南方のアンデス、青きアウストラル街道の流れ
港町プエルトモント。
南米大陸を南下していくにあたって、ここはマクドナルドが存在する最後の街となる。
というか仮にもパタゴニアと呼ばれる辺境の地でこんな都会があることの方が意外である。
プエルトモントでは、自転車のフレームビルダーの家でお世話になった。
ホセという、オリジナルバイクを製作して販売しているプロ。
ディスクブレーキのディスクがゴリゴリに削れてしまっていて交換する必要があったので、入手できる店はないかと彼に聞いてみたら、なんと「ウチにあるよ」と言う。
シマノのディスクでサイズも合う、奇跡。
翌日にでもゆっくり時間をかけて自分で交換するつもりだったのだが、ホセは僕がこの家に到着してからものの30分もしないうちに、前後のディスク交換からパッド交換から微調整、おまけにシフトチェンジの微調整まで、流れるようにスムーズにあっけなく終わらせてしまった。
しかも、僕はいつもブレーキをバラす時はキャリアとスタンドが邪魔になるので取り外すのだが、彼は、かなりやりづらいはずなのだが装着したままの状態で難なくこなしていた。
器用な人っているもんだな。
プロはプロでもいろんなのを見てきたけど、相当な達人とお見受けした。
僕は手も口も出せず、ただ「はえ~」と感心するばかりだった。
ホセは15歳の息子とふたりでここで暮らしている。
半年前までは首都サンティアゴにいたが、都市生活が嫌になってプエルトモントに引越してきたという。
仕事はここでも問題なくこなせるし、大都市に住む必要はない。
とても共感できる。
彼は根っからの職人で、自転車だけでなく家具や刃物やアクセサリーなど何でも自作してしまう人。
家の中は彼のハンドメイド作品であふれている。
食事もつくってくれる。
野菜盛りだくさん。
なんと刺身をごちそうに。
醤油もあり。
日本を思い出す。
いつも天気は激しく変わりやすい。
晴れた隙に、外で火を起こす。
薪を割る斧も彼の手製だったりする。
あっという間に天候激変、なんと雹。
すかさず鍋を家の中に。
豪快鍋!
鶏に豚にソーセージに野菜に魚介。
ごっちゃ混ぜのごった煮。
いやー、ぜいたく。
3人でシェアしたが、半分以上は僕がたいらげることとなった。
そして、虹。
職人としての技巧も並外れている上に、家事も優秀、人間性も優しく大らか。
それに見合うお返しができない僕としては、自分の旅の体験談を紹介して、せめて彼を楽しませることに費やした。
いい旅をしよう。
世界一細長い国、チリ。
これより南方は複雑なフィヨルドの地形で、主要道路はほぼ1本。
「アウストラル街道」(Carretera Austral)と呼ばれる風光明媚なルートを行く。
地形が複雑すぎて途中何度か道が途切れ、船旅も混じえることになるオツなもの。
無数の滝や小川が流れめぐる。
そのまま飲める澄んだ清流。
水に困ることはない。
この水の豊かさは、この地方の雨の多さを物語っている。
太平洋から来る湿った空気がアンデスの山々にぶつかって雲を形成するからだ。
道中何度か雨に降られたが、雨天時はなるべく走らずに停滞。
しかし幸運なことに、雨の多いこの地で異例と思えるほど晴天に恵まれた。
標高はそれほど高くはないが小刻みなアップダウンが続き、未舗装エリアも多い。
1日平均60kmほど。
街もだいたいそれぐらいの間隔で現れる。
どの街にも必ずキャンプ場がある。
大半のキャンプ場は、シャワー、電源、Wi-Fi、キッチン、など必要なものはそろっている。
Wi-Fi小屋。
昼夜の寒暖差が激しく、朝は露でびっしょり濡れてたり、霜が降りてテントも洗濯物もバリバリに凍ってたりすることもある。
ガウチョ。
ガウチョとは、南米の中部から南部にかけて牛の放牧に従事する人々のこと。
いわば南米のカウボーイ。
アウストラル街道の中間地点に5万人規模の街、コヤイケがある。
アウトドアショップや自転車屋もあり、必要物資はここでもそろう。
大型スーパーはこの街が最後となる。
降雨は、冬が最も多く、夏が最も少ない。
急ぐ理由もないし、休みながらのんびり進んで夏に移りゆけば晴天率も高まる。
晴れていればこんな風景を楽しめるのだから、やはり無理して雨天走行なんてしない方がいい。
後半はオール未舗装。
青。
碧。
蒼。
うっとりとするような。
ウサギの轢死体が多い。
ほとんどはグチャっとやられているが、きれいなやつ発見。
お尻から少し内蔵が出てる。
グッと押してやると、鮮やかな血がにじみ出てきた。
おそらく死後1日もたってない。
ナイフが刺さりやすそうな柔らかい腹部から切りたくなるが、そうすると内蔵がドバドバとほとばしり出て収集がつかなくなるという過去の経験から学んで、腹部には触れずにお尻から脚にかけての肉をターゲットに。
こいつもピョンピョンとよく跳ねるやつだから、脚の筋肉がよく発達しているに違いない。
いまだ正しい捌き方というのがよくわからず、ナイフとハサミを使って肉をほじくり出す。
どうしても細切れになってしまうが、まあまあな量の肉をゲットできた。
長年愛用してきたSnow Peakのナイフの先端が欠けてしまった、残念。
鳥がよく獣の死体を突っついて食べているが、嘴だけで分厚い皮を突き破って肉をほじくり出せるなんて感心してしまう。
人間は、道具なしじゃ動物を解体することもできないだろう。
400gぐらいは取れたかな。
真っ赤な新鮮な肉、ペコペコのお腹。
毛をちゃんと取り除くのが大変だった。
やっぱ最初に皮を剥ぐべきなんだな。
醤油、塩、ニンニク、タマネギ、まとめて炒めてみた。
ウサギ肉は初めて。
ウマイ!
ケモノ臭さはやはりある。
それはもう仕方ないものとして気にしなければ、イケる。
脂身はなく、系統としてはラムに近いかな。
しかし、いくら食えども腹は満たされない。
お腹空くのよねー
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