今みたいに魔法の薬の調合をしたり、水晶玉を磨いたりしている。
代わりに魔法使いのおじさんはカズトに魔法を教えてくれているし、おやつやジュースもくれる(魔法のかかっていない、スーパーで売っているやつだ)。
おかげでカズトは魔法使いのおじさんとすっかり仲良くなった。
おじさんは、まず最初に、勇気の魔法を教えてくれた。
それをカズトは自分にかける。僕は強い僕は強い。それをかけると、不思議とヨウスケにも普通に話しかけられるようになった。すると更に不思議なことに、ヨウスケのほうからカズトと仲良くなりたそうにしてきた。ヨウスケはカズトのビクビクしたところにイライラしていたらしい(もちろんどんな理由でもいじめてはいけないけれど)。堂々としてピーマンも食べられるようになったカズトを見直したらしい。
そんなこんなで魔法使いのおじさんの家へは、カズトだけでなく、ヨウスケとアヤコも一緒に行くようになった。
今ではガラスの山の頂上からは、4人の笑い声が聞こえてくるようになった。


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この作品を書いてて「ガラス山の魔女たち」という本を思い出しました☺

面白かったはずなんですが、どんな話かが思い出せません(ToT)

買っちゃおうかなあ‥‥。けど、貧血→頭に血がいかない→本読めない、な感じで、読みかけの本が積み上がっていて💦←積みプラ状態

ちょっと買うのに躊躇う感じですわーー。

あと、カンケーないですが、にんにく食べすぎると貧血起こすそうです。3日前スタミナラーメン食べに行ってから、結構苦しみました。けどめっちゃおいしくて、ついまたいっちゃいそうな感じが^^;

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